明渡執行費用の取立て

家屋明渡しを命じる判決の強制執行に必要な費用を取り立てるには、債権者はどうすればよいのでしょうか。この場合、家屋明渡しを命じる判決にもとづいて執行債務者の動産に対し差押手続をして取り立てます。そして執行費用額確定決定を得て執行債務者の財産に対し金銭債権の執行をすることもできます。通常、執行に必要な費用は、申立人が予納しますが、本来最終的には債務者が負担すべきものです。そして、強制執行手続は民訴手続の一種であり、執行費用は広義の訴訟費用に該当するため、執行費用についても訴訟費用に関する総則規定が準用されると解されています。したがって執行債権者は、受訴裁判所に執行費用額確定決定の申立てをし、その確定決定にもとづき、執行債務者の財産に対し金銭債権による執行をして執行費用を取り立てることももちろん可能です。しかし民訴法では、強制執行をうける請求と同時に執行費用を取り立てることができる旨の簡便な規定を設けました。現定では、本案の請求に関する債務名義にもとづいて執行費用を取り立てることがでぎること、つまりそれ以外に執行費用取立のための債務名義は不要であることを明らかにしたものです。したがって執行費用は、前記執行費用額確定決定によらず、本案の請求に関する債務名儀にもとづいて取り立てられるのが通常です。

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以上述べたことは家屋明渡執行費用の取り立てについても妥当します。かつては、この規定は、本案の債務名義による執行が金銭債権にもとづく差押である場合の規定であり、特定物引渡の強制執行については適用されない、との見解もあったようです。しかし判決例は、一貫して規定は特定物引渡の強制執行についても適用されることを明らかにしており、これが定説です。
家屋明渡しの執行は、通常の執行費用以外に、執行の目的外である家財道具等の動産類を搬出する費用、債務者が引き取らない動産の保管料等の費用がかかることが多く、そこで明渡人夫賃、動産保管料は、債務者が負担すべき執行に必要な費用に該当するか否かが問題となるのです。執行費用の範囲およびその額は、原則として民訴費法、執行官法、最高規等によって定型的に法定化されています。例えば執行官法一○条一項には、執行官が支出すべき費用として次のものも掲げられています。執行立会人の日当および旅費、技術者および労務者の手当、物の運搬保管監守保存の費用等。この現定に照らせば、前記明渡人夫賃、動産搬出保管料は五号、七号に該当すると解すべきであり、その費用額は実費の額によることになっています。したがって、一般的には、明渡人夫賃、動産搬出保管料は債務者が負担すべき執行費用に入るというべきであり、支出の必要性の有無、その適正額は、実際の場合ごとに、時間、難易、場所等の諸事情を勘案して決定されるべきです。そして本案の債務名義にもとづいて執行費用を取り立てる場合には、その範囲および額の算定は執行機関が諸法規に従って行ないます。家屋明渡執行の執行機関は執行官であるため、前記明渡人夫賃、動産保管料等の執行費用を支出する必要性およびその適正額の算定は執行官が行なうことになります。
この法規の建前を貫くかぎり、家屋明渡しの執行に際し、明渡人夫もしくは動産搬出のための執行補助者を必要とする場合には、執行官自身において、労務者を用意し、もしくは債権者の提供する労務者を雇用し、あらかじめ債権者に予納させた余納金のなかから執行官が適正だと認定する手当を支払うべきです。この見地から、債権者が人夫を調達し直接人夫賃を支払った事案について、人夫賃を執行費用に算入することは私的な強制執行を容認する結果になるとして、これを否定した判決例があります。これに対し、同様な事案について、法のたてまえによる方法が望ましいとしつつ、東京地裁の多年の慣行、執行官による人夫調達の困難性および人夫調達の必要性の有無を予測することの困難性等を考慮したのか、債権者が直接支払った人夫賃でも客観的に相当と認められる範囲において執行費用と認める旨立言している決定があります。東京地決は救済的決定ともいえますが、各地裁の慣行上の差異によって結論を異にする場合も考えられるので注意すべきです。
執行費用の取立ては金銭債権の取立てであり、その取立ての執行方法は差押です。したがって本案の請求が金銭債権であれば、強制競売、債権差押等の執行手続内で執行費用を取り立てることができます。しかし本案の請求が金銭債権以外の請求であれば、その執行手続内で執行費用を取り立てることはできません。それは執行方法が異なるからです。本案の請求が家屋明渡しであれば、明渡しの執行が終了しないと、はたして執行費用がいくらかかるか不明であるため、通常は、明渡しの執行が終了した後に、明渡しの債務名義にもとづき、例えば債権者もしくは第三者が保管している債務者所有の動産に対する差押の申立てをすることにより、執行費用を取り立てます。しかし明渡執行が終了したとして明渡しの債務名義を債務者に引き渡した場合には、執行費用取立の債務名義がなくなったのであるため、あらためて前記執行費用額確定決定を得て金銭債権にもとづく執行をするほかありません。

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