強制競売と目的不動産の管理

強制競売開始決定がなされた後、債務者は建物を十分に管理せず、荒れるにまかせており、このままでは建物としての価値が低下するばかりです。債権者として、建物の価値を保全して高価に換価できるようにする手段はないでしょうか。現行法上では債権者に適切な手段を見出しにくく、立法的解決が望まれます。強制競売は、不動産の交換価値を把握してこれを換価した代金をもって金銭債権の満足に充てる制度です。強制管理のように、目的不動産の用益価値を把握して、これから得られる金銭的利益を満足の対象とするものではないため、強制競売にあっては、強制競売の開始決定があっても、債務者が当該不動産の利用および管理をなす権限にはなんら影響がないものとされています。

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有体動産の場合とは異なり、債務者に占有をさせておいたままでも、第三者に善意取得されるおそれはないため、換価後に管理と競売人への引渡しを実現できればよいというのが法律のたてまえです。債務者としても、本来なら当該不動産が高価に換価される方が有利だから通常ならば債務者も当該不動産の管理を十分にし、価値の下落を防ぐ手だてを講じるのが当然と考えられます。だから、一般には、当該不動産を債務者の管理のままにしておいてもよいであろうというのは、合理的でもあります。
ところが、現実には、債務者が不動産の管理を十分にせず、不動産の価値が低下してしまうという例が必ずしも珍しくありません。不動産が土地である場合は、それほど問題は多くありません。農耕地のように、肥培管理を十分にしないと地味がやせるというようなこともうりますが、まずそう例はありません。建物の場合は、構造や新旧にもよりますが、管理不十分のために価値が低下するという例は割合多く見られます。むしろ、債務者の改造で、せっかくの高価な建物が価値を少なくするという例もあるくらいです。このような事態は、合理的な考え方では予測できませんが、現実には経験されるところです。
当該不動産の外にも責任財産の残されている場合は、債権者の満足を妨害してみても、結局は他の財産に対してさらに強制執行を受けるだけで、債務者にとってなんの利益もなく、逆に債権者にとっても特に不利益はありませんが、すでに破産状態で他に責任財産もないようなときには、債務者としてはそれ以上の不利益はなく、単に債権者を困らせるという目的だけで唯一の責任財産の価値の低下を傍観するという態度に出るのも、分からないわけではありません。
民訴法は、このような事態を予測しないためでしょうが、なんの対応手段も定めていません。競落許可決定後に不動産の管理命令が可能であることの反対解釈からいっても、むしろそれ以前は債権者による不動産の管理は否定されているとみるのが素直です。強制競売の手続の一環としての対応手段がないとすれば、一般的な保全処分を検討するしかありませんが、これもまた理論的に難しい問題があります。考えられるとすれば仮処分であり、結論的にこれを是認する見解もありますが、理由は明確ではありません。
債権者は、債務者の個々の責任財産について何らかの権利を有するわけではありません。差押も、当該目的物件の処分を禁じる効果はありますが、それ以上に債権者に積極的な実体上の権利を与えるものではありません。ここにいう処分とは、法的なそれであり、事実上のそれをいうのではありません。したがって、仮処分を考える場合の被保全権利の構成に困り、執行法上差押債権者であることから、目的物件について、少なくとも価値を損う事実行為をも差し止める実体上の権利が生じるとでも考えないかぎりは、説明のしようがありませんが、このような考え方も、かなり疑問があります。差押によって差押質権の発生を認める法制の下でならば、実体上の権利を説明する手掛かりがありますが、このような構成をとらない民訴法の下では、いっそう説明が難しくなります。

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