強制管理

建物につき強制管理手続が行なわれている場合、当該建物の抵当権者は、配当要求をすることができるでしょうか。この場合、建物の抵当権者は当該建物についての強制管理手続きにおいて配当を受けることができません。強制管理は、不動産に対する強制執行の一態様ではありますが、不動産自体を売却し、その代金をもって金銭債権の満足にあてる強制競売とは異なり、管理人をして不動産を管理させその収益をもって金銭債権の満足にあてようとするものです。これは不動産の収益全体に対する包括的な執行であり、当該不動産から生じる個々の天然果実および法定果実の差押をすることなしに、これら果実の取立てまたは換価によって金銭債権の満足にあてようとするものです。この強制管理の目的物については制限はありませんが、貸事務所、店舗、賃貸住宅等収益力のあるものについては、適切な執行方法となりうるものと思われます。

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現行民訴法は、不動産に対する強制執行として、強制競売と強制管理の、いずれかの一方法により、またはこれらの併用の方法ですることができると規定していますが、いままでの日本の風土、経済状況には強制管理は適していなかったためか、現実には強制管理の事例は強制競売に比較して非常に少ないのが現状です。
この強制管理については、現行民訴法には規定がありますが、担保権の実行について規定する競売法には規定がなく、現行法上は、抵当権者は強制管理の申立てができないものと考えているわけです。この点については、経済界等から抵当権者にも強制管理の申立権を認めるべしとの強い要望があり立法論としても十分に検討するに値していますが、そのためには抵当権についての民法の規定の手直しをしないかぎり困難であると考えられます。つまり、抵当権者に強制管理の申立権が認められないのは、抵当権者が優先弁済権しか与えられず、目的不動産の使用収益権能は、依然として抵当権設定者が有するものとされているからです。ただ、民法三七一条は、抵当不動産の差押の後には果実に対しても抵当権の効力が及ぶと規定しており、ここにいう差押は強制管理開始決定によるものを含み、かつ果実には法定果実をも含むと解すれば、民法の修正をすることなしに競売法の改正により、抵当権者にも強制管理の申立権を認めることが可能となります。ところが、ここにいう差押は、その趣旨から解して競売による場合のものでありまた反対説も有力に主張されてはいますが、ここにいう果実には法定果実を含まないと解するのが判例および通説です。このような判例および通説の立場では、抵当権者による法定果実に対する執行は、物上代位の方法により、またその限度でのみ保護されると解することになります。
現行民訴法による強制競売と競売法による任意競売とは異質なものではありますが、競売の点で目的を共通とし、手続もほぼ類似しているため、現在の通説判例および実務の運用も、強制競売と任意競売との間の記録添付を認めているため抵当権者はそれにもとづく強制管理の申立てをすることができれば、先行の強制管理開始決定に記録添付する方法により当該建物の強制管理手続において配当をうけられるはずですが、抵当権者には強制管理の申立権がないため、このような方法によって当該建物の収益から満足をうけることはできません。
現行民訴法では、強制競売については債権者平等の原則を厳しく貫こうとして、債務名義を有しない債権者の配当要求を認めていますが、これに対し強制管理手続においては、配当要求は執行力ある正本によらなげればならないものとしています。これは、強制競売にあっては、換価により債務者の所有する物が債務者の支配領域から逸脱するにいたるため、特定の差押の目的物ごとに清算を行なう、いわば目的物ごとの小破産的な手続にすることが合理的であると考えたのに対し、強制管理にあっては、たんに収益のみの差押であり、当該不動産自体は債務者の支配領域内に留まっているため広く配当要求を認める必要はないと考えたことによるもののようです。しかし、競売の場合でもそこまで債権者平等を貫徹することが合理的であるかは立法論的には検討を要し、そうでなくても、強制管理も債務者の動産あるいは債権に対する包括的差押であることを考えると、動産執行あるいは債権執行と差異を設けることが合理的であるか否かも立法論的には検討に値します。
問題は抵当権者を執行力ある正本による債権者と同一視できるか否かです。つまり、不動産の競売に関していえば、抵当権者には執行力ある正本をもつ債権者と同様に競売の申立権能があり、換価および配当手続きにおいても、差押前に登記を経た抵当権者は、なんらの手続を要せずして利害関係人とされ、特段の配当要求や計算書の提出をしなくても記録上によって債権額を計算して配当がうけられるという地位にあり、単純な債務名義を有しない債権者とは異なる地位にあるため、解釈上抵当権者にも配当要求を認めることができるか否かです。しかし、抵当権者に競売の申立権があるのは、抵当権には優先弁済権とともに実体法的に換価権能が与えられているからであり、また抵当権者がなんらの手続を要せずに利害関係人となり、配当にもあずかれるのは、抵当権が競売により消滅することと無関係ではないのです。また、抵当権の効力は、原則として果実には及ばす、しかも強制管理手続によるも抵当権は消滅しません。このような点からすると、抵当権者を明文の現定に反して執行力ある正本を有するものと解するのは妥当ではありません。現在の実務でも抵当権者の配当要求を認めておらず、配当要求を認めないのが通説です。もちろん、抵当椎者も被担保債権につき債務名義を得れば、強制管理の申立てによる記録添付あるいは配当要求をすることができますが、それは抵当権の行使ではないため、そこにおける配当では優先権を主張することはできないと解されます。
抵当権の目的物の使用収益権能を設定者のもとに止めておくことが抵当権の本質であるため、果実に対しては原則として抵当権の効力は及びませんが、問題は、抵当権者が強制管理中の収益、とくに賃貸借契約にもとづく賃料債権を物上代位の規定により差し押えることができるか否かです。強制管理は、収益に対する包括的執行であるため、差押の効力が発生した以降については、強制管理の目的となっている収益につき、債務者は取益権能を喪失し、また、そのような収益につきすでに強制管理が開始されている以上、他の債権者はその手続に、記録添付または配当要求という方法で加わらないかぎり、配当にあずかることはできません。強制管理の目的となっている動産または債権につき個別に差押をしても、その差押は効力を生じないと解されます。
問題は、一般先取特権や、租税債権のように優先権をもつものあるいは物上代位のように差し押えることによって優先権を主張することのでぎるものも同じになるのかどうかです。このうち、一般先取特権等は配当要求等の方法でも自己の権利を確保することができますが、抵当権者はそのような方法では保護をうけられないため、なおのこと問題となります。抵当権が物上代位によりその権利の行使を許されている場合に、そのような実体法上の効方を手続上で奪うことは許されないため、抵当権者は強制管理中の収益についても差し押えることにより優先権を主張することができると解するのが相当です。抵当権者が賃料請求権について物上代位による差押ができるかについては判例も分かれおり、反対説も有力に主張されていますが、通説はこれを肯定しています。また、実務の運用もこれを肯定しています。つまり抵当権者による強制管理中の収益の差押は、通説の立場では肯定することになりますが、反対説の立場では否定することになります。

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