仮登記担保権の実行通知を受けた場合の対策

 仮登記担保権者が仮登記担保権を実行して、担保仮登記に基づく所有権移転の目的を達せんとするためには、仮登記担保権者は、まず仮登記担保契約による予約完結の意思表示あるいは停止条件成就の日その他の契約において所有権を移転するものとされている日以後、その契約の相手方である債務者または第三者に清算金の見積額を通知することを要し、次いで担保仮登記に基づく所有権移転の本登記がされることによってその権利が否定されることとなる担保仮登記後に登記された登記簿上の利害関係人、すなわち抵当権、質権、もしくは先取特権を有するものまたは後順位の担保仮登記の権利者ら物上代位権者に対しても債務者らに上記の通知をした旨およびその通知が債務者らに到達した日とその内容を通知しなければならないものと定められている。このことは、通知の相手方たる抵当権者ら物上代位権者に対して、仮登記担保権者の権利行使の内容の当否の判断と自己債権の確保対策の検討等の機会と余地を与えようとするものである。ここでにいう、実行通知を受けた場合とは、まさに仮登記担保権者から物上代位権者らに対する上記の通知がなされた場合のことである。
 仮登記担保権者から当該権利の実行に関する上記通知を受けた抵当権者としては、まず、通知の適否および内容の検討、目的物件の見積額の適否の検討と債務額の把握、清算金の見積額の適否の検討等、仮登記担保権者の担保権行使に対する諾否決定の資料を掌握し、これに対する自己の債権保全上の施策の決定と準備をすることである。

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 仮登記担保権者から通知を受けた抵当権者は、通知の発信人たる仮登記担保権者と称する者と債務者との間に金銭債務を担保するための契約が真実締結され、かつ債務が履行遅滞となっているものかどうかの確認、また予約完結の意思表示がなされているかどうか、あるいは停止条件が成就しているかどうかの確認をすることである。
 次に、主として通知の時期に関して、債務者らに対する清算金の見積額の通知の到達の有無および到達日を照合確認するとともに清算期間の終期を掌握する。さらに抵当権者らに対する通知は債務者に対する通知到達後、遅滞なく発信されているか否かの確認であるには、同法5条の定めるところで、合理的な期間内以上の事項に違反した通知については、同法2条に定める通知をしたことにはならず、清算期間経過後債務者に清算金を支払ってもその支払は抵当権者ら物上代位権者には対抗できないものと解される。
 通知事項としては、単に清算金の存否および額に限らず、清算期間が経過する時(終期)の土地または建物の見積額ならびにその時点における債務者らの負担すべき費用で債権者が代わって負担したものの額が含まれる。これらが通知に明らかにされていなければならない。このことは同法2条2項に明定するところで、抵当権者ら物上代位権者に知らせることによってその当否の判断と不服申立の機会を与える必要があるからにほかならないからである。
 清算金とは、清算期日が経過した時の土地または建物の価額が、その時の債権額を超えるときにおけるその価額に相当する金銭をいうのであるから、債権者が通知を発する時点においてはいまだ清算金の額は確定することができず、それはあくまで清算金の見積額にすぎないわけである。
 ところで、この清算金の見積額算定の基礎となるのは目的物件の評価額と債権額である。
 まず、目的物件の評価額であるが、これは清算期間が経過した時における土地または建物の価額で、その時における客観的な取引価額をいうのであって、認定についての争いが生ずるときは当事者の話合いにより、また不動産鑑定士ら専門家の鑑定した価額により決定するのが妥当であろう。
 次に、清算金算定の基礎となるのは債権額であるが、これは清算期間満了時に在存する仮登記担保契約の締結時に披担保債権とする旨の約定がなされたものの元利合計額および債務者や物上保証人らが負担すべき目的物件の鑑定費用、登記申請書作成費用、登録免許税等で債権者が代わって負担したものである。
 なお、目的不動産が2個以上あるときは、債権者が自由裁量によって割り付けた債権額となる。
 上述した目的物件の評価額および債権額等の基礎について、自らの物件価額の調査評定なちびに債務者の調査、あるいは仮登記担保権者直接の照会等による債権額の存否などの調査確認をし、仮登記担保権者からの通知内容との照査により、後述する対策決定の資料とすべきである。
 なお、これら清算金の見積額の通知内容について、債務者あてのものおよび他の物上代位権者あての内容とに食い違いまたは誤りの有無をも確認する必要があろう。このことは。物上代位権者の判断および対策の選択を誤らしめ、損害発生の原因ともなるかちである。
 また、仮登記担保権を実行せんとする担保仮登記の先順位担保権がある場合の清算金は、物件の評価額から控除されるわけであるが、その算定が適正かどうかの調査も忘れてはならない事項である。
 上述の清算金の見積額の当否について不満がある場合に、債務者はこれを争うことができるが、後順位の抵当権者としては見積額の誤り、などを争うことは許されないものと解される。
 そこで、清算金の存在およびその妥当性が認められる場合は、清算金による債権回収策として、仮登記担保法4条の定める物上代位権の行使によることとし、もし適正を欠くものと判断され債権保全上不利な場合は同法12条の定める競売の請求権行使、すなわち自らの抵当権実行による競売手続を選択して債権の回収を有利に展開すべきである。

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