仮差押、仮処分

 仮差押え、仮処分は、強制執行を保全するための暫定的・仮定的な処分であって、両者をあわせて保全処分と呼ぶ。
 仮差押えは、金銭債権または金銭債権に換えることのできる請求権の執行を保全するためになされる。
 仮処分には、特定物に関する請求権の執行を保全するためになされる係争物に関する仮処分と、争いある権利関係につき著しい損害を避け、または急迫な強暴を防ぐため、仮定的地位を形成する仮の地位を定める仮処分との二つがある。
 仮差押えと係争物に関する仮処分とは、その被保全権利が金銭債権またはこれに換えることのできる請求権であるか、特定物に関する請求権であるかの差異に基づくものにすぎないで、同質のものといえるが、仮の地位を定める仮処分にあっては、被保全権利についての執行保全的性格は少なく、むしろ法律上の地位の仮定的形成としての性格が強く、仮差押え、係争物に関する仮処分とは異質のものといえよう。
 仮差押え、仮処分をなすには、仮差押・仮処分命令を申請して仮差押・仮処分決定(または判決)を受け、その決定(判決)に基づいて執行する。
 すなわち、仮差押・仮処分手続は、仮差押・仮処分命令の申請手続とその執行手続とかあり、債務名義を得るための通常訴訟の判決手続と債務名義に基づく強制執行手続とに照応する。
 命令申請手続にあっては、申請の当否を審理し、命令を発布すべきかどうかを判断し、裁判手続による。この手続については、原則として訴訟の審判手続が適用ないし準用され、強制執行に関する規定の適用ないしは準用はない。
 仮差押え、仮処分の執行手続については、強制執行の規定が準用される。

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 仮差押・仮処分命令の申請は、書面または口頭によってするが、通常は書面によってする。
 管轄裁判所は、本案の管轄裁判所または、目的物の所在地を管轄する他方裁判所であり、急迫な場合には口頭弁論を要しないものに限り、裁判所の裁判長がその権限を有する。
 仮差押えの申請の趣旨には、被保全権利の種類、内容、金額を特定して表示し、この債権の執行保全のため、債務者の財産を仮に差し押えるとの裁判を求める旨を切らかにすることを要する。
 被保全権利の内容である請求債権の金額、種類、態様は申請の趣旨として表示されるから、申請の理由としては、その権利発生の要件に関する事実を記載する。
 仮差押えの被保全権利は金銭債権または金銭債権に換えることのできる請求権であるが、後者は、本来の給付(特定物引渡請求権など)が債務不履行または契約解除などによって損害賠償債権に転化した場合を予想し、この将来の金銭債権の執行を保全するものである。金銭債権はこのような将来の債権、停止条件付債権、期限未到来ぬものでもよい。
 仮差押えをするには、将来の強制執行が執行不能または著しく困難になる事情がなければならない。これを保全の必要という。この事情は、債務者の性格、挙動、営業状態、財産関係その他の事実から予想される将来の危険であって、客観的に裏付けられることを要し、単なる債権者の主観では足りない。
 立証は疎明による。疎明は、ただちに取り入調べることのできる証拠によらなければならな。原則として、口頭弁論によらずに書面によって審理される。申請と同時に疎明資料を提出する。
 疎明資料に、疎甲1号証より順次適宜番号を付し、写しを添付する。
 また、目的物に関する登記・登録簿謄本、評価証明書を添付し、申請者が法人であるときはその資格を証する登記簿抄本、代理人による申請のときは委任状の添付を要する。
 係争物に関する仮処分は、現状の変更により、権利の実行が不能になりまたは著しく困難となるおそれがある場合に許される。
 仮差押えとの差異は、被保全権利が金銭債権または金銭債権に換えることのできる請求権以外の権利であることにある。特定物の引渡請求権、登記請求権などがその例である。
 債務者その他の者による係争物の毀滅、隠匿、譲渡、負担の増加、担保権の設定などのおそれがある場合などに許される。
 申請にあたって、被保全権利の特定、発生要件、保全の必要を明らかにし、疎明方法によること、必要な付属書類の添付書類を要することなど、仮差押えにおけると同様である。
 仮処分の管轄裁判所は、本案の管轄裁判所が原則であって、急迫な場合に限り、係争物の所在地を管轄する地方裁判所も管轄権を有する。なお、急迫な場合には、仮差押えにおけると同様、口頭弁論を要しないものに限り、裁判所の裁判長も管轄権をもつ。
 仮の地位を定める仮処分は、当事者間の権利関係に争いがある場合において、債権者に生ずる危険や損害を防止するため、一定の法律関係を仮定的に形成するもので、披保全権利の執行保全を目的とするものではない。
 したがって、その申請にあたってば、被保全権利の代りに争いある権利関係を明らかにし、かつ、保全の必要を明らかにする必要がある。特に、仮の地位を定める仮処分にあっては、法律関係が未確定のために生ずる著しい損害を避け、急迫な強暴を防ぐ必要のあることを要し、この保全の必要こそが仮の地位を定める仮処分を認める要となる。
 管轄裁判所は、係争物に関する仮処分と同じであり、その他は仮差押えにおいて述べたところと同様である。

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