動産執行と無担保債権者の参加手続き

 動産の執行において配当等を受けられる債権者は、差押債権者のほか配当要要求した債権者であるが、売得金(差押財産の換価代金)については執行官がその交付を受けるまでに、また執行官からの供託された売得金については動産執行が続行されるまでに配当要求をした債権者。差押金銭については、その差押えをするまでに配当要求をした債権者。手形等の支払金については、執行官がその支払を受けるまでに配当要求をした債権者の範囲と定められている。
 すなわち現法では、無名義債権者の配当要求を認めず、さらに債務名義を有する債権者および仮差押債権者の配当要求を認めず、配当要求のできるのは質権者と先取特権者に限定しているわけである。これは、配当要求があっても差押えの範囲は広がらないことど、差押えについては超過差押えが禁止されてりるため、単純な配当要求を認めると、先に執行に参加していた債権者が不利益を受けることにかんがみて、不動産執行や債権執行と異なり、執行力のある債務名義を有する債権者や仮差押債権者は二重執行の申立てをしなければ配当等にあずかれないこととされた。
 他方、差押物について優先権のある質権者および動産先取特権者と一般先取特権者にはその権利を証する文書(質権設定契約書、不動産賃貸借契約書、動産売買契約書等)を提出することによって配当要求かすることができるものとしている。

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 債務名義すなわち確定判決や公正証書等を有する債権者であっても、旧法下で認められていた単純な配当要求のみでは、前述のとおり配当要求債権者として配当等にあずかれないので、二重執行の申立てをしなければならない。
 執行申立てには、執行文の付された債務名義の正本または仮執行宣言付支払命令の正本など執行力ある債務名義の正本の存在を必要とし、またその正本または謄本が強制執行開始のためには、あらかじめまたは同時に債務者に送達されていることが執行開始の要件となっているので、それらの準備手続を整えたうえ執行官に申立てをしなければならない。
 債務名義を有しない場合、債務名義を有せず強制執行の要件を備えていな/いのであるから「ただちに債務者財産の差押えに着手することは許されないし、また単純な配当要求も認められていないので、法125条4項の定めにより、配当要求の効力の生ずる仮差押えの執行にまず着手した後、本案訴訟で勝訴の確定判決を受け、執行力ある債務名義をもって本執行へ移行するこどによって配当にあずかることが可能となる。
 なお、仮差押えの執行は仮差押命令の正本に基づいて実施されるのであるが、当該仮差押えは執行裁判所の仮差押命令が言い渡された日または債権者に対して仮差押命令が送達された日から2週間を経過したときは、執行はできなくなるので、実務上留意を要する。この2週間の経過については、旧法下においてこの期間内に債権者が執行申立てをすれば足りるのか、または執行機関が執行に着手すればよいのか、あるいは執行の完了を要するのかについて学説が分かれていた。
 この点は、2週間内に執行機関が着手すればよいとするのが通説が、現法においても、この点なんらの手当てが設けられておらず、解釈の対立はやはり残るものといわれている。
 実務上では、仮差押命令発令を受けたならば、ただちに執行官に対し申し立て仮差押えを執行すべきである。
 ちなみに、仮差押えについては、民事執行法は執行関係についてのみ定めるものにすぎないので、仮差押えの裁判手続部分は民事訴訟法に残され、執行手続部分のみが民事執行法で規定されている。
 動産の執行は執行官による目的物の占有取得の方法でなされるので、その性質上二重執行を認めるのは相当でないとして、現法では、すでに差し押えられた物の差押えは許されないこととされた。仮差押えの執行があった物の差押えも同様できないとされたわけである。
 差押えを受けた債務者に対し、その差押えの場所についてさらに動産執行の申立てがあった場合においては、執行官はまだ差し押えていない動産があるときはこれを差し押え、差し押えるべき動産がないときはその旨を明らかにして、その動産執行事件と先の動産執行事件とが併合される。仮差押えの執行を受けた債務者に対し、その執行の場所についてさらに動産執行の申立てがあったときも同様とされる。
 以上の2個の動産執行事件が併合されたときは、後の事件において差し押えられた動産は、併合の時に先の事件において差し押えられたものとみなし、後の事件の申立ては配当要求の効力を生ずる。先の差押債権者が動産執行の申立てを取り下げたとき、またはその申立てにかかる手続が停止され、もしくは取り消されたときは、先の事件において差し押えられた動産は、併合の時に後の事件のために差し押えられたものとみなされる。
 この規定により仮差押事件と動産執行事件とが併合されたときは、仮差押えの執行がされた動産は、併合の時に動産執行事件において差し押えられたものとみなし、仮差押事件の申立ては配当要求の効力を生ずる。
 差押債権者が動産執行の申立てを取り下げたとき、またはその申立てにかかる手続が取り消されたときは、動産執行事件において差し押えられた動産は、併合の時に仮差押執行事件において仮差押えの執行がされたものとみなされる。
 差し押えるべき動産の売得金で手続費用を弁済して剰余を生ずる見込みのないときは、執行官は差押えをしてはならないとするのが無剰余差押禁止の原則である。
 したがって、差押物の売得金で差押債権者の債権に優先する債権および手続費用を弁済して剰余を生ずる見込みがないときは、執行官はその差押物の差押えを取り消さなければならないと規定されているので、無担保債権者として動産執行事件に参加手続をとるについては、特に質権者や先取特権者らの有無について調査確認しておく必要がある。

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