個別競売と一括競売

数個の不動産を競売に付する場合、各個の不動産を別々に競売する方法と、複数の不動産を一括して競売の対象とし、これらを同一人に競買させる方法とが考えられます。一般に前者を個別競売、後者を一括競売といいます。強制執行および任意競売を通じて、一括競売に関する規定が何もないこと、民訴法六七五条が過剰競売を禁止していること等から、個別競売が法定の売却条件であると解し、すべての利害関係人の合意がなければ一括競売の方法によることは許されないとする学説もあり、古くは同趣旨の判例もありますが、近年では、ほとんどすぺての判例、学説がこれを法定の売却条件と解しない点で一致し、裁判所の裁量によって個別競売または一括競売のいずれかを選択することができるものと解しています。一括競売を希望する利害関係人は、その旨を裁判所に申し出ることは自由ですが、裁判所がこれに拘束されることはなく、申出は職権の発動を促すほどの意味をもつにすぎません。ただし、利害関係人全員の同意のもとに一括競売の申出があった場合は、一括競売をすることができない性質のものでないかぎり、裁判所は、その申出を拒否できない、とした裁判例があります。また裁判所が一旦いずれかの方法を選択しても、その後の手続の進行に照らして相当と認めるときは、何時でも他の方法に変更することができます。

