滞納処分と差押え

 納税者がその租税を納期限内に完納しない場合は、債権者である国または地方公共団体は、租税債権の徴収を確保するため、徴税機関の自力執行権に基づき、納税者に強制履行を求めることができるわけであるが、この祖税債権を強制的に実現する手続を定めたものが滞納処分に関する規定である。滞納処分の方法として、徴収職員が滞納者の財産を差し押え、これを換価(公売)し、その換価代金をもって租税債権に充当する一連の行政手続が滞納処分である。滞納処分による差押えは、定められたそれぞれの納期限が経過しても完納されない場合は、納期限後20日以内に督促状を発してその完納を催告し、なお督促状を発した日から起算して10日を経過した日までに完納しない場合の強制処分である。

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 租税が国および地方公共団体等の財政収入の大部分を占めているところから、租税の徴収を確保するため、別段の定めがある場合を除き、租税はすべての公課その他の債権よりも優先して徴収することとされている。このことは、納税者の同一財産中から租税債権および他の債権が同時に弁済を受けようとする場合に、原則としてすべての債権に優先して弁済を受けさせようとする祖税債権の特殊性に基づくもので、これが租税優先の一般原則と称されるものである。
 抵当権および質権等が納税者の財産上に設定されている場合、租税はその財産が強制換価され、その換価代金から優先して徴収できる場合と遅れて徴収される場合があり、抵当権や質権がその租税の法定納期限等の以前に設定ならびに対抗要件たる登記、登録がなされているときは私債権が優先し、その後に設定された抵当権等であるときは租税債権が優先する。この租税と私債権の優劣関係を判定する基準を法定納期限に求めている。したがって、抵当権等の対抗要件たる登記、登録と租税債権の法定納期限との前後によってその優劣が定まるものである。
 滞納処分による差押公売への配当参加は先行する滞納処分による差押公売手続に参加して前述の権利の順位にしたがって換価代金から配当を得る方法である。徴収職員が納税者の所有する抵当権の目的財産を差し押えたときは、その財産について権利を有する者のうち「知れている者」に国税徴収法施行令22条に定める事項を記載した書面をもって滞納処分を開始したことを通知するよう定められている。 また、当該差押財産の換価処分のため公売を公告したときは、滞納者、交付要求債権者および担保権者その他利害関係人に対し公売公告の内容を通知し、さらに換価代金から配当を受けることができる債権者に対しては、債権現在額申立書の提出を催告することになる。
 配当を受けるべき抵当債権者としては、売却決定の日の前日までに債権現在額申立書をもって債権の元本および利息その他の付帯債権の現在額、弁済期限その他の内容を記載した書面にその内容を証する各書面を添付して、税務署長または地方公共団体の長に債権の届出をなし、定めちれた換価代金の交付期日に前記の優劣基準と順位にしたがって換価代金の交付を受けることになる。
 もし、配当計算書に関し異議ある場合は、徴税機関に異議を申し立て、その更正を求め、あるいは異議が認容されない場合は不服の申立てによってその審査を受けることになる。 滞納処分と強制執行および担保権実行としての競売等との手続の調整に関しては、昭和32年9月制定施行された「滞納処分と強制執行等との手続の調整に関する法律」ならびに「同政令・規則」によって行なわれてきたところであるが、新しく民事執行法の制定により強制執行等の規定が整備されたことに伴い、同法律の一部の改正が行なわれ、新たに動産に対する滞納処分と競売との手続の調整ならびに航空機、自動車、建設機械、債権およびその他の財産権に対する滞納処分と強制執行等との手続の調整が図られることになった。これにより、ごく例外的なものを除きすべての財産権について前記法律に包括的に規定されるに至ったわけである。
 滞納処分による差押えがされている不動産について、抵当権実行としての競売または強制執行による強制競売等による二重の差押えをすることができる。すなわち、その場合には競売手続の回始決定および差押えの登記も行なわれるが、換価処分については、先行の不動産等に対する差押えが解除されるか、または先行の差押えに基づく換価等の手続がおくれている場合に、裁判所が「強制執行の続行の決定」をしないかぎり後行の私債権による差押え競売の手続を進めることはできない。
 滞納処分による公売処分が実行された場合は、その売却代金かち前記の租税と私債権との権利の優劣順位にしたがって抵当権者に配当すべきものであるときは、徴収職員から執行裁判所に交付される売却代金をもって執行裁判所からの交付または配当を受ける。交付または配当は民事執行法の定める一般の方法によって実施される。
 二重差押えを行なったが先行の滞納処分による差押えの換価がおくれる場合、滞調法8条に定める法令による徴収猶予や相当期間売却が行なわれないため徴収職員に催告しても効果ない場合などには、滞調法8条の定める強制執行続行の決定を執行裁判所に申請して、その続行の決定を求め自己の申立てによる競売手続を進行させることができる。この続行の決定は裁判所が徴収職員らの意見を聞いたうえ、その申請を相当と認めたときに発せられる。
 以後は、民事執行法の不動産の競売の方法により、私債権に基づく後行の二重差押えの競売手続によって換価代金から徴税官署も含めて権利の順位にしたがって交付または配当を受けることになる。
 抵当権実行としての私債権に基づく不動産の競売手続開始後においても、滞納処分による二重の差押えも可能であるが、公売その他滞納処分による売却のための手続は競売の申立てが競落を許すことなく完結した後でなければすることができない。
 抵当権者としては、たとえ租税に劣後する抵当権であって払先行している自己申立ての競売手続を民事執行法の定めるところによって進行せしめ、換価代金から権利の優先順位にしたがって執行裁判所から交付または配当を受ければよいのである。
 また、競売手続が中止または停止され競売がおくれることになった場合は、滞調法の定めるところにより、徴収職員からの滞納処分続行承認決定の請求によって、執行裁判所が相当と認めて滞納処分の続行を承認したときは、後行の滞納処分による差押えが先行したことになり、滞納処分による公売が実施されるので、競売申立抵当権者としては、徴収職員から執行裁判所に交付される売却代金をもって執行裁判所から前記ケース同様、交付または配当を受けることになる。
 滞納処分による差押え後に設定された抵当権は、法87条でとられている手続相対効と一致した解釈のもとに、換価処分代金の配当については無視した取扱いがなされるものと解される。したがって、売却代金の租税徴収後の剰余金からの回収を得るためには、別に仮差押えまたは債務名義を得て強制執行による競売の二重差押えをなし、徴税機関から執行裁判所へ交付される売却代金の残余金からの配当を求めなければならない。

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