社員等の持分権に対する強制執行

 社員の持分等は、社員たる身分上の権利と同時に財産上の価値を有しているため、これを換価することが可能であり、差押えの対象となりうる。合名、合資、ならびに有限会社の社員の持分については、強制執行の手続が明文化されている。信用金庫会員の出資持分、各種協同組合の組合員の出資持分等については、強制執行に関する明文規定を欠いているが、これらの持分についても強制執行ができると解されている。
 社員の持分権、信用金庫会員の出資持分権、協同組合の組合員の出資持分権に対する強制執行の手続は、法167条に基づき債権執行の例によるとされている。したがって、申請書の記載は、債権に対する差押命令の申請書と同様である。

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 差押命令が第三債務者に送達された時に差押えの効力が生ずる。差押えの効力は、社員が将来利益の配当および持分の払戻しを請求する権利に対しても及ぶが、具体的に請求権が発生して金額が定まるまでは、転付命令は発せられない。そのほか商法は、会社が任意清算をするときは差押債権者の同意を受けるものとし、同意を得ないで財産を処分したときは、差押債権者は会社に対しその持分に相当する金額の支払を請求できることを認め、差押債権者を保護している。
 合資会社・合名会社の社員の持分権の場合は、社員の持分権を譲渡するときには、総社員(合資会社における有限責任社員の持分の場合は無限責任社員全員)の承諾がないと譲渡できない。したがって、譲渡命令、売却命令を申請するには、総社員の承諾書を示行する必要がある。承諾が得られないときは、その差押えは単に処分禁止の効果を生ずるにすぎないこととなる。しかし、これでは持分を差し押えても事実上換価をはかるのは困難であるため、差押債権者に社員を退社させる権利を認め、退社によって生ずる持分払戻請求権を差押命令をもって取り立て、または転付命令を得て満足を受けさせる道を開いている。
 有限会社の社員の持分権の譲渡は、同一会社の社員に対しては自由であり、非社員に対する譲渡についても会社の先買者指定権による制限を受けるにすぎない。判例も、有限会社法19条5項で調整がはかられているので社員でない債権者に譲渡命令が発せられても違法でないとしている。したがって、持分の換価は法167条、161条の定めるところによる。なお、この持分は券面額がないから、執行命令は許されない。
 信用金庫の会員の持分権を譲渡するには、金庫の承諾が効力要件で、しかも譲受人は会員または会員たる資格を有する者に限られている。したがって、換価の申請には金庫の承諾書の添付が必要である。金庫の承諾が得られないときは、差押債権者は、債権者代位権に基づき、債務者に代位して金庫に対し、定款の定めるところにより、持分の譲受を請求し、当該譲受代金につき換価手続を進めることになる。
 特許権等の無体財産権については、法167条により債権執行の例によるとされている。この申請には、第三債務者に準ずるものがないのが特色で、それ以外はほぼ一般の債権執行と同様である。差し押えるべき工業所有権(特許権、実用新案権、意匠権、商標権)を特定するには、「登録番号、名称(特許権、実用新案権の場合は発明、考案にかかる事項、意匠権、商標権の場合はその名称)、権利者の住所、氏名」を記載することが必要である。著作権の場合は「著作物の題号、著作者の氏名、著作の年月日、発行者又は興業の年月日、著作物の種別及び内容又は体様、著作者の実名」などを記載し、その著作物の明細書を添付して特定する。申請の際には、当該各権利が所轄官庁に登録されていることを証する登録簿謄本の添付が必要である。工業所有権、著作権ともに譲渡や処分の制限などは登録を受けなければ、その効力を生じないとされているので、差押えの効力も登録がなされた時に生ずると定められている。
 工業所有権、著作権は譲渡性を有するから、法161条により譲渡命令、売却命令の申立てをすることができる。なお、工業所有権が共有の場合、共有持分の譲渡には他の共有者の同意が必要とされているので、共有者の同意書の添付が必要である。

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