自動車に対する強制執行

 すべての自動車が強制執行の対象となりうるが、道路運送車両法による登録を受けた自動車と登録を受けていない自動車とでは、執行手続を異にする。
 自動車はすべて動産であるが、道路運送車両法の規定により登録を受けた自動車は、登録をもって所有権の得喪・変更、抵当権の設定の対抗要件とされている。これは、登記をもって対抗要件とする不動産の取扱いと類似していること、執行官の判断に適しない比較的複雑な権利関係を生ずることから、登録自動車については、不動産執行に準じ、強制競売の方法により行なわれる。これを自動車執行という。それ以外の自動車は、すべて動産に対する執行による。
 自動車執行の対象となる自動車は、自動車抵当法2条但書に規定する大型特殊自動車を除く、道路運送車両法13条1項に規定する登録自動車である。すなわち、軽自動車、小型特殊自動車および二輸の小型自動車以外の自動車で、道路運送車両法第2章の規定により国土交通大臣の管理する自動車登録ファイルに登録を受けたものをいい、ブルドーザー、ダンプカー等の大型特殊自動車で建設機械となるものを除いたものをいう。

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 自動車執行については、その自動車の自動車登録ファイルに登録された使用の本拠を管轄する地方裁判所が執行裁判所となる。
 自動車執行の申立書には、規則21条各号に掲げる事項、債権者、債務者ならびに代理人の表示、債務名義の表示、目的となる自動車の表示および求める強制執行の方法のほか、自動車の本拠を記載し、執行力ある債務名義の正本のほか、自動車登録事項等証明書を添付しなければならない。
 強制競売の手続を開始するには、不動産競売と同様、開始決定をし、債権者のために自動車を差し押える旨を宣言する。開始決定は債務者に送達され、自動車登録ファイルに差押えの記載の嘱託がなされる。同時に、自動車執行の実効を確保するため、開始決定において、債務者に対し、自動車を執行官に引き渡すべき旨を命ずることとしている。これは、不動産と異なり、自動車は移動することが予想されるので、当該自動車の運行を止めないと、その後の手続の進行が困難となるからである。なお、差押えの効力は、開始決定が債務者に送達された時、差押えの登録がなされた時または執行官が自動車の引渡しを受けた時のいずれか早い時に発生する。
 自動車は、その機能からして場所的移動がひんぱんで、隠匿等も容易である。執行官は、競売開始決定に基づき当該自動車を占有するが、それ以前においても別途隠匿の防止措置をとる必要がある。そこで、競売手続開始以前において、自動車の隠匿、破損等の危険を防止し、その物的原状を維持することによって執行の実効性を確保するため、債権者の申立てにより、執行裁判所は、債務者に対し、自動車を執行官に引き渡すべき旨を命ずることができることとされている。この申立てをするには、執行力ある債務名義の正本を提示し、かつ、保全の必要性を疎明しなければならない。
 この命令は、執行保全のための仮の処分なので、債務者へ送達される前でも執行することができるとされているが、他方、申立人に命令が告知された日から2週間を経過すると執行することができなくなる。また、この命令により自動車の引渡しを受けた日から10日以内に、債権者は、自動車執行の申立てをし、申立てをした旨の証明書を執行官に提出しないと、執行官は、引渡しを受けた自動車を債務者に返還することになる。
 執行官は、相当と認めるときは、引渡しを受けた自動車を差押債権者、債務者その他適当と認められる者に保管させることが認められている。この場合、公示書の貼付その他の方法で当該自動車が執行官の占有下にあることを公示し、運行させないための適当な措置をとる必要がある。
 換価手続についても、不動産強制競売の手続に準じ、ほぼ同様であるが、不動産に比較すると一般にその財産的価値が低いことから、手続を簡略化して費用の節減をはかっている。その手続の概要は次のとおりである。
 すなわち、執行裁判所は、評価人を選任して自動車の評価を命じ、その評価に基づいて最低売却価額が定められる。売却の方法は、入札又は競り売りの方法で行なわれるが、それ以外の方法で売却されることもあり、差押債権者の買受けの申出によりその者に自動車を売却する方法も認められている。
 配当手続について伝不動産強制競売の手続に準じ、ほぼ同様である。

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