滞納処分による差押え対策

 担保権付財産が譲渡される場合、この場合は、他に租税にあてるべき十分な財産を有していない納税者が、その租税の「法定納期限等」後に登記した質権または抵当権あるいは「担保のための仮登記」などの担保権を設定した財産を譲渡したときは、納税者の財産について滞納処分による差押換価してもなお、その租税の徴収に満足できないと認められる場合に限り、それら担保権者が強制執行等の強制換価手続において、その担保権によって担保される債権につき配当を受けるべき金額のうちから租税が徴収される。
 すなわち、納税者の財産に担保権が設定されている財産が譲渡された場合には、担保権者は、譲渡者の祖税を予測できないし、譲受人の披担保債権に優先することが適当でないところから、租税を優先して徴収することはできないとされている。
 他面、譲渡者である納税者の租税に劣後していた担保権が、担保財産の譲渡によりすべて租税に優先する結果となることも、租税回避の点から適当でないので、この制度が設けられている。
 納税者が質権または抵当権の設定されている財産を譲り受けたときは、租税はその換価代金につき、その担保権により担保される債権に次いで徴収されることは当然である。

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 納税者が租税を滞納した場合において、その者が譲渡した譲渡担保財産があるときは、譲渡者からの徴収が不足すると認められるときにかぎり、その譲渡担保財産から納税者の租税を徴収でぎることことされている。ただし、租税の法定納期限等以前に担保の目的でされた譲渡にかかる、権利の移転の登記がある場合、または譲渡担保権者がその租税の法定納期限等以前に譲渡となっている事実をその財産の滞納処分の差押えによる公売の売却決定の前日までに証明した場合は、その譲渡担保財産から納税者の租税は徴収されない。
 なお、手形その他政令で定める財産については、譲渡担保権者の物的納税責任はないものとされている。
 上述するところにより、租税徴収による差押え以外の場合は、常に譲渡担保権者が優先するのであるが、滞納処分による差押えの場合にはその関係が相違する。つまり、譲渡担保権の設定物件でも合法的に滞納処分による差押えが可能なこと、租税と私債権との優劣は譲渡担保権の設定時と租税の法定納期限の前後によって決まることが主な相違点である。
 譲渡担保権者に対する物的納税責任を追及する場合には、まず譲渡担保権者に対する徴収職員からの告知に始まり、譲渡担保権者に告知を発した日から10日を経過した日までに完納されないときは、譲渡担保権者を第2次納税義務者とみなして、その譲渡担保財産について督促を要せずただちに滞納処分が執行される。
 ただし、譲渡担保財産は、価額が著しく減少するおそれがあるときを除いて、まず本来の納税者の財産を換価に付した後でなければ換価することはできない。
 滞納処分による差押え後に被担保債権の不履行によって譲渡担保物件が確定的に債権者の所有になっても差押えは有効に存続する。
 譲渡担保財産から本来の納税者の租税が徴収された場合には、その譲渡担保権者は、その納税者に対して求償権を行使することができることになる。
 譲渡担保になっていることがわからないで差押えがされた場合は、後から担保権者に通知することによって前の差押えは有効と認められる。以上の手続によって滞納処分が行われることによって、また私債権との関係において租税が徴収されるのである。
 実務的には租税滞納による差押えを受けた場合、は、まず担保権設定日と差押税金の納期限を調査し、優先権を確かめ、次に差押解除要求の要否と納税者の他財産の有無等を検討し調査することを要し、差押物件が公売された場合は、ただちに債権申立書とその理由を証明することによって権利を行使すべきである。
 国税徴収法24条6項で、譲渡担保権者が租税の法定納期限等以前に譲渡担保財産となっている事実を、その財産の売却決定(公売による)の前日までに証明した場合には、同条1項の納税者の譲渡財産から租税徴収の規定は適用しないと定めているので、このような場合においては、法定納期限等以前に譲渡担保権が設定されていることを合法的な譲渡担保契約証書に確定日付を付したもの、あるいは公正証書をもって証明して差押解除を要求し、物的納税責任から免れ滞納処分によって生ずる不利益を排除すべきである。
 譲渡担保の設定が租税の法定納期限等の期日の後であり、かつ納税者の他の財産をもって租税回収が満足できない場合にあっては、前述の物的納税責任を負担せざるをえないし、換価処分においては租税徴収後の残余を生ずる場合の残金の返還を受ける以外にない、譲渡担保の被担保債権の確保をより有効ならしめるためには、納税者からの納税促進あるいは譲渡担保権者として第2次納税義務の履行による目的物件の確保によるか、または納税者の他の財産の索出による差押換え等による努力が必要となろう。
 なお、譲渡担保権者が目的物件を占有している場合は別として、債務者らに占有使用、保管を委ねている場合にあっては、動産の善意取得の関係からも日常の情報収集と債務者に対する指導もまた欠かせない。

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