融資実務のあり方

 金利の自由化、国際化、リスタの多様化などにより、長年にわたって培われた勘と経験に基づく職人芸が通じなくなってきた。外部環境が大きく変化しており、より科学的にかつ体系的な審査が求められるようになってきた。従来の審査は、信用リスク主体で行われており、これが結果的に保全重視(担保、保証人)の融資となった。
 〈新しい時代の融資審査は〉
 1 環境・金融リスクなど質重視の審査をする
 企業の将来性、業種特性、経営者の手腕など環境や時代の変化を深く洞察して企業の実態を把握した担保依存型でない審査が求められている。
 金融リスク管理においても、従来の信用リスクのほか、金利リスク・価格(担保)変動リスク・為替変動リスク・流動性リスタ・システムリスク・事務リスク・経営リスクなどリスクが多様化している。

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 2 融資審査・管理の基本
 (1)融資先の実資力を把握する
 業界見通し、将来性、企業特性、経営者の人格、立地条件、財務内容など熱型資産を評価する。
 (2)融資先のキャッシュ・フローの分析
 資金繰りの把握、資金のトレース、資金計画、売上計画、売上、仕入状況などキャッシュ・フローを分析する。
 (3)資金使途の確認と返済財源の把握
 バブル期には健全性に問題のある土地、有価証券投資など不要不急的資金の融資が不良債権となった。財テク、地上げ資金など返済時期が明確でないものが不良債権化した。資金使途の公共性・健全性のチェック、返済財源を把握して回収の安全性を判断することが審査・管理のポイントとなる。
 (4)審査とは金融リスクを発見することである
 金融機関における収益源は、貸出利息の収入が大半を占めている。貸出の戦略はリスクテイクをしていかに収益をあげるかであり、融資審査は、いかにリスクを回避して損失を少なくするかである。これがため審査能力は、金融機関の収益源の資本ともいえる。手抜き審査、ずさんな審査は許されない。
 新しい時代の融資には、企業の事業そのものや、事業経営者を信頼した無形資産(成長性、収益力、技術力、業種特性、経営者の人格、資金の流れ)を正確に見抜いた与信判断が必要となる。そのための新しい審査、管理手法が求められ、その融資実務に強い人材の育成が当面の課題となる。
 「銀行業務」基本精神
 1. 銀行も、顧客も、共に実力相応を守るべし。破滅の根源は結局、分相応を超ゆるにあり。これ古今一貫の鉄則なり。(第1章14)
 2. 元来、銀行は顧客に対して、親切なる相談所とも云うべく、互に杖となり、柱となるべき間柄なり。故に相倚り相援くる本旨に基き、相互に表裏なく、営業の実況を諒解せしむるを要する。(第7章3)
 3. 不良資金および固定貸金を生じたる時は、なるべく早く積極的整理を断行せば、たとえ一時の不評と苦痛はありとするも、将来の基礎を固むるは勿論、一朝恐慌の目よく之に対抗し得べし。(第9章5)
 4. 総て投資(融資)は、担保と云わんよりも、寧ろ使途を明らかにし、且つ弾力あるものに向ってなすことを必要条件とす。従って返済の財源およびその方法の明確ならざるものには貸金をなすべからず。(第9章22)
 5. たとえ担保物ある場合と雖払その人の性格および力量に適応するや否やを、考察すること肝要なり、長期に亘る場合、殊に然りとす。(第9章31)
 6. 人格は最良の担保なりと云えることあり。(第9章32)

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