担保権者の保全手続き

 強制執行における差押えの対象は債務者の責任財産であるべきことは自明のことであり、執行機関の財産差押えにあたっては債務者の所有に属することが調査されているはずではあるが、執行の迅速性の要請から差押財産上の第三者の権利の有無調査の確実性までは期待しがたく、したがって第三者の財産や第三者の権利の目的となっている債務者の財産に対しても差押えの実施される危険は多い。
 現法は、従来と同じように、強制執行の目的物が債務者以外の第三者の所有に属する等の場合には、その所有権者等は第三者異議の訴えを提起することができることを固定した。
 また、動産執行における配当要求制度においては、配当要求のできる権利者を質権者と先取待権者に限定しているので譲渡担保権者は配当要求をすることができず、また現行法における優先弁済請求の訴えが廃止され、これによることもできない。
 したがって、譲渡担保権者として他債権者の執行に対して自己の債権を保全するには、まず譲渡担保権を確保するため、第一に第三者異議の訴えを提起し、譲渡担保物件に対する執行の取消しを求めなければならない。そのほか、違法執行や不法行為による債権者らに対する損害賠償請求あるいは不当利得返還請求などによりこうむった損害に対する責任追及、または債権者に対する銀行取引約定書および関連約定書の約定違反による全債権の期限の利益喪失による債権全額の回収ほかの防止策など、債権保全についての諸施策が考えられる、以下、ここでは主として第三者異議について検討することとする。

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 法38条は、「強制執行の目的物について所有権その他目的物の譲渡又は引渡しを妨げる権利を有する第三者は、債権者に対し、その強制執行の不評を求めるために、第三者異議の訴えを提起することができる」また「前項に規定する第三者は、同項の訴えに併合して、債務者に対する強制執行の目的物についての訴えを提起することができる」と規定している。
 この第三者異議の訴えは、第三者の財産や第三者の権利の目的となっている債務者の財産に対し執行が実施される危険から、不当な執行を排除して第三者を救済する手段として考案されたものにほかならない。この訴えの性質については、旧法下では、強制執行の不許を目的とする形成の訴えと解する説と、執行の目的物が債務の責任財産に属しないことの確認の訴えと解する説等との解釈上の対立があり、現法においてもこの見解の対立は残るが、確認訴訟説の立場からは遠のいているとする。執行機関が執行要件にしたがってした適法かつ有効である執行を、第三者がその対象たる財産につき所有権その他強制執行を妨げる権利を有することを理由に、執行を許さざる旨の宣言を求める判決を求める民事訴訟法上の訴えで、その判決により執行は効力を失うから、形成の訴えであると解され、その訴訟物は第三者の実体法上の権利に基づく異議権であるとみるのが形成訴訟説であり、これが通説的見解であった。
 なお、このような第三者保護については執行方法の異議によることもでき、債務者による動産の占有などの外形上の事実に反して執行が行なわれているときには、執行異議の申立てをすることにより第三者は救済されるが、外形上の事実にしたがって手続がとられているときには、第三者は手続上の瑕疵を主張する執行異議の申立てによるのみでは自己の権利を守ることはできないから、譲渡担保動産など第三者の所有物に対しなされている差押えのように、強制執行の手続が手続上は違法でなくても実体上の権利との関係では違法がある場合には、実体上の権利に基づいて執行手続の取消しを求める必要があり、その取消しのためには異議の申立てによることなく、訴えによって解決すべきものとされている。
 この訴えを提起できる者は、債権者占有の動産の真実の所有者たる譲渡担保権者や真実の不動産所有者、あるいは債権についての真実の債権者等が違例である。この訴えは、執行債権者を被告とするものであり、かつ、ぞの訴えの管轄は執行裁判所に専属する。
 執行債権者に対する第三者異議の訴えに併合して、債務者に対する所有権確認の訴え等強制執行の目的物についての訴えを提起することができることを、民事執行法38条1項で固定するに至った。
 訴え提起の時期は、この訴えが強制執行がなされた場合の第三者保護のための制度であり、執行の目的となっている第三者の権利またはその対象物に対する執行手続の取消しを目的とするものであるから、換価手続の終了した後では権利保護の利益を欠くことになり、また訴えの継続中に換価手続が終了したときも同様で、それ以前とすべきである。
 この訴えの提起があって払すでに開始された執行は続行され当節には停止されないし、執行完了後はもはや訴えの目的は違せられなくなるので、執行完了前に執行停止を第三者異議の訴え提起とともに受訴裁判所に申し立てるべく、また異議のため主張する事情が法律上理由のあることを事実の点について疎明することを要する。
 譲渡担保動産として第三者の所有物件に対する執行官の違法な執行にあたり、その物件が第三者の所有であることをあらかじめ知っているか、執行当時の事情で当然知りえた場合等に、債権者が執行官に指図して執行させたとか、あるいは執行の中止を申し出なかったなどのときには、少なくとも執行債権者に過失の責があるものとして、当該執行により譲渡担保権者がその権利や目的物件の喪失によって損害を受けた場合には、当然に一般の民法の不法行為に関する規定によって賠償責任を追及できるものと解する。
 執行当初は故意・過失がなくても、その後の事情からして第三者の所有物件であることを知り、または知りえたであろう場合も、執行を解除しないかぎり前述したと同様に賠償責任を免れえないものと考えられる。
 また、債権者が違法な執行の完了により、すでに第三者の所有物件について債権の満足を得ている場合には、譲渡担保権者としては不当利得の返還を執行債権者に求めることのできることはいうまでもない。もっとも、第三者異議の訴えで敗訴の確定判決を受けているときは、このような請求は排斥されることは明らかである。
 執行官自らの、または執行官代理らの違法な執行行為によって譲渡担保権者に損害をこうむらしめた場合は、執行官ら個人に対する不法行為ではなく、国家がこれによる賠償の責に任ずべきものと考えられる。
 前述の執行債権者に対する第三者異議の訴えと併合する債務者に対する所有権確認の訴え等のほか、債務者に対しては、銀行取引約定書および譲渡担保契約書の特約によって、このような債権者からの執行排除の請求、または他に担保または保証人らの増加による保全強化の請求、さらにはこれら請求に応じない債務者に対しては、約定違反による全債権についての期限の利益を剥奪して全額を早期に回収するなどの保全手続に努めなければならない。
 なお、このような他の債権者からの強制執行や第三者の即時取得などを防止するために、譲渡担保動産に対する明認方法を講じておくとか、あるいは譲渡担保契約証書の謄本などを債務者に交付しておき、他の債権者らからの強硬な行為に備えておくなどの予防の諸施策をも認識しておくべきである。

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