動産に対する強制執行

 動産執行は、債権者の申立てにより、執行官が債務者所有の動産を差し押えて、これを売却し、その売得金を債権者に配当し、債権者の債権の弁済にあてようとする手続である。
 金銭債権についての動産に対する強制執行は、執行力のある債務名義の正本を有する債権者が、差し押えるべき動産の所在地を管轄する地方裁判所に所属している執行官に対し、書面によって申し立てることにより、執行機関である執行官が行なう。
 動産執行は、執行官の目的物に対する差押えにより開始される。差押えの方法は、執行官が債務者の占有する動産、債権者または提出を拒まない第三者の占有する動産を占有して行なう。執行官は、差押物を債務者、債権者または第三者に保管させ、使用を許すことができるが、これらの者が保管する場合は、封印その他の方法で表示をしたときに限り、差押えの効力がある。
 二重執行の申立てがあった場合、執行官はまだ差し押えられていない動産があるときはそれを差し押えて、そのような動産がないときはその旨を明らかにして、事件を併合し、後の申立債権は配当要求の効力を生じる。
 執行官は、入札または競り売りのほか最高裁判所規則で定める方法により、差押物を売却する。
 配当要求をずるごとができる者は、先取特権者または質権者のみで、執行官が差押物の売却代金の交付を受けるまでに配当要求をしなければならない。
 執行官は、債権者が1人である場合または売得金で各債権者の債権および執行費用の全部を弁済することができる場合には、債権者に弁済金を交付し、剰余金があれば債務者に交付する。それ以外の場合には、売得意の配当について債権者間に協議が調えば、その協議にしたがって配当を実施する。
 債権者間の配当協議が調わないときは、執行裁判所が配当表を作成し、配当を実施することになるが、配当に不服のある債権者は配当異議の申立てをした後、配当異議の訴えを提起して争うことができる。

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 動産執行の対象物は、動産(登記することができない土地の定着物、土地から分離する前の天然果実で1月以内に収穫することが確実であるものおよび裏書の禁止されている有価証券以外の有価証券を含む)である。
 民法上の動産は、原則として動産執行の対象となる。民法上の動産とは、「土地及び其定着物」以外の有体物をいう。
 庭石、石組龍、建築中の建物、立木法の立木以外の樹木、鉄塔、ガソリンスタンドの給油設備などで、土地に定着しているが登記できない物は、不動産である土地の定着物であって動産ではないが、動産執行の対象とされる。これらの物は、土地や定着性の程度や、不動産登記の対象となる構造を有しているか否かにづいて争いを生じやすく、いずれの執行手続によるべきか判断に困難な場合が多かったが、現法ではすべて動産執行によるものとされた。
 なお、未登記の立木で独立の取引価値のあるものについては、判例は立木を伐採する権利を差し押え、これを換価する方法によるべきものとし、実務上もこの取扱いに統一されていた。しかし、現法のもとで、は、立木法の立木以外の樹木の集団や個々の樹木に対する強制執行は、動産執行によるべきものとされた。しかも、個々の樹木は立木法の対象ではなく、また立木法の登記の可能な樹木の集団でも、立木法の登記を受けないかぎり独立の不動産ではないから、差押えに際して所有権の登記をすることができないので、立木法の立木以外の樹木や樹木の集団は不動産執行の対象とはならない。
 土地から分離する前の天然果実は、不動産の一部であって、独立の動産ではないが、「1月以内に収穫することが確実であるもの」は、動産執行の対象となる。
 天然果実とは「物の用方に従ひ収取する産出物」をいうが、動産執行においては、天然果実のうち土地から収穫する時期が問題となるもの、すなわち植物であって収穫を目的とするものをいう。たとえば、穀物、野菜、果物、桑菜、葉煙草などの農作物をいう。鉱物は民法上は天然果実であるが、動産執行の対象とはならない。山林の樹木は、動産執行においては、天然果実ではない。養殖他の魚、観賞用の魚などは、天然果実ではなく、民法上動産である。
 有価証券上の権利は、民法上は債権もしくはその他の財産権であるが、裏書の禁止されている有価証券以外の有価証券は、すべて動産執行の対象となる。旧法のもとでは、有価証券のうち手形・小切手等の指図証券に対する強制執行について、判例は債権執行によるべきものとし、債指差押命令に加えて執行官による手形等の占有を、債権差押えの効力要件としていた。しかし、学説は動産執行によるべきであるとし、解釈に対立があったが、現法では動産執行の方法によることとした。
 有価証券とは、私法上の財産権または財産的利益を受ける地位を表象する証券であって、その権利の移転および行使に証券の占有を必要とするものをいう。たとえば、株券、公・社債券、投資信託受益証券、新株引受権証書、手形・小切手、貨物引換証、倉荷証券、船荷証券、抵当証券などである。銀行預金証書、質札、鉄道荷物引換証のような単なる免責証券、借用証書、信用金庫の出資証券などの単なる証拠証券は、有価証券ではない。収入印紙、郵便切手のように、証券自体が特定の金銭的価値を有する金券は、民法上の動産であって有価証券ではない。金銭、すなわち日本国内において強制通用力を有する本邦通貨も、有価証券ではなく、民法上の動産である。
 なお、無記名債権たる有価証券、たとえば商品券、乗車券などは、民法上も動産とされている。
 船舶は、民法上の動産であるが、総トン数20トン以上の船舶(端舟その他ろかいまたは主としてろかいをもって運転する舟を除く)に対する強制執行は、動産執行の対象とはならず、不動産執行に準じた船舶執行によって行なわれる。
 船舶のうち動産執行の対象となるものは、総トン数20トン未満の船舶および20トン以上でも端舟その他ろかいのみをもってまたは主としてろかいをもって運転する船である。製造中の船舶は、差し押えても所有権保存登記ができないから、船舶執行の対象とはならず、動産執行の方法による。
 登録自動車は、民法上は動産であるが、強制執行は不動産執行に準じた自動車執行の手続によって行なわれ、動産執行の対象とはならない。
 自動車のうち動産執行の対象となるものは、自動車登録ファイルヘの登録から除外されている軽自動車、小型特殊自動車および二輪の小型自動車ならびに登録を受けていない自動車である。
 なお、大型特殊自動車で建設機械となるものは、自動車執行から除外され、建設機械執行の対象とされている。
 既登記の建設機械は、民法上は動産であるが、強制執行は自動車執行の手続に準じて行なわれ、動産執行の対象とはならない。
 建設機械のうち動産執行の対象となるものは、登記していない建設機械である。
 新規登録を受けた飛行機および回転翼航空機は、民法上は動産であるが、強制執行は船舶執行に準じた航空機執行の手続によって行なわれ、動産執行の対象とはならない。
 航空機のうち動産執行の対象となるものは、滑空機および飛行船その他政令で定める航空の用に供することができる機器ならびに登録を受けていない飛行機および回転翼航空機である。
 動産であっても、それが複数の者の共有に属し、その共有持分を強制執行の対象とする楊合は、動産執行によるごとは許されず、その他の財産権に対する執行の対象となる。

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