転付命令があったとき

 転付命令とは、差押債権者が債務者(預金者)に代わって、銀行からその預金の払戻しを受け、それによって差押債権者の請求債権の弁済を受けるという手続によることなく、裁判所の命令により差押債権(預金)を請求債権の代物弁済のように充当し、預金金額の範囲内(券面額)で請求債権が消滅し、差押債権の債権者が預金者から差押債権者に代わることになる命令のことで、預金の強制譲渡ともいえよう。
 そこで、転付命令の効力が生ずると、その後の差押えの競合や配当要求は認められなくなり、結果的に優先弁済を受けたと同じような効果が生ずることになる反面、転付命令後第三債務者に差押債権の弁済をなす資力がないときでも請求債権消滅の効果は失われるものでないということになる。
 その点、銀行預金の差押えは、第三債務者が銀行であるため弁済資力に問題なく、一般に転付命令に適した差押えということができる。
 ただ、この執行の効力は、転付命令が確定してはじめて生ずるものであり、効力が生ずれば、その効果は、転付命令が第三債務者(銀行)に送達されたときに追って生ずることになっている。
 転付命令の効力が確定するということは、転付命令について認められている執行抗告がないことが確定するか、執行抗告があってもその抗告が認められないことが確定するということである。
 そこでこの執行抗告は、転付命令が差押債務者等に送達されてから1週間以内に抗告状を執行裁判所に提出していなければならないことになっているため、債務者に送達後1週間経過して払裁判所に執行抗告がなかったことの証明書か、転付命令がすでに確定している旨の証明書さえあれば、それによって確定の事実を確認することができる。もっとも執行抗告があり、その後その抗告が却下される等により効力を失ったときも確定証明により確定を確認することができる。
 なお、銀行に転付命令が送達される前に、すでに他の債権者の申立てによる差命押令が送達されていたり、裁判所に配当要求がなされていると、転付命令の効力は生じないことになっているので、その確認も必要となる。

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 転付命令は、差押命令の後または差押命令の申請と同時に申し立てることが認められている。そこで、転付命令前に差押命令があったときは、差押命令送達時の確認事項についての確認がいったんできているのであろうから、そのことを確認すれば足りよう。
 しかし、転付命令が差押命令と同時に送達された場合は、まずその差押命令の効力の有無について、前記手続により確認しておくことが必要になる。
 そのうえで、次にその転付命令の効力が発生するための要件として、差押えの競合の有無の確認をする。
 差押えの競合の調査とは、転付命令が銀行に送達された時までに、同一の預金について他の債権者による差押命令がなかったことの確認と、その時までに同差押手続についての配当要求の申立てが裁判所に提出されていないかの確認ということになる。
 もっとも同一の預金について先行する差押えがあったとしても、それが転付命令と請求債権を同じくする仮差押命令や差押命令であれば、それは差押えの競合にならないから、転付命令の効力には影響はない。
 また、裁判所に配当要求の申立てがあったときは裁判所から第三債務者にもその旨送達されるが、配当要求の効力は、裁判所への申立ての時に生ずる。そのため転付命令が送達になった前に裁判所で受理された配当要求の通知が、転付命令送達後に第三債務者に送達されることもあるが、この場合にも転付命令は失効する。しかし、転付命令送達後の他の差押命令やその後の申立てにかかる配当要求は、転付命令確定後はその効力を生じない。
 なお、転付命令の効力は、その命令の確定によって生ずるものであるから、転付命令送達後、確定するまでの間に銀行がその預金を供託(権利供託)してしまえば、銀行に対する支払請求権は転付債権者には生じない。その場合は、供託金の返還請求権は、確定を待って転付債権者が取得することになる。
 転付命令による支払も、差押命令に基づく取立権による支払も銀行の取扱いとしてはほとんど同じである。ただ、取立権の発生は差押命令が債務者に送達してから1週間経過し、しかも支払請求をするまでに差押えの競合の生じていないことが要件となるのに対して、転付命令のほうは、転付命令が債務者に送達になり1週間の抗告期間内に執行抗告がなく、しかも転付命令が銀行に送達された時に差押えの競合が生じていないことが要件となるという点が違うだけである。したがって、転付命令により支払う場合の注意事項も、その点を除けば前述の差押命令に基づく取立権による支払と同様といえよう。
 その確認事項を列記すると、次のようになる。
 命令の確定の確認・・・転付命令の効力は、その命令が差押債務者(預金者)に送達されてから1週間の執行抗告期間内に抗告がないかに抗告があっても取下げ、去下等によりその効力が失われ、命令が確定してからでなければ発生しないのであるから、転付債権者から支払請求のあった場合は、転付債権者に裁判所の命令の「確定証明書」の提出を求め、それを確認してからでないと支払をすることができないことになる。
 差押えの競合等のないことの確認・・・差押命令に基づく取立権は、銀行で支払をするまでの間に差押えの競合(配当要求を含む)があると効力を失うが、転付命令については、その命令が銀行に送達になるまでに差押えの競合(配当要求を含む)さえなければ、その後支払をするまでに重ねて差押えがあっても、執行命令の効力は失われないのであるから、競合の有無は、その命令の送達時を基準にして確認しなければならない。
 なお、そのほか転付命令送達前の申立てにかかる配当要求や振付命令について執行停止処分などがあれば、その支払のできないのは当然であるが、その支払前にそれらの通知が銀行に送達されていなければ、そのつど裁判所に確認せず支払っても債権の準占有者に対する弁済により有効な支払いとなろう。また、転付命令の発効前においても差押命令の効力は発生しているのであるから、差押えの競合等がなければ、取立権の発生により取立ては可能であるが、1週間以上経過しても確定証明の提出のない場合は、執行抗告のでていることが考えられるので、むしろ取立権による支払は避けて、裁判所に抗告のあることを確認し、供託(権利供託)の方法をとるほうが無難である。
 その他・・・前記の確認事項のほかは、差押命令の取立権による支払の場合と同様、差押えの効力、支払金額、預全音の事情、差押債権者の確認等が必要である。
 これらの事項を確認し、支払可能というときは、次の書類の提出を転付債権者に求める。
 差押命令(写し)・・・差押債権者確認の一つの方法で、必須の要件でない。確定証明書、印鑑証明書、資格証明書(法人の場合)、委任状(代理人による場合)、受取証
 以上の書類を確認したうえで、差押債権者あて記名式の預手により、その支払をし、元帳、記録簿等への記入をして、手続を完了する。
 現在の判例は、差押えを受けた後でもその差押命令送達時に有していた差押債務者に対する反対債権とするのであれば、差押債権との相殺をもって差押債権者に対抗することができるとしている。このことは、転付命令があった場合でも同じであり、民事執行法が施行になったからといって変わるわけではない。
 ただ、現法が転付命令の効力の発生時期を、その命令の確定により、第三債務者への送達時に遡って生ずるとされたところから、命令送達後その命令確定時までの間にする相殺について、相殺通知の相手方と相殺済手形の返還先について新しい問題を生じた。
 すなわち、転付命令の効力が、命令の不確定を解除条件として送達時に生ずると解すれば、相殺通知の相手方は差押債権者となり、相殺済手形の返還先も原則として差押債権者となる。それに対して、効力はあくまでも確定的に生じ、その効果が送達時に遡ることになると解すれば、通知先も返還先も差押債務者となる。
 ただ、相殺通知については、取立命令の場合について、差押債務者でも差押債権者でもよいとしている判例の趣旨からして、その通知はいずれになしても有効なものと認められよう。

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