船舶に対する強制執行

 船舶は、その性質上も法律上も動産であるが、一般にその価値が高く、所有権の保存、移転、処分制限等や抵当権の設定等の登記をなすことができ、執行官の判断に適しない複雑な権利関係を生ずることもあることから、船舶に対する強制執行は、不動産執行に準じ、強制競売の方法により行なわれる。したがって、不動産執行における配当要求の制度、執行官による現況調査、物件明細書の作成、売却および売却決定の手続、引渡命令、配当等の手続は、すべて準用されている。

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 船舶執行の対象はすべての船舶が強制執行の対象となるが、総トン数20トン以上の船舶に対する強制執行は、不動産執行に準じて強制競売の方法により行なわれにれを船舶執行という。、それ以外の船舶は動産執行の方法で行なわれる。不動産執行に準じた取扱いがなされるのは、船舶登記があることに起因しているので、船舶登記をすることができない船舶は、船舶執行の対象とされていないのである。船舶登記が可能な船舶については、登記の有無を問わず、また外国船であっても船舶執行の対象となる。なお、製造中の船舶については、動産執行の方法で行なわれる。
 船舶執行については、強制競売開始決定時の船舶の所在地を管轄する地方裁判所が執行裁判所となる。裁判所は、管轄区域内に船舶が所在していることを確認のうえ開始決定をすることになるが、通常申立て時に管轄区城内に所在する旨の証明書を添付し、これをもって開始決定時に所在しているものとして処理することになる。なお、船舶執行の手続からみて、管轄区域の海上を航行申のものは含まれない。
 船舶執行の申立書には、規則21条各号に掲げる事項のほか、船舶の所在する場所ならびに船長の氏名および現在する場所を記載し、執行力ある債務名義の正本のほか、登記された日本船舶については登記簿の謄本等規則74粂に定める書類を添付しなければならない。なお、船舶執行は、債務者がその船舶を占有していなければこれを行なうことができない。したがって、債務者が賃貸中の船舶については、船舶執行ではなく、船舶の引渡請求権の差押えの方法で執行することになる。また、発航準備を終えた船舶に対しては執行の申立てができないことがあるので、申立ての際、発航準備を終えていない旨の証明書の添付も必要となる。
 強制競売の手続を開始するには、不動産競売と同様、開始決定をし、債権者のために船舶を差し押える旨を宣言する。開始決定は債務者に送達され、差押えの登記ができる船舶については登記の嘱託がなされる。同時に、船舶執行の実効を確保するため、開始決定において、船舶の出航禁止を命ずることとしている。これは、不動産と異なり、船舶は動くことが予想されるので、当該船舶の運航を止めないとその後の手続の進行が困難となるからである。さらに、この命令の履行を確保するため、執行裁判所は、開始決定の際に、執行官に対し、船舶国籍証書等を取り上げて執行裁判所に提出すべき旨の命令を発し、差し押えられた船舶が移動できないよう処置している。なお、差押えの効力は、開始決定が債務者に送達された時、差押えの登記がされた時または船舶国籍証書等が取り上げられた時のいずれか早い時に発生する。
 最近は、船舶の荷揚げ・積みおろし作業が機械化されて迅速化したため、入港してから出港するまでの間が短縮され、執行が間に合わない事態も予想される。そこで、あらかじめ船舶を停泊させておくため、船舶国籍証書等の取上げをしておかなければ船舶執行が著しく困難となるおそれがあるときは、申立てにより、裁判所は、債務者に対し、船舶国籍証書等を執行官に引き渡すべき旨を命ずることができることとされている。この申立てをするには、執行力のある債務名義の正本を提示し、かつ、保全の必要性を疎明しなければならない。
 この命令は、執行保全のための仮の処分なので、債務者に送達される前でも執行することができることとされているが、他方、申立人に命令が告知された日から2週間を経過すると執行することができなくなる。
 また、この命令により船舶国籍証書等の取上げがあった後、債権者が5日以内に船舶執行の申立てをし、申立てをした旨の証明書を執行官に提出しないと、執行官はよ取り上げた船舶国籍証書等を債務者に返還することになる。
 開始決定による船舶国籍証書等の取上げは、船舶の停泊を確保するためのもので、債務者の占有まで奪うものではない。ところが、債務者の占有を奪わないと、船舶の現状維持と価値の減少を防止できない事態も起こりうる。そこで、執行裁判所は、債権者の申立てにより、保管人を選任し、保管人は、債務者の占有を解いて自ら船舶を占有する。
 船舶執行は、不動産に対する強制競売の規定を包括的に準用しているため、不動産の競売手続とは僕同様で、その手続の概要は次のとおりである。
 すなわち、執行裁判所は、執行官に対し、船舶の形状、占有関係その他の現況について調査を命じ、執行官は、調査事項を記載した現況調査報告書に船舶の写真を添付して執行裁判所に提出する。また、執行裁判所は、評価人を選任して船舶の評価を命じ、その評価に基づいて最低売却価額が定められる。さらに、換価の適正化をはかるため、執行裁判所は、物件明細書を作成して閲覧に供する。船舶の売却の方法は、入札又は競り売りのほか、規則で定められた方法で行なわれる。このようにして船舶が売却できたときは、執行裁判所は、売却許可決定を言い渡す。
 配当手続についても、不動産強制競売の手続に準じ、ほぼ同様である。その手続の概要は次のとおりである。
 すなわち、差押えの効力が生じた場合、執行裁判所は、配当要求の終期を定め、裁判所書記官は、法49条2項各号に掲げられた債権者に対し、配当要求の終期までに債権の届出をするよう催告する。執行力のある債務名義の正本を有する債権者、強制競売の開始決定にかかる差押えの登記後に登記された仮差押債権者および文書により一般の先取特権を有することを証明した債権者は、配当要求をすることができることとされているが、旧法では配当加入が認められていた無名義債権者は除外されている。配当を受けられる債権者は法87条に掲げられた債権者である。
 執行裁判所は、配当期日に、配当表の作成に関して債務者および各債権者を審尋し、各債権者間に合意ができれば、それにしたがって配当し、配_当異議の申出があったときは、配当異議の申出のない部分に限り配当を実施し、配当異議の訴えが提起されたときはこの部分を供託する。なお、債権者が1人の場合または各債権者に弁済してなお剰余がある場合には、配当表を作成せず、交付計算書により弁済金を交付する。

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