代替執行の授権決定

AはBに対する建物収去の判決にもとづき代替執行の授権決定を得て収去を行ないましたが、Yは収去により生じた木材を引き取りません。Aはどうしたらよいのでしょうか。このような場合、債権者は、民事訴訟法七三一条を類推して換価競売をおこない、残材は競落人に引き渡し、競落代金を債務者のため供託しておけばよい。土地明渡しの執行においては、土地上の建物の収去をともなうことは、多くみられるところですが、本来土地明渡しの債務者が、土地上の建物をみずから収去すぺき義務があるにかかわらずこれを怠ったときは、債権者または第三者が債務者にかわって建物を収去する権限を裁判所より付与されて、当該建物を強制的に収去しうることとなりますが、この権限の付与がいわゆる授権決定であり、特に建物収去に関する場合収去命令と称されており、代替的作為義務の執行の代表的なものです。

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授権決定はその前提となる建物収去に関する債務名義にもとづき、第一審の受訴裁判所が専属的な執行機関として発するものですが、建物収去の債務名義からみれば、授権決定の発付が当該債務名義による執行処分そのものということになります。したがって執行処分としての授権決定により収去の権限を付与された者が行なう収去行為の性格について、執行行為であるか、あるいは国から授権されたにしても行為自体は私人としての行為であるかという問題があります。法の建て前としては、授権決定を得て代替行為をなす者は必ずしも執行官とはかぎらず、債権者を含めた一般私人であることもありうることから考えれば、授権決定により権限を得た者はたとえ授権決定が収去権の淵源となっていても、行為自体は私人の行為であるかにみえます。しかしそのように考えると収去権者の収去行為に対して債務者が抵抗した場合、これを強制的に実行するためには、収去権にもとづく債務名義が重ねて必要かという不都合が生じ、収去命令の性質から考えても収去命令自体によって強制執行が行なえることは疑いなく、収去命令の与える収去権は強制的に収去を実現する権限とみるぺきです。したがってたんに私権としての収去権ではないため、たとえ実行者が私人であっても、その収去行為は執行行為そのものと解すべぎです。判例も執行官の行なう収去行為が執行行為であることを認めていますが、この判決の意味もたんに執行官が収去を実行する場合にのみ執行行為になると限定したものではありません。もっとも建物収去の場合ほとんど例外なく執行官に執行申立てをなし収去を実行する建築業者等の工事人は執行官の補助としてこれを行なう形態をとっているのが実態です。
建物取去のような代替執行の終了時期については、授権決定の発付自体が執行行為であるという観点から、

1.執行機関から授権決定が債務者に送達された時
2.送達だけではなく、決定が確定した時
3.内容たる収去が実現された時

の三説がありますが、前述のとおり、収去行為は執行行為であるとみるべぎであって、前記1.および2.の見解は正当ではなく、3.説のように収去行為が実現された時をもって執行が終了すると解するのが正当です。
建物収去後、建物取りこわしによる残材を債務者が受領することを拒否し、または所在不明でその引渡しができないとき、建物収去本来の意味からいえば、残林を当該土地から搬出撤去して初めて収去が完了したといえるのであり、したがって当該土地上に残在が残存するかぎり収去執行は完了していないともいえます。しかしこれを執行行為としてみるときは、事実上債務者の有していた事実状態を排除し、債権者の求める事実状態が社会通念上作出されたとみられる時期に執行は完了したものというべきであって建物収去の場合も建物の取りこわしが完了し、残材の搬出のみを残す状態にいたれば、一応執行は終了したというべきであり、残材搬出の方法を検討すればよいことになります。
前述のように残材を残すのみで収去執行が完了したとみた場合、残材の搬出については債務者に引き渡し、またその受領が拒絶されたときは民訴法七三一条を類推して換価競売をなし代金を供託する方法が考えられます。しかし多くの建物収去執行は土地の明渡執行とともに行なわれますが、この場合換価競売を行なうにしても、土地明渡執行における遺留物件とみて土地明渡執行にともなう換価競売とみるべきかという問題が生じます。通常建物収去土地明渡しは一個の執行手続として行なわれ、換価競売についても建物収去と土地明渡しといずれの手続の一環であるかを区別する実益はあまりなく、またいずれの手続に属するとみても誤りではありませんが、強いて区分して考えれば、建物収去は本来的に残材搬出までを予想していること、土地明渡しに対し建物収去が観念的には先行すべきことから考えて建物収去の一環として行なわれると解すぺきです。しかし換価競売がいずれに属するかという点よりも、残材搬出が未了であっても建物収去が完了したとみられる時点で、同時に行なわれる土地明渡しも完了させうることに留意すべきです。また収去すべき建物内に存していた動産についても残林と同様の措置を講じることができます。
建物収去は当該建物に抵当権等が付着していても執行に支障はありませんが、この場合、残材の売却代金に対しても抵当権の物上代位権が及ぶと解すべきです。

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