債権執行による回収

 差押債権者は、第三債務者に対し、支払を求めることができる。この支払を受けたときは、請求債権は弁済されたものとみなされ、他の債権者は執行に参加できない。第三債務者が支払をしないときは、差押債権者は、取立訴訟を提起し、他の債権者の関与を排除できる。差押債権者が第三債務者から取立てをしたときは、執行裁判所に取立居を提出する。この取立届の提出は、執行裁判所に対する結果の報告であって、従来のような配当要求の終期を定める届出ではない。差押債権者は、他の債権者を排除するため、転付命令を得て、被差押債権を自己に移転することもできる。
 現法においては、第三債務者は、単独の差押えがあったときでも、被差押債権の全額を履行地の供託所に供託をすることができる。単独の仮差押えの場合も、同様である。従来の供託実務上は、差押えまたは仮差押え自体は、弁済供託事由には該当しないとして取り扱われ、差押債権者が取立てを怠った場合または仮差押えの場合等には、第三債務者は、弁済はもちろん、供託もできず、支払の意思はありながら遅延損害金を支払わざるをえないという不利益があった。そこで、現法は、差押えまたは仮差押え自体を執行供託の事由とし、第三債務者の不利益を解消した。差押債権者は、被差押債権の一部に差押えがあったときでも全部につき供託ができる。第三債務者が供託をしたときは、供託書正本を添付して、執行裁判所に差押債権者、債務者の氏名等を記載した事情居を提出することを要する。
 第三債務者の供託があったときは、執行裁判所は、差押債権者に請求債権額の支払委託をし、残余は債務者に支払委託をする。

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 執行競合のあるとき、差押債権者は、第三債務者に支払を求めることはできず、また、転付命令による回収もできない。執行競合のあるときは、第三債務者は、供託をしなければならない。従来のように、取立命令を有する差押債権者の一人に弁済することは許されない。供託をした第三債務者は、供託書正本を添え、執行裁判所に事情届を提出しなければならない。
 第三債務者が供託をしないときは、差押債権者は、第三債務者に対し、供託の方法による支払を求める訴訟を提起できる。この訴状が第三債務者に送達された時以降は、配当にあずかれる債権者は確定する。供託の方法による支払を求める訴えの被告となった第三債務者は、受訴裁判所へ、他の債権者で訴状の送達の時までに被差押債権を差し押えた債権者に対し、共同訴訟人として原告に参加すべきことを命ずる旨の命令の申立てをすることができる。供託の方法による支払を求める判決の効力は、受訴裁判所が参加すべきことを命じた差押債権者で参加しなかったものにも及ぶ。供託の方法による支払を求める訴訟で、差押債権者勝訴のときは、受訴裁判所は、判決の主文で供託の方法により支払をすべき旨を命ずるが、この判決に基づき第三債務者の財産を換価し、または第三債務者の財産の換価手続に配当要求をした場合には、その判決の原告に支給すべき配当の金銭については、執行機関が供託するものどされる。
 執行裁判所は、第三債務者の供託または法157条5項の規定による供託がされた場合、売却命令による売却がされた場合は、配当を実施するが、この配当手続は、不動産に対する強制執行における配当手続の規定が準用されている。
 債権執行によって請求債権を回収する場合の原則は、被差押債権の実質的価値を的確に判断し、他の債権者の参加を排除して、迅速に被差押債権の取立てを行なうことである。
 債権は、不動産・動産と異なり、第三債務者の資力および弁済の意思により、その実質的価値が左右されるので、これらを調査することはきわめて重要である。第三債務者の資力は、外部から執行前に一応の調査をすることができる。しかし、第三位務者の弁済の意思は、直接第三債務者に確認しなければ知ることができないが、執行の申立て前にこの確認をすれば、債務者と通謀され、差し押えるべき債権が処分されるおそれがある。そこで、差押え後、第三債務者の陳述催告の回答書で弁済意思を確認することになるが、この結果被差押債権が存在していないとき、あるいは、存在していても正当な理由で第三債務者に弁済の意思がないときは、被差押債権の執行による回収はあきらめ、他の執行による回収を図るべきである。
 第三債務者の回答の結果、他の債権者の差押えまたは仮差押えの先行の事実が判明したときは、転付命令の申立てはできないので、他の債権者の今後の執行参加を防ぐため、第三債務者に供託を求め、これに応じないときは、必要に応じ供託の方法による支払を求める訴訟を提起することを検討すべきである。
 わが国の強制執行では、債権者平等主義を採用しているため、債権執行においても、他の債権者が執行に参加した場合は、差押債権者への配当が減少するという結果になる。そこで、差押債権者としては、他の差押債権者の参加を排除できる方法により、債権執行を追行すべきである。このためには、差押債権者は、まず、転付命令の利用を検討する。第三債務者の資力があるときは、差押命令の申立てと同時に転付命令を申し立てる。第三債務者の資力が差押命令の申立て時に不明のとき、従来は、転付命令の送達と同時に執行が完了し、転付債権者は、第三債務者の資力についての危険を負担していた、したがって、差押債権者は、この危険を回避するため、差押えおよび取立命令を同時に申請し、第三債務者の資力ありと判明すれば、取立命令を取り下げ、同時に転付命令を申し立てていた。しかし、現法のもとでは、第三債務者の資力が不明のときであっても転付命令は送達と同時に確定せず、執行は終了しないから、差押えおよび転付命令を同時に申し立て、転付命令の確定前に、第三債務者の資力を調査し、資力なしと判明すれば、転付命令の申立てを取り下げることも可能になった。
 債務者の資力が不十分のときは、差押命令を得た後に、他の債権者を排除する必要があれば、第三債務者に支払または供託を求め、これに応じないどきは、取立訴訟を提起することも検討されることになろう。
 転付命令の確定が債務者の執行抗告により、日時を要する見込みのときは転付債権者は、差押命令に基づきレ取り立てることもできるので、被差押債権を迅速に回収することも可能である。

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