競売の目的不動産の危険負担

建物につき競落許可決定言渡し後、確定前に建物が滅失または毀損した場合、競落人にはなんらかの救済を求める方法があるのでしょうか。競落人の責めに帰することのできない事由によって競売の目的物たる建物が、競落許可決定後その確定前に全部または一部滅失したときは、競落人は、即時杭告の理由としてその滅失を主張し、競落許可決定の取消を求められます。競落許可決定確定後は、債務者または配当受領債権者に対し担保責任を追及でき、競売の目的物たる建物の著しい毀損の場合には、競落人は競買の申出を取消すことができ、競買申出の取消を主張して競落許可決定の取消を求めることができますが、許可決定が確定してしまえば、代金支払義務を免れえません。減失、毀損が債務者の責めに帰すべき事由によるときは、競落人は、代金支払義務を免れただけでは償えない損害の賠償を債務者に請求できます。

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競売の目的物の滅失、毀損が競落人の責めに帰すべき事由によるときは、競落人の救済を考える必要はありません。そこで滅失、毀損が債務者の責めに帰すべき事由によって生じた場合と、競落人ならびに債務者のいずれの責めにも帰しえない事由による場合とが検討されるべきです。後者はいわゆる危険負担の問題であり、法律は競売期日と競落期日との間に天災その事変によって不動産が著しく毀損した場合について、最高価競買人として呼上げをうけた者からその競買の取消を求めうることを認め、さらに、この取消があった場合、競売手続は、目的不動産の最低競売価額の決定から新規にやり直される旨を規定していますが、競落期日において競落許可決定が言い渡された後に目的不動産が滅失、毀損した場合の処理については、なんら特別な解決を示していません。そこで、このような場合に、その損失を誰が負担すべきか、また競売手続がどのような影響を受けるかは、あげて解釈にゆだねられています。
競売の目的不動産の滅失、毀損による危険負担については、競落許可決定確定の時から競落人が危険を負担するというのが通説、判例ですが、このほかに、競落許可決定言渡しの時とする説や、競落許可決定の確定を停止条件として競落許可決定言渡しの時とする説や、競落許可決定確定後代金を支払った時とする説などがあります。
競落許可決定の言渡しがあっても、即時抗告による取消の可能性があるかぎり、競落人としては競落による利益をまだ確実に掌中に納めてはいないため、この段階ですでに目的不動差の滅失、毀損の危険をこれに負わせるのは公平でないとみるのが通説、判例の立場です。
競落許可決定時説の根拠を要約すると、民法五三四条一項を適用すれば当然にこの説になる。強制競売では、競落許可決定の言渡時に、許可の取消、競売代金の不払い等を解除条件として、所有権移転の効果が生じることになっており、所有者たる競落人が危険を負担するのは当然です。民訴法六八七条二項、三項が競落許可決定後競落人に不動産管理のための申立てを認めていること、ならびに民訴法六九四条二項二号が競落許可決定言渡しの時からの利息を売却代金となし、その反面、競落人は許可決定言渡しの時から果実収取権を取得することを考えあわせると競落許可決定の言渡しによって売買の効力はすでに生じているとみるべきであり、また実質的にも、競落人はその申立てにより目的不動産を管理人に管理させる命令を得ることができるため、危険を負担させるのが正当であるということが根拠とされています。しかし、これらの論拠はいずれも十分な説得力をもつものとはいえません。まず第一に、競売を私決上の売買の一種とみる私法説や、競売を公法上の処分と認めつつ、私法上の売買としての性質および効果の併存を説く折衷説においても、民法の現定をつねに無条件に適用して競売の効果を決めるべきではなく、競売の特殊性を考慮すべきであると考えられており、ことに民法五三四条一項のようにその不合理性が強く主張されている場合には、その適用は一層慎重でなければなりません。次に、民法は危険負担につき所有者主義を採用していないため、たんに観念的に所有権が競落人に移転したとしても、それによって直ちに危険負担が移るとはいえません。また民訴法六八七条二項、三項による目的不動産の裁判上の管理は、元来競落人の利益のためのみに行なわれるものではなく、また競落人の有する将来において確定的に所有権が得られるとの期待的利益は、危険負担の有無とは別に保護されてしかるべきであるため、裁判上の管理を競落人が危険を負担することの効果と見るべき必然性はありません。
競落許可決定の時に、その許可決定の確定を停止条件として、危検負担が競落人に移転するとみる学説も、民訴法六八七条二項、三項による競落人からの管理の申立てを重視し、競落許可決定のときから管理の申立てのできることを説明できる点に自説のメリットがあるとしていますが、管理をしてもらえることと危険を負担することとは独立別個の問題であると考えるべきであるため、停上条件付の危険負担の移転などという考え方を持ち出す必要はありません。
競落許可決定確定後代金支払時に危険が移転するとみる説によれば、競落人の代金支払義務は、通常の売買におけるのとは異なり、競落人を拘束するものではなく、これを支払うか否かは競落人の任意に委ねられ、競落人は競落許可決定確定後も代金を支払うか、再競売手続に移行させて競落代金の不足額と手続費用を負担するかの選択をなしうるものであるため、代金支払面に競落人が危検を負担する理由はないと説かれます。代金支払時説を採れば、競落人の保護は完璧ですが、現行法の解釈としては無理で、まず許可決定後も代金を支払うか否かは競落人の任意とみることは問題であり、むしろ再競売がなされた場合の不足額ならびに手続費用の支払義務は、代金不払いによる契約解除にともなう損害賠償額が定型化されたものと考えるべきです。またこの説によれば、確定後代金支払期日前に目的不動産が滅失、毀損した場合にも、競落人は代金支払義務を免れることになりますが、そのために競落人は手続上いかなる手段をとりうるかにつき現行法上なんら規定がありません。これは法がそのような事態を予定していない結果とみるべきです。
このように競落許可決定確定までは債務者が危険を負担すると解するべきですが、それは目的不動産の滅失および著しい毀損の場合にかぎるべきです。民訴法六七八条が著しい毀損のみを問題とし、また、競落人は隠れたる物の瑕疵にもとづいては何人に対しても担保責任を追及しえないことを考えると、著しい毀損に達しないものは、常に競落人が危険を負担すると解すべきです。もっとも、その毀損につき責めを負うべき第三者があるときは、競落人はその者に対し損害の賠償を請求できることはもちろんです

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