差押物の売却

 差押物の売却は、原則として執行官が、入札または競り売りのほか、最高裁判所規則で定める方法(特別売却、委託売却)により実施する。
 執行官は、差し押えるべき動産を評価しながら、差押えを実施するが、必要があると認めるときは、評価人を選任して差押物を評価させることができる。差押物が高価なときは、必ず評価人を選任して評価させなければならない。
 そして、評価人は、差押物を評価したときは、評価書を所定の日までに執行官に提出しなければならない。
 土地から分離する前の天然果実で、1月以内に収穫することが確実なものを差し押えたときは、収穫時期が到来した後でなければ売却してはならない。
 執行官は、売却すべき数個の動産の種類、数量等を考慮して、これらの動産を一括して同一の買受人に買い受けさせることが相当であると認めるときは、これらの動産を一括して売却することができる。
 貴金属またはその加工品は、地金としての価額以上の価額で売却しなければならない。
 法39条1項7号または8号に掲げる執行停止の文書の提出があった場合、執行官は以後の手続を停止しなければならない。しかし、執行停止によって、差押物に著しい価額の減少を生ずるおそれがあるとき、またはその保管のために不相応な費用を要するときは、執行官は、その差押物を売却することができ、その売得金を供託する。
 差押物に著しい価額の減少を生ずるおそれがあるときとは、たとえば生鮮食料品のように腐敗しやすい場合や長期間保存すると品質が変質あるいは劣化する場合などをいい、保管のため不相応な費用を要するときとは、動物の飼育や倉庫料が高額になるなど保管について荒神物の価額に比して不相当な費用がかかるときをいう。
 執行官は、法令の規定によりその取得が制限されている動産については、買受けの申出をすることができる者を所定の資格を有する者に限ることができる。
 債務者および法65条1項により買受けの申出を禁止された者は、買受けの申出をすることができない。
 買受けの申出をした者が代金を支払わなかったため、さらに差押物を売却するときは、代金を支払わなかった前の買受人は、買受けの申出をすることができない。
 動産が売却され、買受人が代金を支払ったときは、執行官は、その動産を買受人に引き渡さなければならない。その場合、その動産が執行官以外の者によって保管されているときは、執行官は、買受人の同意を得て、買受人に対し売却の事実を証する文書を交付し、かつ、保管者に対し買受人にその動産を引き渡すべき旨を通知する方法により引き渡すことができる。
 差押物について相当な方法による売却の実施をしてもなお、売却の見込みがないときは、執行官は、その差押物の差押えを取り消すことができる。

