仮差押、仮処分の審理

 仮差押え、仮処分についての審理は、原則として書面審理により、必要な場合にかぎり口頭弁論を開いている。
 仮差押え、係争物に関する仮処分にあっては、ほとんど書面審理により、仮の地位を定める仮処分の一部につき口頭弁論が聞かれているにすぎない。
 債権者の審導は行なわれるが、調書は作成せず、審導の結果については、債権者に書面を提出させることが多い。債務者の寄与も時として行なわれる。債権者の主張および疎明に対する弁明の機会を与えるためである。係争物に関する仮処分で密行性の少ないもの、また労働事件、会社関係事件、工業所有権関係事件、断行の仮処分など仮の地位を定める仮処分であって、口頭弁論を聞いては迅速性の要請に沿わない事件につき、債務者の審導が行なわれている。
 第三者の審尋が許されるかについては、争いがあるが、保全処分において第三者審導はできないという判例が多く、また同旨の最高裁民事局の見解もあり、消極に解されている。

スポンサーリンク

 口頭弁論を聞いた場合には、判決で裁判をしなければならない。口頭弁論を聞いた後に書面審理に戻すことは許されない。口頭弁論を聞いても立証は疎明による。
 疎明は、即時に取り調べることのできる証拠によってなされる。したがって、文書提出命令、文書送付の嘱託などを求めることは許されない。証人、鑑定人、本人の尋問も在廷する場合のみすることができる。検証も即時に取り調べることのできる物については許されるが、法廷外の現場に臨んでなす現場検証は許されない。ただし、事実上の検証はなされており、これは訴訟関係を明らかにするための釈明処分としての検証と解されている。したがって、この結果を証拠調べに流用することは許されない。
 被保全権利もしくは争いのある法律関係または保全の必要について疎明がなされると、損害を担保するための保証を立てまたは立てないで、仮差押・仮処分命令がなされる。
 被保全権利等の疎明が不十分な場合等において、保証をもって疎明に代えることも許される。もっとも保証をもって疎明に代用させるかどうかは保全裁判所の裁量による。この保証金は、損害担保のための保証と異なり、債務者は、疎明代用の保証金については損害賠償に関する優先権を有しない。単に申請が虚偽であったときに没収の制裁を受けるにとどまる。
 仮差押え、仮処分の申請に対する裁判は、口頭弁論を開いたときは終局判決により、その他の場合は常に決定によりなされる。
 申請の理由がないときは申請は却下され、理由があるときまたは保証をもって疎明に代えさせたときは、損害担保のための保証を立てさせまたは立てさせないで、申請にしたがった仮差押え、仮処分の決定または判決がなされる。
 仮差押命令には、請求債権の執行を保全するため債務者の財産を仮に差し押える旨を宣言する。
 仮差押命令は、債務名義の形成にはかならないから、金銭債権についての給付判決と同様、債務者の全財産がその執行の対象となるわけであり、執行の目的、財産を特定して仮に差し押えるべき旨を宣言することを要しない。
 しかし、仮差押えの目的物が不動産、債権その他の財産権であるときは、命令裁判所が執行裁判所であることから、執行期間の制約を考慮して、実務上は、仮差押命令の申請と同時に申請が認容される場合を予想して執行目的財産を特定掲記して執行の申立てがなされているので、執行目的財産を特定掲記して仮差押えの宣言をしている。同様に、動産仮差押にあっても、その執行機関は執行官であるが、動産仮差押命令の申請をなし、動産仮差押命令にもとづき、執行官によって執行している。
 仮差押命令には、仮差押えの執行を停止しまたは取り消すための解放金額を記載することを要する。
 仮処分については、裁判所はに自由な意見をもって申立ての目的を達するに必要な処分を定めることができ、仮処分命令に申立ての目的を達するに必要なものとして定めた処分を記載する。
 係争物に関する仮処分は、将来の強制執行を保全するものであり、仮の地位を定める仮処分は、争いある権利関係について現在の危険を防止することを目的とするもので、いずれも債権者に終局的な満足を得させ、または紛争の確定的解決をはかることを目的とするものではないから、仮処分決定も、この目的を達するに必要な限度にとどめられ、また仮定的・暫定的な範囲にどどめられる。
