物権と債権の差異

物権と債権は、その法的性質の相違から、区別が認められていますが、近年では立法や解釈によって、ある程度その差異が縮まってきています。
かつて物権と債権の区別を、絶対性、相対性の問題として扱ってきました。つまり、全ての権利は絶対性または対世的効力の存在によって、絶対権と相対権とに分けられるとし、物権が前者の典型的なものであり、債権は後者の典型的なものだとされました。そして絶対権である物権は、物の直接支配を内容とするために、特定の相手方がないと同時に、一般人はその権利者の直接的支配を侵害しない義務を負うために、その権利をもって一般人に対抗しうるのであると説明し、一方相対権である債権では特定人に対して特定の給付を請求することを内容とするために、債務者以外の第三者は、権利者に対して何らの義務を負担することなく、一般人による債権の侵害はありえないと説明しています。したがって物権を侵害すれば何人にかかわらず権利者はいわゆる物権的請求権を行使することができますが、債権の侵害は償務者の債務不履行の場合にのみ有り得るのであって、債務者以外の第三者に対して何らかの請求を債権侵害を理由としてなすことは考えられないという結論になります。このように、一応の物権的請求権の有無をもって両者の区別を考えることは妥当だとしても、債権が第三者によって侵害されてよいという理由にはなりません。判例では債権の不可侵性を説き、学説もこれに賛同していますが、至当な解釈といえます。このような理解が正しいとすれば、物権の絶対性、債権の相対性の区別は、今日あまり強調すべきではなく、むしろ否定的に解すべきだということになります。
物権と債権の区別を排他性の有無をもって決めることは原則的には正しく、排他性のない物権はほとんど債権に等しく、排他性を与えられた債権は物権に等しいということになります。しかし若干の問題もあり、民法が物権とするもののうち排他性のないものがあり、反対に民法が債権とするもののうちにも排他性をもつものがあることです。結局、物権の典型としての所有権と、債権の典型としての金銭債権については、それぞれ物権と債権の本質を例外なく備えていますが、その他のものは多かれ少なかれ債権的あるいは物権的な例外的性格を持つことがあり、これはある程度まで立法政策的に定まることですが、ある権利について法律が例外的扱いをすることは差支えないことであり、このような立法政策を批判し解択して、学理的にこれを是正し発展させる努力もなされています。不動産賃借権を強化することが論じられ、さらに、立法上排他性が認められた不動産賃借権について一層物権的効力を強化しようとする解釈論がなされていることはその努力の表れだといえます。一方でまた、実際取引においても、不動産所有権が対価請求権と結合し、企業施設の所有権が労働契約上の債権債務と結合してそれぞれ地主、家主、企業主という地位を構成する場合のように、物権と債権が結合して一個の経済的地位を構成する場合が少なくありません。

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