預金証書の一時預り

預金証書の一時預りとは、預金債権を担保として貸出をする際に、預金者に預金証書の裏面元利金受領印欄に届出印を押捺させたうえ、銀行がこの証書を保管し、担保設定者に一時預り証を交付し、必要に応じて貸付債権の弁済に充当することを確保する制度です。
預金債権は債権者が特定しているから指名債権であり、これを担保取得するには指名債権質によるのが最も一般的な方法です。指名債権を質にとるには、質権者、設定者間で質権設定の合意をし、債権証書があればその交付を受け、質権設定の通知を質入指名債権の債務者(第三債務者)に対して行なうか、またはその承諾を得て第三債務者に対する対抗要件を備え、確定日付ある通知により、または承諸書に確定日付を付してその他の第三者に対する対抗要件を備えなければなりません。そこで、銀行が預金債権を質にとるには、預金担保差入証、預金証書または通帳の交付を受け、自行預金であれば差入証に確定日付をとり、他行預金であれば他行の承諾書に確定日付をとることとしています。
これに対して、預金証書の一時預りの方法は、上述のとおり預金者の領取印のある預金証書を銀行が保管して実際上預金の払戻ができないようにし、必要とあれば貸付債権の弁済に充当できるようにしておく、いわゆる事実上の担保取得方法です。
この預金証書の一時預りの取扱について、大阪高裁昭和40年8月16日第一民事部判決では、手形割引取引の担保のため一時預りの方法で銀行に差入れられた無記名定期預金の帰属をめぐる紛争事件で、一時預りという控訴銀行の取扱は、預金債権を担保に融資等をする際、担保提供者である取引先の税務署等に対する配慮等から、預金債権に質権を設定する際の正式手続である担保差入証、担保品預り証、預金者確認書等の作成を省略し、便宜の取扱として預金者にあらかじめ預金証書の裏面元利金受領印欄に届出印鑑を押捺させたうえ、証書を銀行が保管し、担保設定者に証書の一時預りを証する書面として、一時預り証を交付し、必要に応じ担保設定者等に対する債権に充当することを確保する制度であることを明らかにしています。
このように証書の一時預りは、担保制度とはいっても、せいぜいいわゆる払戻充当の効力しか認められず、預金者からの返還請求を阻止して事実上の優先弁済を受けることができるにとどまるものと解さざるを得ません。したがって、その預金が他から差押えられたりしたときは、もはや優先弁済は受けられなくなるものと解されます。
現在では、証書の一時預りの取扱は、行政取締りの見地から拘束性預金とみられるおそれがあるので、債権保全の緊急な必要性がない限り、一般にはなされていないようです。

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