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 執行官は、差押物を競り売りの方法で売却するときは、あらかじめ競り売り期日を開く日時と場所を定めて公告し、債権者および債務者にこれを通知して、その日時にその場所で、競り売り期日を開いて売買を実施する。
 なお、不動産執行にづいては、入札が原則的売却方法とされているが、動産執行においては、その性質上、競り売りが原則的な売却方法とされている。
 執行官は、やむをえない事由がある場合を除き、差押えの日から1週間以上1月以内の日に競り売り期日を間くこととし、その日時と場所を定めなければならない。
 「やむをえない事由がある場合」とは、1週間以内の日とされるものとしては、差押物に著しい価額の減少するおそれがあるとき、またはその保存のために不相応な費用を要するとき、1月以上の日とされるものとしては、評価人に差押物の評価をさせる必要があるとき、差押物が特殊なものであって、買受希望者が現われるのを特つ必要があるとき、などである。
 競り売り期日を開く場所は、通常は、買受人はただちに代金を支払い、執行官より買い受けた動産の引渡しを受けるので、その動産の保管場所である。
 なお、執行官は、執行裁判所の許可を受けたときは、管轄区域外の場所で競り売り期日を関くことができる。
 執行官は、競り売り期日を定めたときは、所定の事項を公告し、各債権者および債務者に対し、競り売り期日を開く日時および場所を通知しなければならない。
 執行官は、競り売り期日またはその期日前に、売却すべき動産を一般の見分に供しなければならない。
 競り売り期日前に一般の見分に供する場合に、その動産が債務者の占有する建物内にあるときは、執行官は、見分に立ち会わなければならないし、それ以外の場合に、当該動産の保管者から立会いの申出があったときも、同様に立ち会わなければならない。
 買受けの申出をする者が法人である場合は、代表者の資格を証する文書を、買受けの申出をする者が代理人である場合は、代理権を証する文書を、それぞれ執行官に提出しなければならない。共同して買受けの申出をしようとする者は、あらかじめ、これらの者の関係および持分を明らかにして執行官の許可を受けなければならない。
 執行官は、法65条1号〜3号に掲げる者に対し、競り売り期日を開く場所に入ることを制限し、もしくはその場所から退場させ、または買受けの申出をさせないことができる。
 執行官は、競り売り期日を開く場所における秩序を維持するため必要があると認めるときは、その場所に参集した者に対し身分に関する証明を求めることができ、その所属する地方裁判所内で競り売りを実施する場合には、執行裁判所に対し援助を求めることができる。
 競り売り期日においては、競り売りは買受けの申出額を競り上げさせる方法で行ない、買受けの申出をした者は、より高額の買受けの申出があるまで、申出の額に拘束される。
 執行官は、買受けの申出の額が不相当と認められないかぎり、買受けの申出の額のうち、最高のものを3回呼び上げた後、その申出をした者の氏名または名称、買受けの申出の額およびその者に買受けを許す旨を告げなければならない。
 差押物の売却価額が高額になると見込まれるため、代金支払の日を定めて数個の動産を売却する場合に、ある動産の売却代金で各債権者の債権および執行費用の全部を弁済することができる見込みがあるときは、執行官は、他の動産の競り売りを留保しなければならない。
 競り売り期日において買受けが許されたときは、買受人は、代金支払の日を定められている場合を除き、ただちに代金を支払わなければならない。
 執行官は、差押物の売却価額が高額になると見込まれるときは、競り売り期日から1週間以内の日を代金支払の日と定めることができる。
 代金支払の日が定められた場合に、買受けの申出をしようとする者は、執行官に対し、差押物の評価額の10分の2に相当する額の保証を提供しなければならず、この保証金は代金に充当される。
 買受けの申出の保証は、買受けの申出をする際に、保証金等を執行官に提出する方法により提供しなければならない。
 買受人が代金支払の日に代金を支払わなかったため、さらにその差押物を売却した場合に、後の売却価額が前の売却価額に満たないときは、前の買受人が提供した買受けの申出の保証は、そめ差額を限度として売得金とされ、前の買受人は提供した保証のうち売得金とされた額に相当する部分の返還を請求することができない。
 なお、買受けの申出の保証が、銀行等が買受人のために支払保証を受託したことを証する文書を提出する方法により提供されている場合に、買受人が代金を支払わなかったときは、執行官は、その銀行等に対し、執行官の定める額の金銭を支払うべき旨を催告しなければならない。
 執行官は、差押物を入札の方法で売却するときは、あらかじめ入札期日を開く日時と場所を定めて公告し、債権者および債務者にこれを通知して、その日時にその場所で、入札期日を開いて売却を実施する。
 動産執行における入札は、差押物の評価額が高額である場合や、競り売りの方法では一般人の参加が困難であるような事情がある場合などに、行なわれる。
 入札による売却は、入札期日における手続と、競り売り期日の手続とが異なるほかは、すべて競り売りによる売却手続の場合と同様である。
 動産を売却するための入札は、入札期日に所定の事項を記載した入札書を執行官に差し出す方法により行なう。
 入札は、変更しまたは取り消すことができない。
 執行官は、入札の催告をした後20分を経過しなければ、入札を締め切ってはならない。
 執行官は、開札に際しては、入札をした者を立ち会わせなければならないが、入札をした者が立ち会わないときは、適当と認める者を立ち会わせなければならない。
 執行官は、開札が終わったとき、最高価額で買受けの申出をした入札人の氏名または名称、入札価額およびその者に買受けを許す旨を告げなければならな。
 最高の価額で買受けの申出をした入札人が2人以上あるときは、執行官は、これらの者に更に入札をさせて最高価買受申出人を定めるが、この場合、先の入札価額に満たない価額による入札をすることができない。
 この再度の入札に全員が入札しないとき、または再度の入札において最高価額で買受けの申出をした入札人が2人以上あるときは、くじで最高価買受申出人を定める。
 差押物の売却方法については、その対象物によりあるいは時代により、競り売りまたは入札以外の方法によることが適切な場合がある。そこで、現法においては、動産執行の合理化、近代化をはかり、たとえば任意売却や委託売却等ができるように、競り売りまたは入札のほか、最高裁判所規則で定める方法(特別売却、委託売却)により売却できるとされた。
 特別売却 - 執行官は、動産の種類、数量等を考慮して相当と認めるときは、売却の実施の方法を明らかにし、かつあらかじめ差押債権者の意見を聞いたうえで、執行裁判所の許可を受け、競り売りまたは入札以外の方法により差押物の売却を実施することができる。
 執行官は、執行裁判所の許可を受けたときは、各債権者および債務者に対し、その旨を通知しなければならない。
 特別売却によるのが相当である動産としては、一定の資格を備えまたは許可を受けた者でなければ買受けを許されないもの、買受人となる者が限定されているものなどである。売却の方法は、執行官が買受けの可能性がある考と個別的に交渉して売却する方法、適当な評価額で差押債権者に譲渡する方法などがとられる。
 執行官は、動産の種類、数量等を考慮して相当と認めるときは、売却を実施する者および売却の実施の方法を明らかにし、かつあらかじめ差押債権者の意見を聞いたうえで、執行官以外の考に差押物の売却を実施させることができる。
 執行官は、執行裁判所の許可を受けたときは、各債権者および債務者に対し、その旨を通知しなければならない。
 委託売却によるのが相当である動産としては、特定の専門業者に売却させたほうが、高額でかつ迅速に売却されることが期待されるものである。

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