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一括競売が行なわれる理由は、そのほうが数個の不動産全体をより高価に競売できるからです。数個の不動産相互の関係から、これらが同一人の所有に属するときに初めてその効用を充分に発揮できるという場合は多く存しますが、個別競売の方法ではこれら複数の不動産を同一人が必ず競落できる保障がないため、全体としての価格の低落が避けられません。不動産の競売は、競売物件をできるかぎり高価に売却するのが第一の目標であるため、一括競売とすべきか否かは、まずこの観点から定められるべきです。つまり、数個の不動産が、位置、形状、構造、機能の諸点により客観的経済的に観察して、有機的に結合された一体をなすものとみられ、これを個別に競売するより一括して競売する方が当該物件全体の効用を高め、そ の価額も著しく高価となるべきことが明白に予測される場合には一括競売するのが相当であるといえます。より具体的には、次のような場合が一括競売に適するといえます。
土地とその上の建物が同一所有者に属し、建物のために法定地上権が生じる場合にあっては、建物だけがさきに競落されると土地の価値が著しく低滅することを避けられないず、法定地上権が生じない場合であっても、敷地と建物が別人に競落される場合の合計価額は、やはり低滅を免れません。したがって、これらの場合には、他に特別の事情がないかぎり、一括競売とするのが妥当です。
数筆の土地のうち一部が競落されると他の土地が袋地となり、利用価値を著しく損なうこととなる場合は、一括競売に付すべきです。その他、数筆の土地が、一筆のみでは利用価値に乏しいが、数筆を合することによって利用価値を増す場合には、一括競売が妥当です。ただし、地価の高い商業地等にあっては、広い面積を一括競売することによって競買申出人を得るのに困難をきたし、価額の点でもかえって不利となることが考えられるので、慎重な検討が必要ですこのような場合、適当な範囲に限定して一括競売に付することも、もちろん可能です。
数個の建物が主従の関係にあり、あるいは、構造上または機能上有機的に関連しているため、これらを同一人が所有、使用したほうが利用価値が大きい場合には、一般的にいって、一括競売を妥当とするはずです。
一括競売にすることが有利であるかどうかは、個々の具体的事例に則して判断さるぺきであって、競買申出人を得やすく、手続が簡明であるという個別競売の利点と対比して、どの程度高価に売却できる見込みがあるか、手続が遅滞するおそれがないか等を総合、勘案しなければなりません。一括競売を相当とするような事情が窺われる事案については、裁判所としては、鑑定を命じるにあたり、個別競売の場合の評価とともに一括競売の場合の評価をもさせるのが適当です。利害関係人としても、一括競売が有利であると考えるならば、その旨を裁判所に具申すると同時に、現地の状況等についての詳細な資料を提出するなどして、裁判所の判断を妥当ならしめるよう努めるぺきです。
諸般の事情を考慮したうえで一括競売にするかどうかは裁判所の裁量によるところではありますが、その判断が合理的な裁量の範囲を逸脱した場合には、競売手続の違法をきたすのではないかという問題があります。
裁判例としては、宅地とその地上の建物が同一人の所有に属する場合に関し、法定地上権を生じるからというだけで必ず一括競売しなければならないものではなく、地上権の価額分を建物価額に加算すればたりるとした例があり、また、強制競売の場合について、建物の競落人がみずから土地を競落することもあり、また土地の競落人との合意で土地占有権原を取得することもありうるため、土地と建物の価額は長短相補う関係にあるとの理由で、個別競売を肯定した例があります。以上は、一括競売の現実の必要性についてどちらかといえば消極的な態度を示す事例といえますが、現在の不動産取引の実情や競売の実態に照らし、このように割り切って考えるのがよいかは問題です。
以上に対し、不動産競売制度は、裁判所の関与のもとに、公正かつできるかぎり高価に不動産を売却することにより私権の満足をはかることを目的とし、裁判所の裁量はその恣意を許す趣旨ではないことを強調し、一括競売が妥当であるのに個別競売をした点をとらえて競落不許の事由とする裁判例が多くあらわれています。一例として、名古屋高決昭和三六年六月一六日は、同一敷地内の土地およぴ建物が共同担保に供されており、競売申立人から一括競売をされたい旨の上申書が提出されていた事案について、建物のみの競落は許さるべきでないとしています。同趣旨のものとして、東京高決昭和三八年一二月二一日、東京高決昭和四○年三月一五日があります。また、東京高決昭和四九年一月一七日は、二筆の相接する土地の一筆が先に売却されると他方は袋地に近い状態となり、評価額が三割以上低下するとの認定のもとに、個別競売による競落を許すぺからざるものとしています。
民訴法六七五条によれば、数個の不動産を競売に付した場合、ある不動産の売得金のみで債権および執行費用を補うに十分であるときは、他の不動産の競落を許すことができません。この規定は、任意競売についても準用があります。この法意に照らして、一般的には一括競売の必要性がもっとも大きいと思われる同一敷地上の土地、建物であっても、一方の最低競売価額だけで債権および執行費用の額をみたすときは、一括競売を許さないと解するのが一般です。しかし、これに対しては、土地とその地上建物の一括競売については民訴法六七五条の適用がないとする福岡高決昭和三五年一一月一四日があったところ、近年において、民訴法六七五条の適用を原則として肯定しながら、数個の不動産を同時にかつ同一人に競落させる強度の社会的、経済的必要がある場合にかぎり民訴法六七五条の制約を排除して一括競売をなしうるとの注目すべき見解を示した裁判例があらわれています。
教個の不動産に、他の債権者のために順位の異なる抵当権が設定されているときは、一括競売に付することが許されないと解されています。もっとも、その理由は売得金のうち後順位抵当権者に配当すべき金額を確定するにつき各不動産の競落価額が明確にされねばならない点にあるため、そのような必要の生じない場合、つまり、売得金をすべて第一順位の抵当権者に配当して余剰を生じる見込みがない場合には、一括競売に付しても支障はありません。その反面、共同抵当物件の一部に先順位の抵当権が設定されている場合や、同一債権者の各別の債権を担保する抵当権が数個の不動産上にあり、これらに後順位抵当権が設定されている場合、その他個々の抵当不動産ごとに売得金の額を確定する必要がある場合には、すぺて一括競売が許されないこととなります。そこで、このような場合には、一括競売の方法によりながら、全体の売得金を個々の不動産ごとに割り当てるべき比率をあらかじめ定めておくことによって目的を達するという方法が提唱されています。

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