預金債権の担保化

預金は業務上の種目によって当座預金、普通預金、通知預金、定期預金、納税準備預金、別設預金などに分類され、その目的によって払戻しの時期、方法等について差異がありますが、当座預金を除くその他の預金はいずれも金銭の消費寄託と解されています。当座預金の法律的性質については、小切手の支払委託に関する契約と当座預金に関する契約との結合されたものと解する説、小切手の支払という事務の処理を目的とする単なる委任契約であり、当座入金は委任事務の処理に要する費用の前払であって消費寄託ではないと解する説、小切手の支払を委託する契約、当座預金に関する契約および交互計算契約が結合されたものと解する説などに分かれており定説はありませんが、いずれにしても当座勘定取引契約のなかには預金者振出の小切手の支払事務処理の委託契約が含まれていることについては異論はありません。したがって、委託関係が当座勘定取引契約の解約その他の事由によって終了すれば、委託者は当座預金の残高がある限り、受託者(銀行)に対してその返還を請求することができることになります。

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預金契約においては、債権者(預金者)が特定しているので、預金者が銀行に対して有する頂金の返還請求権は民法上の指名債権です。預金契約が成立し、あるいは預金の書換継続が行なわれるときは、銀行は預金者に対して預金証書や項金通帳を発行しますが、それは預金の存在を証明する単なる証拠証券であって有価証券ではありません。また、定期預金には記名式のものと無記名式のものとがありますが、無記名定期預金は預金証書または預金通帳に預金者の民名が記載されないだけであって、指名債権であることには変りありません。
預金は銀行に対する金銭債権であり、その性質上譲渡が可能であり、また法律によって譲渡が禁じられていないので通常の金銭債権と同じく、これを他に譲渡することができます。また、譲渡できる債権は質権の目的とすることができます。担保の目的となる預金は通常預金者が銀行に預けた特定の預金ですが、将来不定の預金を質権の目的とすることができるかどうかについては債権質の要物性をめぐって説が分かれています。昭和32年4月3日の金沢地裁判決では、銀行がその取引先と継続的手形取引契約を締結するにあたり、将来銀行が貸付額の5%を歩積預金として預金させた上、その債権担保のためにこの預金に質権を設定させることを約した事案につき、要物性の前提である目的物の特定性は優先弁済を受けるに必要な限度において認められれば足り、将来発生する個々の目的債権について要物性を必要としないとし、累増した預金全額について質権の効力を認めています。学説のなかにはこの判例の見解に賛成するものもありますが、第三債務者以外の第三者に対する公示方法や質権設定契約の要物性の点において難点があります。否定的に解する説が有力であり、現行担保物権制度のもとでは後説によるのが妥当な解釈でないかと思われます。
預金取引は不特定多数の顧客を対象とするので、顧客の権利行使や銀行の免責事由など取引上の重要事項については、銀行が預金約款を定め、これを預金証書や預金通帳の裏面に印刷し、預全者にその内容を知らしめることにしています。預金は本来譲渡または質入が許されないものではありませんが、預金約款においては例外なく、この預金は譲渡又は質入することができません、または、この預金は当行の承諾がなければ譲渡又は質入することができません、という条項を置いています。しかし前者の文言による場合でも銀行の承諸があれば、有効に譲渡または質入ができるので、実質的にはその効果に差異はありません。
譲渡禁止の特約がなされると、債権の譲渡について当事者が反対の意思表示をしたことになり、その債権は譲渡が許されないことになります。この特約に違反して譲渡がなされた場合、判例および通説では譲渡債権者の義務違反を生じるだけでなく、譲渡の効力そのものが物権的に生じないものと解しています。しかし、第三者の利益との調整を図る必要があるので、その無効は絶対的なものではなく、善意の第三者に対抗することができないものとされています。なお、第三者の悪意であることは、これを主張する者に立証責任があります。預金約款においては、譲渡禁止の特約のほか、質入禁止の特約をしていますが、債権を質入するには、その債権が譲渡性を有することを要するので、譲渡禁止の特約があれば当然に質入も禁止されることになります。いずれにしてもかかる特約に基づく質入禁止は善意の第三者に対抗することができません。実際には預金担保の目的となるのは通常自行預金であるので、質入禁止の特約が問題となることはまずありません。
譲渡、質入禁止の特約のある預金を他に譲渡または質入した場合、第三者の善意、悪意が問題となりますが、その認定について一般的な基準はなく、判例の考え方も分かれてます。下級審判決では、譲受人が以前に銀行取引を経験した者である場合、譲渡禁止の特約の記載された証書が譲受人に交付されていた場合、譲受人が譲渡禁止の特約の記載された請負契約書を一時保管していた場合などに譲受人の悪意を認定しており、少なくとも銀行取引をしたことのある者については預金約款の存在を知らなかったという主張は認められないと思われます。なお、善意の譲受人が保護を受けるためには無過失を要するかどうかについては、民法四六六条二項但書の規定からは明らかではありませんが、学説のなかには過失のある者は善意の第三者として保護を受けるに値いしないとする説があり、これに同調する下級審判決もいくつかありますが、昭和48年7年19日の最高裁判決では、前記の下級審判決の考え方に沿いながらも、譲渡禁止の特約の存在を知らないことについて譲受人に重大な過失のあるときには、その特約を譲受入に対抗しうるものとしています。
担保の目的となる預金には自行預金と他行預金とがありますが、いずれも預金約款によって譲渡、質入が禁止されているので、その制限を解除しない限り、預金を担保の目的とすることはできません。
自行の預金担保による貸付は通常借主の依頼に対して貸主がこれを承諾するという手続を踏んで行なわれますが、貸主となる者が預金者の借入申込を承諸したときは、その承諾は借入の申込の承諾の前提として預金の譲渡、質入禁止の特約を解除することを黙示的に合意したものと解することができます。
他行預金を担保として貸付を行なう場合には、銀行は譲渡、質入を禁止した預金約款の不知を主張することができないので、必ず当該預金の債務者である他行の承諾を受けてお くことが必要です。

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