任意競売手続における配当要求

B所有の土地につき一番抵当権者Cが競売の申立てをなしており、その他には、二番抵当権者Dがいます。CDの被担保債権額および最後の二年分の利息の合計額をもってしてはなお売却代金に剰余を生じる見込みがありますが、未払利息金額を合計すると剰余は生じないという状況にあるとき、Bに対する無担保債権者Aが競売手続を利用して債権の回収を図る方法はあるのでしょうか。この場合、Aは、配当要求をすることができると解すぺきです。本問で、不動産の価格を1000万円、CとDの各債権元本を400万円と300万円、各利息金額のうち二年分を60万円と40万円、これをこえるものを180万円と120万円としAの債権額を100万円として考察を進めることとします。
まず債権者がCのみとすると、Cは元利金全部の640万円について抵当権の実行をすることができます。次に、債権者がCとDの場合、抵当権の順序は登記の前後によるためCがDに優先することになりますが、利息については優先権は最後の二年分について効力を有するのみであるため、Cは460万円、Dは340万円について抵当権を主張することができるのにとどまり、1000万円からこれらの合計額を差引いた残額の200万円については、各優先権のない利息の按分額である120万円と80万円の弁済を受けることになります。そして最後に、Aがこれに加わるとき残額200万円について誰も優先権を主張することができないために、これら三人の債権者は、債権者平等の原則により、各その債権額の按分額で、Cは90万円、Dは60万円、そしてAは50万円の満足をうけることにならなければなりません。
問題はその満足方法です。不動産の強制競売の場合には、民訴法が配当手続を規定し執行の申立てをした債権者以外の債権者にも配当要求を許しますが、競売法は不動産売却代金を受け取るべき者に交付すると規定するだけで、この種の規定を欠くので、Aのような一般債権者の配当要求を許すのかどうかが問題となるのです。

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任意競売については、配当手続を認めない考え方があります。これによると、競売法が強制競売に関する民訴法の規定を準用するのは換価についてであって、競売代金の交付についてはその準用がありません。したがってもし競合する債権者間に争いがある場合には、その部分は債権者を確知しえないものとして供託し、一般の訴訟によってその解決をするほかありません。任意競売の目的は目的物の公平な換価をすることにあり、売得金は客観的に受領権のある者に交付するのにとどまります。配当手続をして一般債権者の異議を許すのでは、担保権者の手続上の独古的地位を剥奪することになります。ただし、この説でも、任意競売進行中の不動産について強制競売の申立てがあったときには記録添付をすることになりますが、この場合には、売得金をまず担保権者に交付し、残額について配当手続を行ないます。
判例でも、当初は任意競売について配当手続に関する民訴法の規定は準用されないとしていましたが、後に、任意競売手続開始後同一不動産に強制競売の申立てがあったときは、民訴法六四五条の準用により記録添付の方法によることとしてこれに配当要求の効力を認め一般債権者の配当要求は原則として許さないが執行力ある正本を有する債権者の配当要求は許すものとし、さらに任意競売のまえ目的不動産に仮差押をした債権者は、競売手続にあっては配当に与る債権者となるとしています。そして、実務上は任意競売手続にあっても、担保権者が競合する場合には強制競売の場合と同じく配当表が作成されており、判例は、配当表が作成されたときには民訴法の準用により配当異議の訴えを提起することができるものとしています。学説にも、執行正本を有しない債権者は配当加入できないとするものがあります。
これらに対して、民訴法の準用により、執行力ある正本を有しない債権者にも配当要求を認めようとする見解があり、近年はむしろこの考え方を採るものが多くなっています。

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