物権法定の必要性

物権法定の第一の理由は、物権公示の原則を貫き、物権取引の安全を図ろうとする点にあります。物権は排他的支配を本質的内容とする権利であるために債権とは異なって第三者の利害と直接関係するので、物権の創設を当事者の自由にまかせると様々な物権ができてしまい、一般社会に影響することが大きく、取引の安全を害することになります。このため物権には、登記、引渡しを定めてその危険を排除する手段が考慮されているわけですが、この公示方法も技術的困難がともないます。そこで、法律は物権を類型化し、当事者が勝手に物権の種類や内容を決めることを禁じて公示の原則の実効を援け、取引の安全を図ろうとしています。
第二の理由として、旧来の複雑多様な慣行上の排他的支配権を整理して、所有権中心の近代的物権制度を樹立しようとした点にあります。近代法を承継した民法では財産権の保護を所有権を中心に国家的に集中単純化しようとする理想がありました。それ故に旧来の土地について存在した復雑な封建的権利を消除し、所有権のほかに一定の法定物権を限定的に容認する必要があったのです。
物権法定主義は、近代法の下において絶対必要な原則ではありますが、経済取引が非常に発達してきた現在においては、その厳格性が反省されています。特別法による物理的権利の容認や特別内容の付与が多くみられることはともかくとして、民法175条の解釈問題として、法定物権のほかに慣習法上の物権を認めなければならないような状況が顕著です。ここで物権法定主義の新しい転回がみられます。経済取引の必要上、所有権移転形式の担保制度が取引慣行化し、判例は譲渡担保権という慣習上の物権を認めるに至っています。日本においては、旧来、土地の耕作その他の利用関係が極めて複雑であり、その利用関係を民法が一気に所有権のほかに数種の制限物権に限定してしまった点に無理があり、田舎などの農山村の耕作、水利などにつき法律上困難な問題を起こす原因となり、やがて流水利用権や温泉利用権など慣習上の物権を認めるようになってきています。

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