損害賠償の保証

 損害賠償のための保証には、民事執行法によるものと、民事訴訟法によるものとがあり、その種類はきわめて多岐にわたる。そのため、現実の問題として、銀行にとっては、どのような目的で取引先からこの申込みがあるかを予測することは非常に困難である。
 しかも、そのうちには、仮差押え、仮処分の申立てをするときの保証のように、一刻を争うものもあり、また、保証をしてからその保証関係が終了するまで1、2年ですむ執行停止関係のものや、10年も20年も継続する可能性のあるものもあるなど、その形態もさまざまであり、銀行実務においてその取扱いに面倒な問題の生ずる可能性も多いと思われる。

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 保証手続として、債権者Aは、その債務者Bの財産に対する仮差押えの申請等を、管轄裁判所にする。
 申請を受けた裁判所は、仮差押え等の要件が備わっていれば、請求債権額の3分の1から4分の1ぐらいの金額の保証を立てれば仮差押命令を出す旨条件を定める。
 債権者Aは、この保証の額相当額の現金(または有価証券)を供託所に供託し、その供託書を裁判所に提出することによって仮差押命令を受けることもできる。ただ、この仮差押えは、仮差押命令があってから債務名義をとるまでの間に相当長期を要することがよくある。とすると、この供託金は、低利な利息しかつかないところから、現金で供託することは不利となるので、銀行に「支払保証委託契約締結証明書」の発行の申込みをすることになることも十分考えられる。
 申込人が供託に代えて銀行等の保証を利用しようとするときは、あらかじめ裁判所の許可を得る必要がある。
 ただ、仮差押手続は急を要する場合が多いが、銀行からこの証明書を受け取るためには相当の手数と時間が必要になると考えられる。そこで、そのときは一時現金により供託し、仮差押命令を得た後に、裁判所に対し、現金の供託による担保を銀行の保証に変換したい旨を申し立て、銀行へはそれから「支払保証委託契約」の申込みをしてくることも考えられよう。なお、この担保の変換は、民事執行法による手続の場合も可能である。
 銀行は、裁判所の許可書を添付して申込みを受けると、申込人A(保証委託者)の信用調査などの手続をとり、担保・保証等による保全をはかるとともに、「支払承諾約定書」等必要書類の提出を受けたうえ、保証委託者に対して「支払保証委託契約締結証明書」を発行する。
 保証委託者Aは、銀行から「支払保証委託契約締結証明書」を受領すると、これを仮差押え等の申請をした裁判所に提出する。いったん現金で供託していて、これを保証書に変える場合は、担保物変換の申請をした裁判所へ、この「証明書」を提出することになる。
 裁判所は、前記「証明書」を受領することにより仮差押命令等申請のあった命令等を発するとともに、仮差押債務者などその命令の相手方(担保権判者)にその命令を送達する。この仮差押命令等には、保証を立てたこと、その方法と金額などが記載されているので、担保権利者Bは、銀行の支払保証委託契約の成立していることを知ることになる。
 担保権利者は、この通知によりいつでも保証銀行に対して、支払保証委託契約が締結されていることの銀行の証明書の発行を請求することができる。
 もっとも、特にこの保証書を銀行から受領していなくとも、この支払保証委託契約は担保権利者の承諾なしに自由に契約の変更・解除などをすることが禁じられているので、保証が無効になったり、現実に損害賠償の請求権が発生したとき、銀行にその保証債務の履行請求ができなくなる危険はない。
 そこで、銀行で「支払保証委託契約締結証明書」を発行してもただちに担保権利者Bから、この「保証書」の発行を請求してくるとはかぎらない。担保権判者Bが現実に損害賠償の請求をしようとするとき、特に「保証書」交付の請求なく直接銀行にその請求をしてくることも十分考えられる。
 担保権利者Bから保証書の交付請求があった場合は、銀行はその請求してきた者が正当な担保権判者本人からの請求であるか確認のうえ、「保証書交付請求書」と引換えに、「保証書」を交付する。
 その後、保証委託者Aの申請した仮差押命令などにつき保全債権の不存在、保全の必要性の欠如などがあり、そのために担保権判者Bに損害が生じたとなると、BはAに対してその賠償の請求権をもつことになる。その場合、保証委託者Aが担保権利者Bの請求によりただちにその賠償債務の履行をすれば問題ないが、Aがその請求に対して履行を拒めば、Bは本訴によりAに対し損害賠償の請求をすることになる。
 銀行の保証委託契約は、「担保に係る損害賠償請求権についての債務名義又はその損害賠償請求権卯存在を確認する確定判決若しくはこれと同一の効力を有するものに表示された額の金銭を担保権利者に支払うものであること」となっているため、単に担保権利者から損害の発生した事実を証する書面をもって銀行にその保証債務ら請求をしてきても、保証債務の履行責任は生じない。保証責務の履行責任の生ずるのは、当該事件に関して生じた損害賠償債務について、保証委託者Aに対する債務多義により銀行に請求があった場合に限られるものである。
 銀行は、担保権判者Bから、保証委託者Aを債務者とする当該支払保証委託契約にかかる事件についての損害賠償請求権の債務名義の確定している証明を付して保証債務履行の請求があったとき、その本人の確認をしたうえで、支払に応ずることになる。
 その場合、すでにBに対し「保証書」が発行されているどきは、その保証書の提出をも受けるべきであることは当然である。
 前記による請求により、銀行は損害賠償債務の保証債務の履行をすることになるが、その場合は、あらかじめ保証委託者Aの保証債務履行についての「承諾書」を微求するか、少なくとも保証債務の履行についての事前の「通知書」は発送し、その通知書の到達したことを確認したうえで、「受領書」と引換えに、その支払をする。
 保証債務の履行をした場合は、ただちに保証委託者Aに対し、「求償債務の確認並びに弁済契約書」を、微求するなどの方法により、求償債権の保全・回収に努めるべきであることは当然である。これらの確認書などの請求が困難な場合は、少なくとも「代位弁済通知」だけは内容証明郵便により保証委託者Aに発送しておくべきである。
 なお、仮差押事件等について債務名義の取得、仮差押えの解除、その他の原因により担保取消し(乙)決定があった場合は裁判所の「担保取消決定写」、銀行の保証に代えて現金の供託などにより担保物変換の手続を完了した場合はそれを証する書面を添えて、保証委託者Aより保証契約終了の申出を受けることとなる。そして、これにより銀行の支払承諾取引は終了するので銀行内部の起票をするとともに、保証料の清算をする。
 そめ場合、担保権利者Bに対しすでに「保証書」が交付されているときは、その「保証書」も同時に回収すべきであるが、それが困難である場合は保証委託者Aから別途「念書」をとっておくべきである。

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