担保権の実行としての競売

 仮登記担保法12条では、仮登記担保権者から通知を受けた清算金の見積額につき不服のある後順位担保権者は、清算期間内であれば、被担保債権の弁済期の到来前でも土地等の競売の請求をすることができることを定めている。すなわち、仮登記担保権を実行しようとする担保仮登記後に登記のされた先取特権、質権または抵当権があるときは、当該仮登記担保権者は担保権を実行するにあたっては、債務者らのほか、後順位担保権者らにも清算金の見積額を通知することとし、債務者らに支払われるべき清算金請求権に対する後順位担保権者らの権利行使の機会が与えられることになっており、この通知を受けた後順位担保権者はその清算金の見積額について不満がないときは、債務者らの仮登記担保権者に対して有する清算金請求権を差し押えることによって、順位に応じた権利行使をすることができることとされている。
 そして、後順位担保権者が清算金の見積額について不満をもち仮登記担保権者と後順位担保権貴との間で争いが生じるときは、これら多数当事者の利害を妥当に調整する方法としては、結局競売手続以上に適切な方法が見出しがたいとして、後順位担保権者が通知を受けた清算金の見積額で満足できなければ、仮登記担保権者の所有権取得権能を停止し、後順位担保権者の競売手続を優先させ、この競売手続に仮登記担保権者を参加させることにより、配当手続を通じて各債権者の利害の調整を妥当ならしめるため後順位担保権者の債権が弁済期前でも競売の申立てができるように規定されたわけである。

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 被担保債権の弁済期前でも競売の請求をできる者は、清算期間内は仮登記担保権を実行せんとする担保仮登記の後に登記がされた先取特権、質権または抵当権を有する者のみである。
 それでは、債権者らの有する清算金請求権に対し物上代位しつつ、一方で競売の申立てができるかどうかであるが、まず清算期間内は弁済期の到来、未到来を問わず、清算金請求権を差し押えた抵当権者らは、競売の申立てができないものと解すべきで、このことは抵当権者らが清算金請求権を差し押えたことは通知にかかる清算金の見積順に不満のないことの表明であって、他方で競売の申立てをするということは自己矛盾であり、このような恣意を許すことは仮登記担保権者の利益を害するものと考えられるからである。これに対し、清算期間経過後は、これらの権利者は、すでに清算金請求権を差し押えている場合にも競売の申立てはできるものと考えるのが相当である。
 なお、登記ある抵当権の準共有者の一人のみが仮登記担保法12条の競売の申立てをし、他の準共有者は競売の申立てをせず清算金請求権に箭し物上代位をすることは、競売の申立てまたは物上代位による差押えは抵当権の処分行為とみるべきであるから、各準共有者は民法264条および252条の趣旨から単独ではできないものと解される。
 以上に反し、担保仮登記より先順位の登記を有する抵当権者らには、担保仮登記に基づく本登記がされてもその地位にはなんらの変動を生じないので、仮登記担保法による競売請求はできないのは当然のことである。
 実質的な要件としては、披担保債権の弁済期前の抵当権者らが競売の申立てをするには、まず仮登記担保権者による仮登記担保法2条1項に定める通知がされていることが必要であること、清算期間内に限ってできること、もっとも、仮登記担保法12条の趣旨は、清算期間内に限り弁済期前の競売請求権を認めたもので、後順位の抵当権者の被担保債権の弁済期が到来しているときは、清算金の弁済もしくは供託がされるまではなしうることはいうまでもない。通知にかかる清算金の見積額で自己の債権の満足が得られない場合に限ること、弁済期の到来以外の担保権実行の実体的要件すなわち、担保権の実在、転抵当の場合における原抵当権の被担保債権が転抵当権の被担保債権を超過していること、抵当権付債権の一部の代位弁済をした代位権によるときは残存債権の債権者と別個に独立してはできないこと、などの要件が揃っていること、清算期間内の申立には抵当物件の第三収得者たる脇除権者に対する抵当権実行の通知を要しないが、清算期間経過後の申立には要するものと解されること、などがあげられる。
 次に、形式的要件としては、通常の不動産の担保権実行としての民事執行一般および民事執行規則170条に定める申立書の記載事項等、一般のものと異なるところはない。競売申立ての場合には、申立人は、担保権や被担保債権の存在立証ならびに債務者の履行遅滞等を疎明することが必要であるが、仮登記担保権者の清算金の見積額を不満とするここにいう競売請求の申立てにあたっては、債務者の履行遅滞を疎明するのに代えて仮登記担保法2条1項に定める仮登記担保権者から後順位の抵当権者に対しなされる清算金の見積額等についての通知のあったこと、およびその通知書をもって疎明すればよいことになろう。
 弁済期の到来した後順位の担保権者の競売申立てをなんら制約するものではない。したがって抵当権者としては、仮登記担保法5条に定める仮登記担保権者から後順位抵当権者らに対する清算金の見積額等についての通知の有無、清算期間の前後にかかわらず民事執行法に定める要件を具備しておれば、競売の申立てをすることを妨げられない。もっとも、仮登記担保権者がすでに清算金を弁済し、または供託したときはこの限りでない。
 仮登記担保権の優先弁済請求権について、仮登記担保法は、担保仮登記がされている土地等に対する強制競売、担保権の実行としての競売または企業担保権の実行手続においては、その担保仮登記の権判者は、他の債権者に先立ってその債権の弁済を受けることができ、また、この場合における順位に関しては、その担保仮登記にかかる権利を抵当権とみなし、その担保仮登記のされた時にその抵当権の設定の登記がされたものとみなすことを規定している。また、民事執行法の制定に伴う仮登記担保法17条の改正により、担保仮登記がなされている土地等について強制競売や担保権の実行としての競売において配当要求の終期が定められたときは、仮登記権利者には裁判所書記官から債権届出の催告がなされ、これに応じて債権を届け出たときに限り売却代金から配当または弁済金の交付を受けることができることが明らかにされている。
 要するに、仮登記担保権者が仮登記担保法2条1項の規定による債務者および後順位抵当権者らへの通知を発し、いわゆる私的実行に着手した場合においても仮登記担保権者が清算金を弁済する以前においては競売手続が優先するから、通知を発した仮登記担保権者は、この手続に参加して優先弁済を受けることになる。
 ところで、その優先弁済を受ける範囲は、元本債権のほか、その満期となった最後2年分の利息その他の定期金および債務不履行によって生じた損害の賠償金である。ここにいう最後の2年分とは、競売手続における配当日を起算日とする意味である。担保仮登記は抵当権とみなされるわけであるが、元本金額や利息の登記がなされていなくてもこの範囲で優先弁済が受けられるところに仮登記担保権の特色がある。逆に、抵当権と異なり民法374条1項但書のような特別の登記を行なう方法はないので、2年分以上の利息・損害金につき優先弁済を受けることはまったくない。なお、仮登記担保権の実行費用も債務者が負担しない旨の特約がないかぎり、私的実行に要した費用をも含めて担保するものと解される。また、優先弁済を受ける順位は、前述の規定により、仮登記担保同士なら当該担保仮登記の順位によることとなり、抵当権と仮登記担保権については、所有権に関する事項として甲区にされている担保仮登記と乙区に登記されている抵当権の順位は、不動産登記法6条2項の定めにより、登記の受付番号によって決まるわけである。
 以上のようになるので、後順位の競売申立債権者としては、すべての売却代金から競売手続費用のほか権利の順位にしたがって配当を受けるべき仮登記担保権者の配当金を控除した残余金が後順位抵当権者に配当されることになる。

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