間接強制決定における賠償金の額

間接強制決定における賠償金の額は、どのような標準のもとに決せられるべきなのでしょうか。義務不履行によって債権者が被る実損害および精神的損害、義務の内容、性質、債権者の必要の程度、債務者の態度等々を総合的に判断して、義務履行を確保するに必要十分な金額を裁量で定めるべきです。民訴法七三四条の措辞および沿革に照らして、間接強制の賠償金額は実損害を標準にして定めるべきであるとの見解が正統的な考え方とされてきましたが、近年、多くの学説、論稿がこの考え方に沿革史的および解釈論的見地から反駁を試みるにいたりました。聞接強制のあるべき姿が総合判断説にあることはほとんど異論をみないため、問題は、解釈論として実損標準説を採らなければならない必然的理由があるか否かに帰着します。

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間接強制は、非代替的作為義務と不作為義務の強制履行方法としてなされます。非代替的作為義務とは、債務者本人が履行しなければ、債権者の目的を法律上ないし事実上達成できない性質の義務をいい、本人の特別の性格、学識、技能、裁量等の発揮を要する場合、本人がその法律上の責任においてすることを要する場合、本人がしなければ法律効果が発生しない場合等々の義務をいいます。もっとも、これらの義務の全部につき間接強制が許されるわけではありません。まず、意思表示義務については、民訴法七三六条の特則があるため間接強制は必要もなく、したがってまた許されません。また、本人の自由意思に反してその履行を強制することが現代の文化観念上是認できない場合、本人の自由意思に反してその履行を強制しても債権者の本来の目的は達成されないであろう場合、他に障害があって本人が履行しようとしても事実上不可能ないし著しく困難な場合等々についても、間接強制は許されず、不履行に対する損害賠償請求によるほかありません。
不作為義務はその性質上一般的に非代替的です。したがって、一定の作為をしないこと自体の覆行強制は間接強制によるとされます。もっとも、不作為義務の強制履行の態様は非常に複雑であって、民法四一四条三項前段に規定する義務違反による物理的結果の除去は一般的に代替執行に親しみ、また、同項後段に規定する将来の為めの適当の処分の多くも代替執行に親しみ、一定の予防措置の代替執行によって債権者の目的が達成されるため間接強制の必要性ないし許容性を欠く場合があります。他方、間接強制の一般的許容性に関し、現に義務違反が継続しているときにかぎり許されるとする見解と、義務違反を前提とすることなく事前の予防手段としても許されるとする見解とが基本的に対立しています。その中間説も種々ありますが、前の見解を採る者も立法論としては後の見解が優れていることを是認しています。不作為義務の性質からして解釈論としても後の見解を採るべきです。
実損標準説の主たる論拠は、七三四条の沿革、旧民法三八六条三項にあると窺われるので、沿革をみてみると、旧民法三八六条三項は、又裁判所は債務者に直接履行を命ずると同時に其極度の期間を定め共遅延する日毎に又は月毎に若干の償金を払うべきことを言渡すことを得此場合に於ては債務者は直接履行を為さすして損害賠償の即時の計算を請求することを得と定め、民訴法七三四条の旧現定は、債務者が其意思のみに因り為し得べき行為にして第三者之を為し得べからざるものなるときは第一審の受訴裁判所は申立に因り民法の規定に従いて決定を為す。と定めていましたが、明治三一年の現行民法の施行にともない、その施行法により現行のとおり改正されました。旧民法は、現行民法四一四条一項の前身的規定を三八一条一項、三八二条一項に定め、現行民法四一四条三項に相当する規定を三八二条四項に定めているのに対し、三八六条三項は、これらの規定から離れて損害賠償に関する規定の末尾におかれかつ、その後段に即時計算請求権を定めていました。そこで、一方において、このことを理由に、三八六条三項は本質上損害賠償であるものが、結果的に履行強制の作用を営むことが期待されたものにすぎないと説かれています。しかし、他方において、旧民法は、三八二条一項において債務者の身体を拘束する強制方法は禁止していたにとどまり、債務者に心理的圧迫を加えて強制することは禁止していなかったので、三八六条三項は償金の支払いを命じることにより心理的圧迫を加えて義務履行を強制することを容認したものとも解され、そうであれば、この償金とは、違反により生じうべき損害を意味せず、心理的圧迫に役立ちうる金額を意味していたのであるとも説かれます。

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