配当を受けられる債権者の範囲

 配当等が受けられる債権者は、差押債権者、二重執行の申立てをし事件が併合されて配当要求の効力が生じた債権者および配当要求をした先取特権者または質権者である。
 動産執行においては、債務名義を有しない債権者はもちろん、債務名義を有する債権者および仮差押債権者の配当要求も認められない。したがって、これらの者は、二重執行の申立てをして事件の併合を受けなければ配当等にあずかることはできない。
 動産執行にあたって質物の提出を担まなかった質権者または一般の先取特権を有する債権者、および動産の先取特権を有する債権者は、その権利を証する文書を提出して配当要求をすることができる。
 配当要求をした質権者または先取特権者の質権等の有無・内容について争いがあるときは、配当異議の手続で処理されるので、本法では優先弁済請求の訴えは設けられていない。
 質権者または先取特権者が配当要求をしたのに、執行官がこれを認めないときは、執行異議の方法により不服申立てをすることができる。
 配当要求することができる者は、質権者と先取特権者に限定されているから、譲渡担保権者は、配当要求をすることができない。譲渡担保権者は、譲渡担保の目的動産に対し動産執行が開始されたときは、所有者として第三者異議の訴えを提起し、執行手続の取消しを求めなければならない。ただし、譲渡担保権の担保的機能が重視される傾向にあることから、目的物の価額が担保価額を超える場合、譲渡担保権者の配当要求を認める考え方もでてくるであろう。
 土地から分離する前の天然果実に対し、動産執行が開始され、その後その土地について不動産競売または不動産執行が開始されると、抵当権の効力は、その土地から生じる天然果実に及ぶことになるので、抵当権者は、先に行なわれている動産執行手続に配当要求することができるとも解される。
 差押債権者以外の者は、次にのべる所定の時期までに配当要求をしなければならない。
 なお、法125条により配当要求の効力が認められた債権者は、あらためて配当要求をする必要はない。
 売得金については、執行官がその交付を受けるまで。ただし、法137条による執行停止中の売却または法177条3項による仮差押中の売却により供託された売得金については、動産執行が続行されるまで。
 差押金銭については、その差押えをするまで、手形等の支払金については、その支払を受けるまで。
 配当要求は、執行官に対し、債権の原因および額を記載した書面でしなければならない。また、その権利を証する文書を提出する必要がある。
 配当要求があったときは、執行官は、差押債権者および債務者に対し、その旨を通知しなければならない。

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 執行官は、差押物の売却によりその代金の交付を受けた場合、金銭を差し押えた場合、手形等の提示により支払を受けた場合は、その売得金等を債権者に交付し、または配当する。
 債権者が1人ある場合または債権者が2人以上であっても、売得金、差押金銭もしくは手形等の支払金で、各債権者の債権および執行費用の全部を弁済できる場合には、執行官は、債権者に弁済金を交付し、剰余金を債務者に交付する。
 債権者が2人以上で、売得金等で各債権者の債権および執行費用の全部を弁済することができない場合には、執行官は、配当を実施する。
 執行官は、売得金等を受け取った日から、2週間以内の日を配当協議の日と定め、各債権者に対し、その日時および場所を通知しなければならない。この通知は、配当協議に加わることができる仮差押債権者や執行停止中の債権者に対してもなされる。
 執行官は、配当協議の日までに法85条4項所定の事項を記載した配当計算書を作成しなければならない。
 配当協議の日に、債権者間に協議が調ったときは、執行官は、その協議にしたがい配当を実施する。債権者間に配当計算書による配当と異なる配当の協議が調ったときは、執行官は、その協議にしたがい配当計算書を改めなければならない。
 配当の協議が調わなかったときは、執行官は、所定の事項を記載した書面に事件記録を添付して、その事情を執行裁判所に届け出なければならない。
 確定期限の到来していない債権については、弁済期が到来したものとみなして配当等を実施する。利息付債権については配当期日までの利息をつけ、無利息債権については配当日から確定期限までの法定利率による中間利息を控除して、配当等の額が計算される。
 執行官は、売却代金の納付後に法39条1項1号〜6号に掲げる執行取消文書が提出された場合には、その債権者に対する配当等は実施できないが、その他の債権者に対する配当等は実施しなければならない。
 また、執行官は、売却代金の納付後に法39条1項7号または8号に掲げる執行停止文書が提出された場合には、それを無視して配当等を実施しなければならない。
 配当等を受けるべき債権者の債権が、条件付債権、仮差押債権者の債権、執行停止文書の提出されている債権などの場合は、執行官は、その配当等の額に相当する金銭を供託し、所定の事項を記載した事情届に供託書正本および事件記録を添付して、執行裁判所にその事情を届け出なければならない。
 執行官は、債権者が配当等の受領のために出頭しなかったときは、その配当等の額に相当する金銭を供託しなければならない。
 差押債権者の債権全額について、弁済または配当等がなされたときは、債務者は執行官に対し、執行力のある債務名義の正本の交付を求めることができる。それ以外の場合で、事件が終了したときは、差押債権者は執行官に対し、執行力のある債務名義の正本の交付を求めることができるが、差押債権者が債権の一部について弁済または配当等を受けているときは、執行官は、その額を債務名義の正本に記載して交付しなければならない。
 以上の執行力のある債務名義の正本の交付は、法139条3項または法141条1項の規定による事情届が執行裁判所に提出された後は、行なわれない。
 執行裁判所は、配当協議不調による事情届があった場合はただちに、権利未確定等の事由で供託がされ事情届があった場合は、その供託事由が消滅したときに、配当等の手続を実施する。この手続は、不動産執行における配当等の手続に準じて行なわれる。
 執行裁判所は、特別の事情がある場合を除き、配当を実施すべきこととなった日から1月以内の日を配当期日に指定し、裁判所書記官は、各債権者および債務者に対し、その日時および場所を通知し、配当期日に呼び出さなければならない。
 裁判所書記官は、配当期日が定められたときは、各債権者に対し、所定事項を記載した計算書を1週間以内に執行裁判所に提出するよう催告しなければならない。
 執行裁判所は、配当期日において所定の事項を記載した配当表を作成する。配当表に記載する事項のうち、配当の順位および額は、配当期日においてすべての債権者間に合意が成立した場合にはその合意により、その他の場合には民法、商法その他の法律の定めるところにより記載される。
 執行裁判所は、配当表に基づいて配当を実施する。
 配当表に記載された各債権者の債権または配当の額について不服のある債権者および債務者は、配当期日において配当異議の申出をすることができる。
 配当異議の申出をした債権者および執行力のある債務名義の正本を有しない債権者に対し配当異議の申出をした債務者は、配当異議の訴えを提起しなければならない。執行力のある債務名義の正本を有する債権者に対し配当異議の申出をした債務者は、請求異議の訴えを提起しなければならない。
 法141条および91条1項7号の規定による供託がされた場合、その供託事由が消滅したときは、執行裁判所は、供託金について配当等を実施しなければならない。

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