保証の事務処理

 損害賠償の担保のためにする保証には、民事執行法15条関係のものと、民事訴訟法112条関係りものとがあり、しかもそのそれぞれについて各種の場合があって、現実に銀行にどのように申し込まれ、利用されるかは今後の問題である。 しか し、これを銀行の立場からみると、ごく短期の保証か、中期の保証か、何年もにわたる可能性のある保証かによって、対応も異なってくるものといえよう。
 ごく短期の保証としては、売却のための保全処分の担保、買受人のための保全処分の担保、仮執行宣言の担保などがあるが、これらも、ときには1年以上の長期になることもあろう。なお、執行停止関係の担保の割合短期とみてよいであろう。
 また、一般に数年の長期にわたる可能性のある保証としては、前記の執行停止と仮執行の宣言の担保以外の民事訴訟法112条関係の担保が該当することになろう。
 すなわち、保全処分などの担保は、競売手続中のものであり、また、手形判決などの仮執行の担保は、債務名義を取得するまでのものであるため、比較的短期に担保取消決定が得られる可能性がある。これに対して、民事訴訟法112条関係の担保は、本訴が確定するまでの担保であることが多いので、どうしても長期になる可能性が大きくなるのである。
 その点、民事執行法上の担保は、当該競売事件が終結すれば担保の必要がなくなる性質のものであるため、それほど長期になることはないと考えられ、少なくとも1年から2年ぐらいで解決するものといえよう。
 なお、現実の問題としては、この支払保証の制度が特に利用されることの多いと考えられるのは、仮差押え、仮処分の申立ての担保の場合であろう。

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 取引先などから「損害賠償の担保のための保証」の申込みがあった場合は、申込人から裁判所の支払保証の許可証を添付して下記の事項を記載した申込書〈書式66〉の提出を受ける。
 支払保証の目的・・・支払保証を必要とする理由のことで、根拠条文を示して前記の保証の種類を記載してもらうべきである。
 保証金額・・・裁判所の立担保命令の原本または謄本により記載すべきであるが、その命令の出る前に、あらかじめの保証の見込みを打診する場合であれば、その保証見込額を記載してもらう。
 事件の内容・・・立担保命令にかかる訴訟事件またはその申請事件の管轄裁判所名、事件番号、事件名、ならびに担保する相手方である担保権利者の住所・氏名を記載してもらう。
 解決の見込み・・・この保証は、事件の内容によりその保証期間が何年になるか不確定な面がある。そこで、その長短により銀行の保全や保証料の問題があるから、担保取消決定のとれる時期と、その見込みの確度について問いておくことが大切になる。
 事件の概要・・・当該保証を必要とすることになった事件のあらすじを念のため聞いておく。
 以上の申込みにより、通常の支払承諾の申込みがあった場合と同じように、申込人の信用、担保・保全の状況、取引メリット等を調査し、その諾否を決定することになる。
 その際の特に本件の支払保証特有の注意点は、事件の内容から、それが特に長期にわたり、いつ解決するか判断のつきにくいもの、あるいはたとえ単なる保証であっても銀行としてその事件に関係することに疑問のあるような場合には、原則としてそのとりあげは消極的にすべきであろう。
 この支払保証のための支払承諾も、申込人の将来発生するかもしれない債務(損害賠償債務)の保証であるから、通常の支払承諾取引の場合と同様に、担保・保証により保全をはかる必要がある。
 特に、従来融資取引の実績のない先からの申込みのあった場合はもちろん、従来の取引きでも、原則として預金担保を微求して行なうことになろう。
 なお、特に長期になると見込まれるものについては、後記保全・管理上の問題点もあるので、その点留意して取り扱う必要がある。
 損害賠償の保証の申込みを承諾した場合は、申込人から次の書類の提出を受ける。
 支払承諾約定書、銀行取引約定書・・・いわゆる基本約定書といわれるもので、一般の融資取引などのためすでに微求している取引先からは、あらためて微求する必要はない。また、新規に申込みのあったときだけ必要で、2回目以後の申込みに際しては重ねて徴求する必要はない。
 支払保証委託契約書(損害賠償関係)・・・支払保証委託契約と同時に銀行の保証と申込人との間の法律関係や保証後の取扱いを定めた特約を約定したものである。
 支払保証委託契約締結証明書(損害賠償関係)・・・前記の契約書を2通作成して、その1通は銀行で証明年月日、支店長印を押印して申込人に交付し、他の1通は申込人からの証明書の受領証に代えることができる。
 担保差入証、保証書等・・・支払保証の保全のために微求することになった預金担保差入証などの一般の書類、証書である。
 印鑑届、印鑑証明書、手形等・・・一般の融資取引に必要とされている書類であり、支払承諾取引について申込人から白地手形の提出を求めている銀行では、手形も必要である。
 この支払保証の保証期間は、証明書発行日から、担保取消決定等により銀行が保証先等から「保証書」を回収した日または担保取消決定により保証責任が消滅していることを確認した日、あるいは銀行で保証債務を履行した日までということになる。そこで、保証時にはこの保証期間は当事者にも未確定であり、しかも何年も長期になる可能性がある。
 したがって、特に保証期間が明確であり、しかも短期の場合以外は、毎月あるいは年数回に分割して、一定の日に保証料を前払いしてもらうことになろう、その場合は、一般に担保預金などからの自動支払という方法がとられることが多い。
 銀行から申込人に交付される「支払保証委託契約締結証明書」は申込人から裁判所に提出されるものや、損害賠償の債権者である担保権利者には交付されるものではない。また、担保権利者には、裁判所からその旨通知されることはあっても、「支払保証委託契約締結証明書」は、裁判所からも担保権利者には交付されない。
 そこで、担保権利者は、支払保証をした銀行に対して直接その「保証書」の交付を請求する権利が認められている。ただ、この支払保証委託契約については、担保権判者の承諾なしに解除や変更をすることは原則として認められないため、担保権判者から必ずこの「保証書」の発行を求めてくるとばかぎらない。
 銀行が、担保権利者から「保証書」の発行を求められた場合は、銀行としては、まずその者が担保権利者本人であることを確認することが必要となる。この本人の確認は、「支払保証委託契約締結証明書」と記載された担保権利者の申出であるかどうかを確認したうえ、民事執行法関係の保証書の場合には、その者が当該執行手続の当事者(差押債務者等)であることを証する裁判上の通知書(差押通知書など)、あるいは民事訴訟法関係の保証書の場合には、その者が当該訴訟手続の当事者(原告または被告など)であり、または仮差押え、仮処分の通知書の当事者であることを証する記録、通知書の提出を求める。
 そのうえで、本人であることを証する資料として、担保権利者から、印鑑証明、資格証明書を添付した実印による「保証書交付請求書」の提出を受け、その者に「保証書」を交付することになる。

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