有価証券に対する強制執行

 現新法においては、裏書の禁止されている有価証券以外の有価証券は、すべて動産執行の対象となることとされた。
 有価証券のうち、取引界において証券の権利行使よりも証券自体の売買価額にその価値があり、売却という換価方法に適する記名・無記名の株券、公・社債券、投資信託受益証券、新株引受権証書等については、民事訴訟法旧規定のもとでも、有体動産の差押方法により強制執行できた。
 しかし、旧法のもとでは、手形・小切手、倉荷証券、船荷証券等のように証券の価値が証券上の権利の行使にある指図証券の差押えについては、判例および実務の取扱いは、執行官がその証券を占有してなすことを要するが、本来が債権差押えの執行であるから執行裁判所の権限に属し、債権差押命令を要し、この差押命令に基づいてこれらの証券を現実に差し押えるものとされていた。そのため、執行官が動産執行の際に手形・小切手等を発見しても、差押命令がなければ差し押えることができず、機能的でないと批判されていた。
 そこで、現法では、手形・小切手等の指図証券についても、動産執行の対象とし、通常の動産と同様に、執行官が差し押え換価できることとした。
 なお、裏書の禁止されている有価証券上の権利は、債権執行の対象とされる。

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 有価証券とは、私法上の財産権または財産的利益を受ける地位を表象する証券であって、その権利の移転および行使に証券の占有を必要とするものをいい、無記名債権も含まれる。
 ここにいう有価証券とは、手形・小切手、国債証券、地方債証券、社債券、株券、新株引受権証書、日本銀行および帝都高速度交通営団の出資証券、信託の無記名受益証券、抵当証券、倉庫証券、貨物引換証、船荷証券、商品券・乗車券・無記名公債などの無記名債券等である。
 有価証券に対する執行は、動産執行によるのであるから、債権者の執行官に対する動産執行の申立てに基づき、執行官が執行場所において有価証券を捜し出して差し押え、占有することによって開始される。差し押えられた有価証券は、原則として執行官により、入札、競り売り、その他の方法で売却され、配当等が実施される。
 しかし、有価証券の性質から一般の動産執行に対し、執行手続上いくつかの特則が設けられている。
 執行官は、手形・小切手そめ他の金銭の支払を目的とする有価証券で、その権利の行使のため定められた期間内に引受けもしくは支払のための提示または支払の請求を要するものを差し押えた場合は、その期間の始期が到来したときは、債務者に代わって手形等の提示等をしなければならない。
 この執行官による提示等は、債務者が提示等をしたのと同様な効果があり、この提示等によって支払がなされると、その支払金は、差押物の売得金と同様なものとみなされる。
 執行官は、未完成の手形等を差し押えたときは、債務者に対し、期限を定めて、当該手形等に記載すべき事項を補充するよう催告しなければならず、債務者が補充したときは、その旨および補充の内容を記録上明らかにしなければならない。しかし、催告を受けた債務者には補充する義務はない。
 したがって、催告にもかかわらず、白地が補充されないときは、白地のまま提示をしても引受けまたは支払が得られる見込みがある場合を除き、執行官は提示の義務を免れると解されている。
 なお、白地のままで売却されたときは、買受人が白地補充権を取得する。
 取引所の相場のある有価証券は、その日の相場以上の価額で売却しなければならない。
 執行官は、取引所の相場のある有価証券について、競り売りまたは入札以外の方法によって売却を実施する場合、および執行官以外の者に売却を実施させる場合に、執行裁判所の許可を受けることなく、自らの裁量により実施することができる。これによって、執行官は、有価証券を適宜、証券会社に売却あるいは売却の委託をして、売却日の相場をもって売却できる。
 執行官は、売却した有価証券の流通性を確保するため、買受人のために、債務者に代わって裏書または名義書換えに必要な行為をすることができる。

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