支払保証委託取引の意義と種類

 裁判所における民事関係の執行手続においては、当事者が担保または保証を立てなければならないさまざまなケースが生じる。これは、相手方が執行停止等によってこうむることがある損害の賠償を補填し、あるいは執行手続を保障しようとするためのものである。
 従来は、この担保の提供方法は、当事者間で別段の定めをした場合を除いて、金銭または裁判所が相当と認める有価証券の供託に限られており、また競買申出の保証は現金または有価証券に限られていた。
 しかしながら、この制度は、担保の目的である損害賠償請求等の存否が確定するまでの問、担保提供義務者に現金または有価証券を現実に提供させ、それを凍結するものであり、担保提供者の経済的負担が大きく、また経済効率上も問題があるところから、確実な支払能力を有する者(たとえば銀行等)が担保提供義務者に代わって保証すれば十分ではないかという意見があった。
 そこで、民事執行法では、上記の金銭または有価証券の提供以外の方法を最高裁判所規則で定めることができるとし、これを受けた民事執行規則は、裁判所の許可を得て、担保提供義務者が銀行または保険会社との間で支払保証委託契約を締結して、その証明書を提出する方法で担保の提供をすることができることとした。なお、民事執行の場合のほか、民事訴訟法の定めによって担保を立てるときにも、この方法によることができる。
 この保証書の発行手続は、銀行実務ではいわゆる支払承諾取引ということになるが、この支払承諾は、保証委託者との間に保証委託契約が成立してもただちに保証債務が成立するものではなく、しかも保証期間の定めがなかったり、ごく短期の保証であったりするところから、通常の支払承諾取引とは異なる要素のある取引であるので、特に注意しなければならない。

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 裁判所に、当事者の一方からある処分や命令の申請があると、その処分や命令をすることにより損害を受ける危険のある相手方のために、裁判所はその申請人に対して将来の損害賠償債務の担保を裁判所に提出するよう命ずることができることになっている。
 たとえば、債権者が債務者の不動産に仮差押えを申請した場合に、裁判所は債権者の申し出た債権が本当に仮差押えするに適した債権であるか精密な審理をすることなくこの命令を出すため、ことによると仮差押えに適しない債権により仮差押命令が出ることもありうる。そのような場合には、債務者とされた者は当然、仮差押申請人に損害賠償請求権をもつことになろうが、そのときのために裁判所はあらかじめ申請人に損害賠償の担保を供託させてから、この仮差押命令をすることになる。
 そこで、このような損害賠償のために銀行がなす保証の債権者は、各種の申請がなされた申請の相手方であり(担保権利者)、債務者はその申請人(担保提供義務者)であり、被保証債務は将来発生するかもしれない損害賠償債務ということになる。
 この損害賠償のための保証の根拠法は、下記のように、民事執行法関係のものと、民事訴訟法関係のものに分けられる。
 なお、民事執行法15条関係のものの場合には、次の要件を満たすものでなければならない。
 銀行等は、担保提供義務者のために、裁判所が定めた金額を限度として、担保にかかる損害賠償請求権についての債務名義またはその損害賠償請求権の存在を確認する確定判決もしくはこれと同一の効力を有するものに表示された額の金銭を担保権利者に支払うものであること。
 担保取消しの決定が確定した時に契約の効力が消滅するものであること。
 契約の変更または解除をすることができないものであること。
 担保権利者の申出があったときは、銀行等は、支払保証委託契約が締結されたことを証する文書を担保権利者に交付するものであること。
 民事執行法15条関係として、執行停止またはその続行申請の担保。
 その例、執行抗告、執行異議、執行文付与の異議、同上仮差押え分、執行文付与の異議の訴え、請求異議の訴え、同上仮差押え分、第三者異議の訴え、同上仮差押え分、終局判決の執行停止、動産差押取消命令の執行停止。
 民事執行法の保全処分申請の担保、売却のための保全処分、買受人のための保全処分。差押禁止債権の範囲変更の申請の担保、これは仮差押えの場合にも準用されている。
 船舶執行手続の取消申請の保証。
 企業担保法において準用されている担保。
 民事訴訟法112条関係等では、民事訴訟法で立担保命令のあったときの担保、被告の応訴拒絶に対する担保。
 商法関係の訴えについての担保として、会社解散命令の申立て、合併無効の訴え、総会決議取消しの訴え、決議無効確認の訴え、不当決議取消しの訴え、株主の代表訴訟、新株発行無効の訴え、減資無効の訴え。
 仮執行の宣言の担保。
 執行関係の担保、仮差押えの申立て、仮処分の申立て、同上の異議、同上の取消しの申立て、執行停止命令の上告、再審の申立てなど。
 民事調停の執行停止、続行。
 更生計画遂行の担保。
 親権等喪失の職務執行停止。
 訴訟費用の担保。
 不動産や動産に対する強制執行手続や担保権実行手続においては、目的物件の買受希望者をできるだけ多く集めて、できるだけ高価に処分できるように手続が進められる。
 この場合、裁判所でそれをいくら高価に売却したとしても、買主が代金の支払をしないと困るので、裁判所では買受申出入にその代金の支払能力のあることを証明させて、競売に参加させることとしている。
 この証明の方法は、従来は買受申出金額の1割相当額の現金または有価証券を保証金として積ませていたのであるが、現法では、その保証金の額を最低売却価額の2割とするとともに、銀行等の保証の「証明書」でもよいことにした。
 この場合の保証の債権者は裁判所であるが、債務者は買受申出人に代わって保証金相当額の支払債務を直接負担する銀行等ということになる。

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