差押手続の違法による差押の無効

差押手続の違法による差押の無効は、配当異議の訴えの理由として主張することができるでしょうか。差押の無効は、執行手続上の違法事由ですが、配当表の記載内容を変更するものであって、配当異議訴訟で、主張することができます。配当異議訴訟は、目的物件に対する差押、換価によって得られた金銭を複数の債権者に対し配当表にもとづいて配当する手続において、配当債権者から異議が申し立てられ配当裁判所が配当を実施することができなかった場合に、配当期日に於て配当異議を申立たる債権者が民事訴訟法第六百三十三条に依り其の相手方たる他の債権者に対し提起すべき訴であって、これは相手方の債権の全部若くは一部の不存在を主張し、又は相手方の順位か自己の順位よりも先んずべからざることを主張する等の実体上の理由に基き、有利の配当を得んことを目的とするものです。この配当異議訴訟の本質については、形成訴訟説、確認訴訟説、救済訴訟説とに分かれますが、その性質論は、本問の結論を左右はしません。

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配当異議訴訟では、原告は、要するに自己が配当表の記載より多くの配当をうけるために、相手方の債権の不存在また自己の債権の相手方債権よりの優先順位を主張するという意味において、実質的には、相手方の配当請求権の不存在または原告の配当請求権の存在を基礎づけなければなりません。
原告は、被告の配当請求権の不存在または原告の配当請求権の存在の事由として、被告の執行債務者に対する債権の不存在または原告が被告の債権に対する優先権の存在など、被告が配当表どおり配当をうける理由がなく、原告がより多く配当をうけることができる根拠となるべき実体上の事由を主張することができます。被告は、原告に対する防御方法として、原告の債権または優先権の不存在の実体上の事由を主張して、配当表どおりの配当を受領することができる旨を主張することができます。以上は問題がありません。それでは、配当異議訴訟において主張することができる、判例のいう実体上の事由とは何でしょうか。
配当異議訴訟において、判例のいう実体上の事由とは、被告が配当表どおり配当をうけるべき理由がなく、原告がより多く配当すぺき理由になるような一切の事由を指すものと解されていました。ここでいう実体上の事由とは、配当表の実質上の内容に変更を及ばすべき事由をさし、その事由が、実体法上の理由に限定されたものでなく、配当表の記載上の手続的暇疵であっても、被告の差押または配当要求の無効のように、配当手続に加入することができず、したがって、配当表の実質上の内容に変更を及ぽすべき事由も含まれると解されていました。いわば、瑕疵の及ぼすべき結果いかんによって、実体上の事由かどうかを決していたといえます。これが、通説 であり、近年の判例です。
ところが、京京地判昭和四八年三月二八日は、差押の無効のような執行手続上の違法性を配当異議の訴えの理由とすることはできないとして、本問を消極に解する判示をしました。その要旨は、配当異議訴訟は、配当に与るべき債権者間において、配当要求の基礎となる実体法上の存否を争うために設けられた訴えの制度であり、したがって、執行裁判所が配当要求の効力を認めて被告を配当要求債権者として取り扱ったことの執行手続上の違法性を配当異議の訴えの理由とすることはできません。執行法上の差押の効力を争うことを配当異議訴訟の理由とすることは、配当要求の効力が質権等の担保権の存在を前提とせず、差押が担保権の発生原因とされない法制のもとでは、根拠を欠くことになります。執行裁判所が、もともと配当要求債権者ではない者を配当要求債権者として取り扱ったときは、執行手続の違背として執行方法の異議またはその裁判に対する即時抗告によって不服申立てをすべきです。かかる事項を配当異議の訴えについて主張しうるとすると、本来執行裁判所が判断すべき事柄についての判断の当否を、同一審級の裁判所が審査する結果となって不合理です。実体上の事由の判断であれば、執行裁判所は判断の権限を有せず、これは配当異議訴訟の受訴裁判所の権限として、職務の分担がされているため、かかる不合理は生じないということです。
この東京地裁の判決で、最も注目すべき点は、配当裁判所、配当異議訴訟の判決裁判所としての、と執行裁判所との職務分担の相違をあげていることです。民訴法は、配当手続を行なう裁判所を配当裁判所とよびますが、配当も、差押、換価に続く執行手続の一段階であって、執行裁判所が配当裁判所の職分を行なっており、その意味では、配当裁判所も、執行裁判所と本来同一であるといえます。ところが、配当異議訴訟の第一審管轄は配当裁判所の専属とされます。これは、判決機関としての配当裁判所であって、執行機関としての配当裁判所とは制度上分離されているといえます。その意味では、この東京地裁の判決の職分相違の指摘は正当です。ただ、配当異議訴訟の提起が配当裁判所に証明されると配当裁判所は当然に異議ある債権についての配当を実施できず、特に執行停止等の仮の処分を必要としないとの点で、他の執行関係訴訟と異なる点がありこれは、結局、制度的にも、執行機関としての配当裁判所と判決機関としての配当裁判所との分離が不完全なことを示し、多少たりとも、両者の結びつきがあることを示すものとみられます。
配当異議訴訟は、配当表に対する異議を前提とし、その異議について完結しないときには、異議を申し立てた債権者が、これを提訴するのです。配当表に対する異議について、実体上の事由にもとづく不服申立方法にかぎるとの見解とこれと配当表の作成にかかる手続上の事由にもとづく不服申立方法も含むとする見解とに分かれます。前記東京地裁の判決は、前者の見解に従っているものですが、配当表作成の手続上の違法であっても少なくともその違法を理由として債権者が配当表の内容を自己に有利に変更すべきことを主張しているかぎり、配当表に対する異議として主張すぺきであって執行方法の異議によるべきではないと解すべきであり、かく解したからといって、前述したような意味での裁判機関としての配当裁判所と執行機関たる執行裁判所との職務分担を左右するものでないといえます。なお、差押の無効の有無は執行裁判所においても審査判断しうることですが、すでに、配当手続きに進行してしまった場合においては、配当裁判所が審査判断することがでぎてもそれほど不合理ではありません。したがって、本問を積極に解する通説の見解が妥当です。

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