債権の被差押え

 債権執行において執行した債権から交付または配当を受けられる債権者としては、まず最初の差押えまたは仮差押債権者、対抗要件を備えた質権者、次に以下の各時期までに差押え・仮差押えの執行または配当要求をした債権者である。第三債務者が法156条1項または2項の規定による供託をした時、取立訴訟の訴状が第三債務者に送達された時、売却命令により執行官が売得金の交付を受けた時、動産引渡請求権の場合にあっては執行官がその動産の引渡しを受けた時。なお、このほかに国税徴収法による交付要求があったときはこれに対しても配当がなされる、とする。

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 債権執行においても他の執行手続と同じように債務名義を有しない債権者による配当要求は認めないこととし、配当要求ができるのは、執行力のある債務名義の正本を有する債権者、文書により証明した先取特権者とされる。ここで、質権者について配当要求を認めていないが、これは、質権者は民法367条の規定により質権者の地位において債権の取立ができ、この取立権はその債権が差し押えられても影響を受けないからである。また仮差押債権者にも同じく認めていないが、これは、仮差押えの執行が競合しているときは必ず第三債務者から被差押債権の供託があり、仮差押えの存在は裁判所で明らかにされることから、仮差押債権者は配当要求をするまでもなく配当等にあずかれることになるからである。
 配当要求の終期については、前述のとおりであるが、要するに第三位務者が差押債権者の取立てに応じたり、供託をしたりした場合はその時、差押債権者が取立訴訟を起こした場合にはその訴状が第三債務者に送達された時、等であり、転付命令は別として全体的にはいくぶん終期が早められているので、実務上留意を要する。
 債務名義を有する場合は、債権執行においては動産執行と異なり二重の差押え、すなわち時期を異にしすでに差押命令が出されている債権について債権執行の申立てがあったとき。さらに差押命令を発する建前とし二重差押えが制度的に肯定されているので、債指差押申立手続の原則にしたがって前述に述べた時期までに債権差押えの申立てをすることである。差押えが有効となるには第三債務者が債務の弁済責任を負っていることが前提であるから、被差押債権の取立てが終わっていたとき、または第三債務者が供託していたときなどは、すでに第三債務者の債務の弁済が有効にされていることになり、当然差押えの効力が生じないことになるので、実務上その時期を失しないことに留意しなければならない。
 この差押えが有効に成立することは、配当を受けることのできる債権者としての地位を取得することができるからである。
 なお、二重の差押えによって差押えが一部競合した場合は、各差押えまたは仮差押えの執行の効力はその債権の全部に及びその範囲が広がることになる。
 債権執行においては、執行力ある債務名義の正本を有する債権者は配当要求をすることのできるものと規定されている。配当要求の時期については、配当要求の終期までに実施すべきことに留意しなければならない。
 また、配当要求した債権者は旧法と異なり、単に分配にあずかる権利しか有しないため、差押債権者が取立てに努力しないときでも特段の措置がとれず、かつ差押債権者が債権執行の申立てを取り下げたり、また債権執行手続が取り消されたりすると被差押債権からの分配にあずかれないことに着意しておくべきである。この観点からすると、債務名義を有する揚合は上述の二重差押えによる方法を有利とする。
 なお、配当要求は書面申立主義がとられており、その申立方式については不動産執行の場合と同様民事執行規則26条によることとされている。債務名義には執行文の付与を受けておくことを忘れてはならない。
 債務名義を有しない場合の執行参加の方法としては、仮差押えの方法をとることである。債権執行においては仮差押債権者の配当要求を認めていないが、配当の終期までに仮差押えの執行を行なった債権者は配当等を受けるべき債権者としての地位を獲得することができる。
 したがって、あらためて配当要求の申立ては要しないが、仮差押え後の本案訴訟による勝訴の確定判決の必要なことは当然である。
 配当要求があったからといって、その効果としてその差押効が広がるものではない。したがって、債権の一部差押えのときは、差押債権者は債権回収をはかるためには、さらに他の部分の差押えあるいは他の債権または物についての執行の検討に着意すべきであろう。
 質権者のある場合、先取特権者には法154条でその配当要求を定めているが、権利質権者には何も定めていない。このことは、差押えのときにすでに権利質の目的となっている債権については、質権者は差押えの有無にかかわらず有効かつ対抗要件を備えている限り債権の取立てができるのであり、第三債務者も差押債権者に支払ったり供託したりしても質権者の請求を拒むことはできない法律関係にあるからである。
 なお、質権者ら優先権を有する者の配当要求により無剰余となっても債権執行の構造の特殊性から手続の取消しをしないこととされている。
 以上よりして、配当要求等の手続参加債権者として手続に参加できたからといって安易に者えられないことはもちろんながら、それらの情報を早くキャッチすることによって、自己の債権全般の保全確保に努めなければならない。

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