共有の不動産の強制執行

BC共有の不動産につき、Aは、BC両名を債務者とする債務名義にもとづき、金銭債権の強制執行を申し立てたいとします。この場合は不動産に対する強制競売の申立てができるのでしょうか。これはBC両名を債務者とする債務名義に基づき、BC共有の不動産に対し強制執行をしようとする場合は、その持分はどうあれ、一個の所有権を対象とするものであるため、通常の強制競売の申立てができます。BCいずれかの共有持分に対し、強制執行をしようとする場合は、民訴法六八九条および六四〇条以下の規定にもとづき強制競売の申立てができます。

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数人がある物を共同所有する形態を共有といいます。甲、乙二人が一筆の土地を買い、これを所有している場合は、甲、または乙が一人で一筆の土地を所有しているのではないことはもちろん、甲、乙がそれぞれそのの土地の一部を所有しているのでもありません。甲と乙とが共同して一個の物である土地を所有しているのです。ただ、甲、または乙という共同所有者の一人が、共有物について有している支配権能を持分といい、単独所有者の所有権とは異なった取扱いうけることになるのです。しかし、共有者の有する権利の性質、内容は、単独所有者の権利と異なることなく、その分量および範囲に広狭の差異があるたけで、このような自己の持分権については、各共有者は自由に、しかも独立してこれを処分することができます。したがって、これを差し押えることができることはもちろん、それが不動産の共有持分の場合には、不動産に対する強制競売の手続に従うぺきものとされています。
BCは共同して不動産を所有しているのであって、その持分はどうあれ一個の所有権を対象とするものであるため、これに対して強制競売の申立てができることは異論のないところです。この場合は単独の債務者兼物件所有者に対し競売の申立てをする場合と異なることはありません。つまり債権者は、目的不動産所在地の地方裁判所に対し書面または口頭をもって強制競売の申立てをします。実務は手続の確実を期する必要上、書面をもって申し立てることとしており、口頭による申立ては実施されていません。申立書には、債権者、債務者の氏名、住所、および裁判所を表示し、強制競売の対象たる不動産を記載します。不動産は登記簿謄本、未登記の場合は、物件所有証明書記載の不動産の表示と符合することを要します。もし登記簿などの表示と申立時の不動産の実態が異なっていても、目的不動産としての同一性が認められるかぎりは、競売手続を進行することはさしつかえませんが、ただ競売代価などに影響があるので、同一性が認められる書面を提出し、登記簿面の記載とあわせて不動産の現況の種類、構造、地積または床面積を記載するようにします。そのほか申立書には、競売の原因たる一定の債権と、執行しうべき一定の債務名義を記載することが要求されています。競売の原因たる一定の債権とは、債権者が弁済をうけようとする一定の請求額です。申立書には、執行力ある正本のほかに一定の書類を添付しなければなりません。つまり競売の目的不動産が債務者の所有であることの証明書目的不動産に対する公課証明書、賃貸借証明書などを添付します。なお、強制執行を開始するにあたっての要件を具備した旨の証明書を添付すべきことはもちろんです。
債務者の共有不動産に対し、一個の所有権として競売の申立てがなされた場合には、これを競売する際は実務では一括競売の方決で行ない、共有持分を各別に競売するなどの方法は採っていません。これは競落代金の納付など爾後の手続および権利関係の複雑さを避けるためです。もっとも、共有持分を競売する方法を採ることもさしつかえはないものと考えられます。
上述の競売手続においては、競売申立登記は一個の所有権に対してなされているのですが、もし債権者が共有者二人のうちの一人に対する、たとえば設問ではBとの間で示談が成立したため、Bの分の強制競売の申立てを取り下げたときは、裁判所はBの共有持分の差押登記の抹消登記の嘱託をすることになります。この競売手続は一個の所有権に対してなされたものですが、元来共有者に対する執行であるため、共有持分に対する競売の性質をも有しているので、爾後はCの共有持分に対して差押登記が存在していることになり、裁判所はCの共有持分に対する競売手続として進行させるべきです。
不動産の上にある共有持分は、民訴法六八九条によって不動産執行の対象となりますが、設問において、もしAが、BかまたはCの共有持分に対し強制競売の申立てをする場合には、不動差に対する執行に従うことを原則としているので、差押、換価、配当の各手続は民訴法六四○条以下の規定によってなされます。しかし共有持分の特質から次のような特別の手続がなされます。
競売申立書に記載すべき事項について。競売申立書には民訴法六四二条に規定する事項のほか、債務者である共有者以外の共有者全員の住所、氏名と、債務者を含めた共有者全員の持分の割合を明示しなければなりません。それは競売申立てのあったことを、他の共有者に通知する必要があり、最低競売価額は債務者の持分について定めることになるからです。この共有持分については、実体的に各共有者の持分は相均しきものと推定されているため、従来は共有者のために権利の設定、保存、または移転の登記を申請する場合には、当事者間に持分の定めがないときは、その持分は記載を要しないとされていました。しかし、それでは公示の明確を欠くことになるということで、昭和三五年法律第一四号不動産登記法の改正にあたり、必ず持分の記載を要することとされたのです。したがって、それ以後は共有持分の割合が記載されない共有の登記はないはずであるため、競売申立書には登記の表示による持分を記載しなければなりません。
競売申立登記は、競売開始決定の効力である譲渡禁止のあったことを第三者に公示し、一般取引の安全を期するためになされるのですが、共有持分に対して競売開始決定がなされたときは、裁判所は、特に持分について競売申立てのあったことを示して登記官に登記の嘱託をします。
共有持分に対して競売の申立てがあったときは、裁判所は他の共有者に、申立てがなされたことを通知しなければなりません。他の共有者は、競売の結果何人が共有者となるかについては大いに利害関係があるからです。しかし、この通知は、債務者に対する競売開始決定の送達と異なるので、これを欠いたとしても競売開始決定の効力には影響はありません。
最低競売価格は、共有不動産全部について評価をなさしめた後にこれにもとづいて債務者の持分に相当する額を算出します。共有持分は全体の割合上の一部分にすぎないので、その部分の評価は全体について評価をしなければ定められないからです。
共有持分を競売した結果、これを買い受けた競落人は、債務者の持分を取得するため、債務者は共有者である地位を脱退して競落人がその地位を取得し、競落によって得た持分をもって他の共有者と可ての不動産を共有することになるのです。

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