立木に対する強制執行

立木に関する法律により所有権保存の登記をうけた立本に対する金銭債権の強制執行は、一般の不動産執行の例によるべきですが、未登記の立木に対する金銭債権の強制執行は、土地と立木とが所有者を異にするか否かにかかわりなく、民訴法六二五条にもとづき立木を伐採する権利を差し押え、これを換価する方法によるべきです。
立木に関する法律による所有権保存の登記をうけた立木は、独立の不動産とみなされるものであるため、地盤たる土地とは別個に強制執行の対象となるものであり、しかもその手続は一般の不動産執行の例によるべきです。

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立木法の適用の要件をみたしながら同法による保存登記をうけていない立木および立木法の適用の対象とならないが独立の取引価値のある個々の樹木については、かかる立木も取引上地盤と離れた独立の価値を有するものとして、土地とは別個に取引されている実情が依然として存するところです。しかして、その所有権移転の効力を第三者に対抗するため明認方法なる慣習上の公示手段により公示されています。このような未登記の立木は、本来土地の一部であるため、土地が処分されたときは別段の意思表示のないかぎりその効力は立木にも及ぶものです。したがってかかる立木が土地の構成部分にすぎないことを理由に、土地の権利に対する執行の目的に包括されるのみで、伐採されるまでは独立の強制執行の対象とはならないとする見解も考えられるわけです。しかし、かかる未登記の立木は土地とは別個に取引される実情が存するのであるため、これをつねに地盤と一緒でなければ執行の対象とはならないというのは取引の実情を無視するものであるのみならず、超過差押、過剰競売を禁止する法の趣旨にも合致しません。
未登記立木に対する強制執行が肯定されるべきものとして、その強制執行の方法については、従末必ずしも定説がありませんでした。執行の方法については次の三つの見解があります。
不動産執行説では未登記立木が独立の物権の目的たりうる場合には独立の不動産とみるべきであるとし、そうである以上執行方法も不動産執行の手続きによるべきであるとしています。しかし民訴法六五一条にいう競売申立ての登記ができないのではないかとする疑問に対して、競売申立てのあったことを登記簿に記入することの必要はその不動産に対応する登記簿が存立する場合のことであって、その手続ができないからといって直ちに執行を排除すべきではなく、判例が是認する明認方法をもってこれにかえうるのであり、執行裁判所は登記官への嘱託に準じ第三者をして競売事実の明認方法を講じて手続を進めるべきであるとしています。しかし、不動産執行の手続は登記の記入を基礎とするものであり、明認方法という事実的なものをもって登記の記入に代えることには問題がありすぎて妥当ではありません。
有体動産執行説では執行法上の動産、不動産の区別は実体法上の概念のみによって判断すべきではなく登記登録が可能かどうかによって定めるべく、未登記の立木は有体動産として取り扱うことができるとしています。しかし、明認方法によって公示される権利変動は、引渡しを対抗要件とする動産の権利変動にも対比しうるものであるという実態に着目して、立木登記の要件を備えない立木について、明認方法がすでに債務者により、あるいは債権者が代位して債務者名義になっていることを前提条件として、有体動産執行の手続によるべきものとしています。
権利執行説では未登記の立木は不動産の一部というべきであり、植木屋が商品として土地に一時的に植えた場合のごときは別として、動産とみることはできません。立木の取引の実際では独立した動産の売買と観念しているとしても、法律的には立木を伐採して動産にするという権利、立木伐採権を売買しているとみるべきです。したがってこれに対する執行方法は立木伐採権を執行の対象とし、これを差し押え換価する方法によるべきであるとしています。
未登記の立木に対する金銭債権の強制執行の方法は、土地と立木とが所有者を異にするか否かにかかわりなく、民訴法六二五条にもとづき立木を伐採する権利を差し押え、これを換価する方法によるべきものと考えられます。立木の売買は通常伐採のためになされるのが取引の実態というべきであり、未登記の立木に対する執行方法としては、立木を伐採する権利を差し押え換価するというのが取引の実態に相応するものです。もっとも、土地の所有者と立木の所有者が異なり、しかも立木所有者が土地の占有権限を有しない場合には、立木伐採権に対する執行を観念することは容易ですが、土地と立木とが同一人の所有に属する場合にも立木伐採権を観念することができるかが問題です。土地と山林の所有者が同一人に属する間は立木伐採権なる権利が差押の対象として顕在化していないことは確かです。しかし、立木を競落するものは立木を伐採してこれを動産にすることを目的としているのであり、したがって、執行の目的物は土地所有権に潜在的に存する立木伐採権であり、この立木伐採権が差押によって顕在化すると構成することが可能です。
未登記の立木に対する金銭債権の強制執行の方法について、従来の実務の取扱いは、権利執行説に従うものが主流をなしていたといわれます。古く明治三二年一二月一九日民刑第二○三五号民刑局長回答は、債務者が土地のみを他に売却しその地上に生立する樹木のみを所有する場合に、債権者は民訴法六二五条により債務者の有する樹木を収取すべき権利を差し押えることができるとし、この外明治三七年六月四日委員会決議議案第二七九一号同年七月一五二号一九貢、大正一○年五月一九日民事第二一七八号民事局長電報回答、大正一二年一一月二七日民事第五三二三号民事局長回答、昭和三二年一一月一八日法曹会民事財産法調査委員会決議がいずれも同極旨です。
最高裁判所は、執行吏が未登記立木になした有体動産執行をめぐる国家賠償請求事件に関連して、この間題についてその見解を明らかにしました。前掲昭和四六年六月二四日判決がそれであって、この判決によれば、土地と立木とが所有者を異にするか否かにかかわりなく、立木は法律上動産ではないため、立木を目的とする強制執行は、執行官の行なう有体動産に対する強制執行の手続によるべきではなく、執行裁判所が、民訴法六二五条に基づき立木を伐採する権利を差し押え、これを換価する方法によるべきものと解するのが相当であるとしています。
この最高裁判所判決によって、今後の実務は権利執行説に従って運用されるものとみられるのであり、実務的には一応の妥当な解決をみたといえます。

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