慣習上での物権

物権法定主義の建前の下で慣習法上の物権を認めることができるかどうかでは民法175条、法例2条、民法施行法35条の解釈をめぐって問題となります。かつては否定的に解する説も多くありましたが、近年ではこれを積極的に容認する学説が多くなっています。
慣習法上の物権を否定する説は、近代法初期の意図をそのまま忠実に実現しようとする立場で、民法175条の法律は国家制定の成文法に限り、慣習法はこれに含まれず、法例2条にいう慣習法はあくまで補充的効力しか有しないと解され、民法施行法35条を文理解釈することにより、慣習法による物権の創設を許さないとされます。肯定説では社会経済の現実が慣習法による物権の創設を必要としていることから、あるいは法例2条や民法175条の規定は慣習法によって改廃されているとみて慣習法は法律と同一の効力を有するとされ、あるいは民法施行法35条では、旧来の対物秩序の整理を意味し将未の慣習法を否定するものではなく、少なくとも民法175条の「法律」の中には法例2条に「法令ニ規定ナキ事項ニ関スル」慣習法を含むと解され慣習法による物権の成立を認めてもよいと解します。

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民法典が慣習上の物権を全て否認するものでないことは入会権の規定からも明らかで、民法175条、民法施行法35条の趣旨に反せず、慣習上の物権が自由なる所有の妨害にならないかぎり、法例2条の「法令ニ現定ナキ事項ニ関スル」慣習は「法律ト同一ノ効力ヲ有スル」とするところを根拠に、ある種の公示方法を有する限りにおいて、慣習法上の物権として認めてよいと考えられます。判例は175条との関係が間題となる場合については、いわゆる法律の中には慣習法は含まないと解され、慣行上地方的に認められていた上地権を否認し、その他の慣行上の権利を否認しています。一方で耕作のための流水利用権や温泉専用権につき、一種の物権的権利とか、慣行上の一種の権利などという名目のもとに、175条にこだわらず、法例2条を根拠に物権的効力を認めています。根抵当権や譲渡担保権にしても、取引慣習上のものとして広くその物権的効力を承認しており、根低当権および仮登記担保権についてはすでに立法化され、譲渡担保権についても立法化が進められています。これらは取引慣行上の生成になる権利で、慣習法上の物権というより判例法上の物権というべきです。
慣習法上認められる物権には次のものがあげられます。

流水利用権
流水利用の法律関係は、河川法、民法の現定があるにすぎず、河川法による流水占有許可によるものの他は、ほとんど慣習法にまかされているといえます。判例では慣習法を援用して間題解決を図っています。つまり水流沿岸地の所有者、地上権者、賃借人などが水流地についてなんら制定法上の権利がなく、慣行上、その流れを一定の目的のために使用する場合に判例では、この権利に妨害排除請求権を認め、あるいは地役権と同様に流水使用権がその田地とともに移転することを認め、流水使用権は他人の侵すことを許さざる権利といって、その物権的性質を間接ながら認めています。また、一定の湧出水または渓水を独占的に使用することが長年の慣行によって成立する場合に、流水を独占的に利用する権利を認めています。いわゆる専用権で、他の者はその流水を使用する権利を持たず、上流の沿岸者といえども専用権者を害することができない物権的権利であるとしています。
温泉権
温泉は地下水の一種であり、土地の一部ないしその構成部分とみられますが、泉源地とは別の経済的価値を有するのが通常であるために、その温泉利用の権利については泉源地の所有権とは別の独立の権利とする慣行がみられます。この権利の性質について、判例では慣習法上の物権であるとしているものが多く、鉱泉採掬権が「一種ノ物権」であるとされ、温泉湧出地から引湯使用する湯日権が「一種ノ物権的権利ニ属シ、通常原泉地ノ所有権ト独立シテ処分セラル」ものであるとされています。
墓地使用権
他人の土地を墓地として使用する権利が、いかなる性質のものであるかについては、墓地そのものに様々な形態のものがあり、その断定は困難ですが、遺骨の埋葬の用に供せられるもので、その譲渡性、相続性など様々な問題があり、その財産性については疑わしいものがあります。課税対象からも除外されており、あまり実用性はありませんが、その権利は慣行上の物権的権利とみられるものが多くなります。

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