株式担保と増資、減資

株式の担保取得形式には、略式質と登録質という質権設定方式と、名義書替までする譲渡担保と、それをしない譲渡担保という譲渡担保方式とがあります。この担保形式のうち、名義書替までする譲渡担保方式であれば、その株主名義が担保権者となっているのであるために、その発行会社が増資を決議し、新株が発行されることになれば、担保権者は自己の名義により新株引受権を取得し、自らの資金によりまたは設定者の資金によりその払込みをすることにより、引き続き担保の目的とすることが可能です。その場合に、払込金の資金を担保権者が支出していれば、その新株の処分代金について優先弁済権を取得するとともに、新株について担保解除した場合には、事務管理というよりむしろ委任事務処理の求償権が認められることになります。しかし、担保権者がその新株引受権について支払いをしなかった場合、その担保権者が設定者に対し損害賠償債務を負うことになるのではないかと思われます。しかし、現実には名義書替までする譲渡担保方式をとる例は極めて少ないものといえます。そのほとんどは略式質か名義書替をしない譲渡担保方式であって、時に登録質がある位のものといえます。

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担保株式について、その発行会社が新株を株主割当の方式によって発行すると、旧株式については、その時価はそれだけ減価することになります。例えば時価100円の株式の発行会社が50円の額面金額で倍額増資することとすると、旧株式の価格は通常の場合75円となってしまいます。それでは、担保株式について増資があると、その担保権者はそれだけ担保価値が急落し、損失を被ることになります。そのために一般には株式を担保に差し入れる場合には、その差入証などにおいて次のことを特約をしている例が多いくなっています。担保株式については、増資の場合の新株引受権を譲渡し、または私において後日払込を了えたときは直ちに払込領取書または増資株券を差入れます。そこで問題は、株式に対して質権を認定した場合その新株引受権に対してもその質権の効力が及ぶものかということで す。通説ではそれがたとえ登録質であっても、新株引受権には質権の効力は及ばないとしています。まして名義書替までしていない譲渡担保形式の場合には、その権利を会社に対して対抗できないのであるために、新株引受権に効力が及ばないのは当然のことです。その理由は、たとえその新株の引受権は旧株主に対して、旧株式の分身として認められる権利でも、それには別に払込という事実が付加されるものであるために、それは旧株式とは分離された独立の権利であるということにあり、商法もその権利にまで効力が及ぶとは規定されていません。しかし、その点、この新株引受権は旧株式の分身であるのであるから、旧株式に対する質権の効力は新株引受権にも及ぶものと解しても必ずしも妥当でないとはいえないとした考え方もあります。ただ、このように考えるとしても、担保権者として、その権利の及んだ新株引受権についていかに権利行使するか、実質的に極めて困難な問題を生じるのです。そこで、実務的には債権契約として前述のような特約を締結し、その権利保全を図っているのです。しかし、それも債権契約である以上、発行会社に対しその権利を行使することが出来ないため、新株の発行が決った時点において、旧株の担保差入人に新株引受権の追加担保差入を交渉し、その見込の簿い時は権利落ちになる前に旧株式を処分するか、または追加担保の差入を請求します。その見込の十分あるときは、現株主に新株の払込を完了し、新株の株券の発行されるのを待って追加担保とするか、新株引受権とともに払込金相当額を担保権者があらかじめ預り、担保権者においてその払込手続をし、新株券の送付を担保権者宛にしてもらう手続をとっています。ときには、払込金を担保権者が立て替えて、払込みをし、新株券の交付を受けたとき、立替分について新株券を処分するとか、旧株券をその前に売却し、その代金で払込みをすることもあります。しかし、それらの手続は担保権者の独断で実行する例はまずありません。
株式会社が、欠損の補填、端数資本金の整理、会社分離などの目的で、その資本金の減少、減資をすることがあります。この滅資の方法には、株金額の減少、無額面株式を発行している場合の資本額のみを減少させる方法もありますが、一般には株式数の滅少という方法によっています。しかも、株式数を滅少させる場合にも、売却の方法によることもありますが、担保株式について関係してくるのは、併合による方法の場合が普通です。併合の待別決議があると、三か月以内の一定の日までに旧株券の提出を公告し、または通知することになっています。この場合には、それが登録質でも略式質でもその新株券に対し質権の効力が及ぶことになり、その新株の引渡請求権の行使が認められています。また、その手続きにおいても新株券の交付は旧株券と引換えになされることになるので、担保権の保全は可能です。このことは、譲渡担保の場合においても、旧株券を担保権者が占有している以上、同様の効果が生じるものです。

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