差押えの抵当権への影響

 抵当権は、債権者が債務者または第三者(物上保証人)が債務の担保に供した物を、債務者にその使用収益をまかしておきながら、債務が弁済されない場合にその物の価額によって他債権者を排して優先弁済を受けることのできる担保物権であり、目的物から優先弁済を受けることが抵当権の効力の本体的なものである。抵当権は他の抵当権または一般債権と競合することがきわめて多く、それらの場合、一般債権者に対しては常に優先することはいうまでもないが、他の抵当権と競合するときはその順位は登記の前後によることは当然であり、同順位のものがあり売却代金で全額を満足させるに足りないときは比例的に分配されることになる。抵当権の存在を他に主張するには必ず登記によって公示すべしというのが原則で、抵当権は登記を対抗要件とするものである。

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 抵当権の目的物について、一般債権者が強制執行による強制競売をなし、または先・後順位の担保物権者が担保権実行としての不動産競売を申し立てることも妨げられない。
 これらの競売が行なわれても抵当権者の立場からすれば有効な抵当権であり対抗要件たる登記を備えているかぎり、競売によって抵当権は消滅するけれどもその売却代金から権利の順位にしたがって当然に優先的に弁済を受けることができるからである。
 しかし、抵当権が特定の担保価値の把握を目的とする以上、抵当権者自身が金融取引上なお取引の継続を有利とする場合に、後順位の抵当権者による競売のみならず他の一般債権者らの申し立てる競売によって抵当権が消滅することは、たとえ元利の完済を得るとしてもまして債権の全額が満足できない状況下においては、なお不利益な事態を起こすことになる。根抵当権にあっては、民法398条ノ20の定めるところにより他債権者の執行によって検抵当権の被担保債権の元本が確定することになり、たとえ極産額に余剰の枠があったとしても、原則的にはその利用はできなくなるので、まさに、しかりというべきであろう。これらの一般的事項については、旧法下のものとも大した変わりはないが、以下に各種の場合について新法に基づく処遇について検討することとする。
 不動産に対する強制執行としての強制競売について、民事執行法59条(担保権実行としての不動産競売にも準用)1項・2項は、不動産の売却によって不動産の上に存在する抵当権は消滅することを、また同法87条の配当などを受けるべき債権者の範囲として差押えの登記前に登記した売却により消滅すべき抵当権者(仮登記を含む)への売却代金の当然の配当を明定している。したがって、抵当権設定登記を経た有効な抵当権であるかぎり、登記された権利の順位にしたがった優先弁済を受ける点のみについてすれば、別に重ねて抵当権実行のための競売を申し立てる必要もなく、また配当要求の手続を経ることなく配当にあずかることができ、他債権者の差押えによって影響を受けることはないということができる。強制競売の開始決定および配当要求の終期については、公告がされるとともに差押えの登記前に登記した抵当権者にはその旨が通知されかつ債権届出の催告がなされ、また配当に際しては配当期日が決まれば抵当権者には計算書提出の催告がなされる。
 抵当権者として優先配当を受けるには、配当要求の終期までに、また配当に際しての催告に対しては正確な債権の届出をしなければならない。
 抵当権設定について登記を経ていない抵当権にあっては、たとえ抵当権存在確定判決や抵当権存在を証する公正証書を有していたとしても、まして私署証書による抵当権設定契約証書のみを有するにすぎないときは、仮にその抵当権設定が差押えの登記前になされていた場合でも配当等にあずかる地位にはない。したがって、このような文書しか有しない場合にあっては、自らが他債権者の差押登記に先んじて不動産競売の申立てをするか、または債務名義を得て、もしくは仮差押えの登記を経で配当要求をしなければ配当等にあずかれないので、実務上留意を要する。
 差押えがあると債務者は処分制限の効力を受けることになるが、その効力発生の時は開始決定が債務者に送達された時とするのを原則とし、開始決定の送達前に差押えの登記がされた場合は、その登記の時に差押えの効力が生ずるとされている。差押えの登記がされれば債務者はその換価価値に影響を及ぼすような処分は許されず、第三者の善意・悪意を問わず第三者も処分制限の効力を受けることになる。この処分制限の内容としては、所有権の譲渡、担保権の設定、用益権の設定があげられる。
 差押えの登記前に抵当権設定契約がなされていたとしても、その登記を経由していないかぎりは差押債権者に抵当権を対抗できないことは当然であり、売却代金からの配当を受けられないことも必然である。もし、差押えの登記後に抵当権の登記を経た場合の効力はどうかであるが、抵当権設定の登記そのものは許されても登記を経た差押債権者には対抗できないのはもちろん、すべての債権者との関係でも無視することとされ、このことは民事執行法87条2項・3項の規定によって明らかである。すなわち、このような抵当権は競売手続上まったく無効として処理されるので配当等にあずかることはできない。差押債権者および他の債権者との関係でもまったく無視される点については、旧法下における考え方および執行実務とで大いに異なるところであり、差押え後の抵当権等を配当手続においては無視して取り扱うという、すなわち「手続相対効」をとることとされている。
 差押えの登記後の抵当権設定契約に基づく抵当権設定登記がなされたというケースであるが、前記の場合と結論においてなんら変わるところなく、差押債権者および他の債権者からもすべて無視され、差押えによる売却代金から当然に配当を受けることはできない。
 仮差押えの効力も、処分制限については差押えによるものと同様に解されるので、仮差押えの登記後に登記された抵当権も同じく取り扱われることになる。ただし、仮差押債権者が本案訴訟で敗訴した場合においては、処分制限の効力を受けることなく、新たに設定登記された抵当権として処遇されることになるので、仮差押債権者の訴訟の結果が確定するまでの間は、確定できない配当等の額の部分は供託され、本案訴訟が確定したときに爾後の配当等が実施されるこどとなる。
 前(第一)の差押えと後(第二)の差押えとの間に設定登記された抵当権の場合には、第一の差押手続が進行しているときは無視されることになるが、第一の手続がなくなったときは、優先弁済受領権者たる地位を取得することになり、抵当権設定登記後の差押債権者の競売手続において債権の届出をすることによって配当にあずかることができることになる。

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