債権の仮差押え

 金銭債権または船舶もしくは動産の引渡しを目的とする債権に対する仮差押えをするには、まず債権仮差押命令を得なければならない。もともと、仮差押えの執行手続においては、強制執行手続における債務名義と同様に仮差押執行のための仮差押命令を得なければならないが、強制執行手続におけると異なり、執行保全のためになされるので、手続の迅速を必要とし、命令手続と執行手続とが密接に関係している。すなわち、仮差押命令は一般的な仮差押命令というかたちをとらないで、不動産仮差押命令、債権仮差押命令、動産仮差押命令という不動産執行、債権執行、動産執行という執行と結びついたかたちでなされる。特に債権仮差押えにあっては、その執行手続は債権仮差押命令の債務者、第三債務者に対する送達という方法でなされるため、命令手続と執行手続とが結びついている。

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 債権仮差押命令の申請は、本案の管轄裁判所その他の仮差押裁判所に対して、債権仮差押命令申請書を提出してする。
 債権仮差押命令においては、第三債務者に対し債務者への弁済を禁止する旨が命ぜられ、差押命令におけるように、債務者に対する処分制限は命ぜられない。しかし、それは、仮差押命令における仮差押宣言で足りるとするものであって、仮差押命令の第三債務者に対する送達により、債務者に対し処分制限の効力を生じ、その後債務者は、その処分をもって仮差押債権者に対抗できなくなることは、差押命令におけると異ならない。
 債権仮差押えにあっては、不動産仮差押えにおけると同様に、債権仮差押命令の発令裁判所が執行裁判所となる。
 債権仮差押えの執行手続は、仮差押命令を債務者、第三債務者に送達することによってなされ、第三債務者に送達されたときに、仮差押えの効力を生ずる。以後債務者は処分禁止の効力を受け、譲渡・質入その他の処分をもって仮差押債権者に対抗できず、さらに仮差押えの執行が本執行に移行したときまたは仮差押後に他の債権者による差押手続がなされた場合において仮差押債権者が本執行の要件を満たしたときは、不動産仮差押えの場合におけると同様、その処分は他の債権者に対する関係においても対抗できなくなる。この結果、たとえば、仮差押えの執行後債務者が被差押債権を質入し、さらにその後他の債権者による差押えがあった場合、仮差押債権者が本執行移行の要件を証明したときは、質権はないものとして配当がなされるし、仮差押債権者が本案訴訟で敗訴したときにはじめて、質権者は完全な質権を取得できる。
 債権に対する仮差押えの執行は、債権執行における換価手続がないだけの状態であるから、配当要求、取立て、転付命令(譲渡命令等)、配当に関する手続を除いて、ほぼ差押えに関する手続が準用されている。
 従来の供託実務上は、仮差押え自体は、弁済供託事由には該当しないとして取り扱われ、第三債務者は、被差押債権に仮差押えがあった場合、債務者はもちろん、仮差押債権者に対しても支払ができないので、支払の意思はありながら、履行期を徒過し、遅延損害金を支払わざるをえないという不利益があった。そこで、現法は、第三債務者を保護するため、仮差押えのされた金銭債権の全額を債務の履行地の供託所に供託することができることとした。また、仮差押えが競合するときは、枝差押債権全部に登板差押えの範囲が拡大し、全部競合の状態が発生するので、第三債務者は、枝差押債権全部を供託しなければならない。第三債務者はこの供託により免責される。債権執行においては、供託があると、配当要求の終期が到来するが、仮差押えの執行中の供託は、配当手続を予定していない段階における供託なので、この時をもって配当要求の終期とすることはできない。
 仮差押えの効力は、債務者が供託金に対して有する供託金払渡請求権のうえに移行することになるが、他の債権者がこの供託金払渡請求権を差し押えたとき、または仮差押えの執行が本執行に移行したときに、配当要求の終期が到来し、供託所からの通知により、配当手続が開始される。
 仮差押命令には、仮差押えを取り消すことができる金額が必ず記載される。この金額を仮差押解放金額というが、債務者が仮差押解放金を供託したときは、仮差押えの効力は、債務者の供託金取戻請求権の上へ移行し、仮差押えは取り消される(法179条1項)。ところで、第三債務者が仮差押えの執行を理由として、供託したときは、供託された金額のうち、仮差押解放金額に相当する金銭については、債務者が供託したものとみなされる。この結果、たとえば、第三債務者が債務者に対して負担する500万円の債権のうち、300万円につき仮差押えが執行され、第三債務者が500万円全額を供託したときは、仮差押解放金額300万円は債務者が供託したものとみなされ、仮差押えの執行は取り消されることになり、債務者は、仮差押解放金とみなされる300万円を超える200万円の供託金につき、裁判所からの支払委託によって、還付を受けることができる。

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