 仮差押・仮処分命令が判決をもってなされたときは、債務者は控訴をして争えばよいが、決定をもってなされたときは、口頭弁論による審理を経ていないので、異議申立てをなし、口頭弁論による審理を求めることができる。
 この異議申立てがなされると、口頭弁論が開かれ、申請理由の当否が審理される。立証は疎明による。審理の結果、終局判決をもって、仮差押・仮処分決定の認可、変更、取消しがなされる。
 仮差押え、仮処分の決定または判決に対しては、一定事由あるときは、取消しの申立てをなすことができる。
 仮差押え、仮処分の決定または判決がなされた場合において、いまだ本案訴訟が提起されていないときは、債務者は、債権者に対し一定期間内に本案訴訟を提起するよう仮差押・仮処分裁判所に起訴命令を求めることができる。起訴命令は、通常は2週間内に本案訴訟を提起するよう発せられるが、この起訴命令による期間を徒過してなお本案訴訟が提起されないときは、債務者は、仮差押・仮処分命令の取消しを申し立てることができる。
 この申立てがなされたときは、口頭弁論が開かれ、本案訴訟提起の有無が審理される。口頭弁論終結までに本案訴訟が提起されず、また提起された訴訟が本案訴訟としての適格を有しないときは、終局判決で、仮差押・仮処分決定は取り消されるし、本案訴訟が提起されたことが疎明されたときは、取消申立ては却下される。
 仮差押えまたは仮処分の理由が消滅し、その他の事情が変更し、すでにした仮差押え、仮処分の決定または判決を維持しえないときは、債務者は、事情変更を理由としてその取消しを申し立てることができる。この場合も口頭弁論を開き、終局判決をもって裁判がなされる。
 この管轄裁判所は、本案訴訟の提起前においては発令裁判所であり、提起後においては本案裁判所である。
 仮差押えにあっては、仮差押裁判所が自由な意思で定める保証を提供することを理由として、仮差押えの決定または判決の取消しを申し立てることができる。
 もともと、仮差押えは、金銭債権の執行を保全するためのものであって、十分な保証を提供することにより仮差押えの必要性を欠くことになるので認められた制度である。仮処分にあっては、それが特定物の給付請求権の執行保全のためまたは争いのある権利関係につき仮定的な法律上の地位形成のためになされるものであるので、金銭的補償によっては代えられないのを原則とするから、仮処分にはこの制度の当然の準用はなく、特別の事情ある場合に限ってその準用が認められる。
 仮処分にあっても、披保全権利の性質上金銭的補償によって仮処分の目的を達することができる場合があるし、仮処分によって、債務者に異常な損害を生じ、債権者には金銭的補償をもって満足させることを妥当とすべき場合がある。
 代替性の強度な特定物の給付請求権を被保全権利とする場合や、詐害行為取消権を被保全権利とする処分禁止などの場合には金銭的補償をもって足りるし、工事禁止の仮処分にあっては後者に該当する場合がある。
 このような場合を、特別の事情のある場合とし、金銭的保証を立てることによって、仮処分命令の取消しを伸し立てることができるとしている。
 この場合も口頭弁論を開き、終局判決で裁判される。

お金を借りる!

仮差押、仮処分/ 仮差押、仮処分の審理/ 仮差押、仮処分命令の執行/ 不動産の仮差押え/ 債権の仮差押え/ 動産の仮差押え/ 仮処分手続き/ 差押えの抵当権への影響/ 抵当権者の保全手続き/ 無担保債権者の参加手続き/ 滞納処分と差押え/ 差押えの担保権への影響/ 担保権者の保全手続き/ 動産執行と無担保債権者の参加手続き/ 滞納処分による差押え対策/ 仮登記担保権の実行通知を受けた場合の対策/ 物上代位による差押手続/ 担保権の実行としての競売/ 債権の被差押え/ 滞納処分への参加手続き/ 預金の被差押え/ 差押えの預金債権の特定/ 仮差押命令があったとき/ 差押命令があったとき/ 転付命令があったとき/ 差押えが競合したとき/ 供託手続き/ 支払保証委託取引の意義と種類/ 損害賠償の保証/ 保証の事務処理/ 買受申出の保証/ 支払保証委託契約締結証明書の発行/ 被保証債務の譲渡/