差押命令

 差押命令の申立てがあると、執行裁判所は、申立ての方式、申立人の資格の有無を確認し、被差押債権を特定して差押命令を発令し、この差押命令によって債権執行は開始する。差押命令において、執行裁判所は、債務者に対しては債権の取立てその他の処分の禁止を命じ、第三債務者に対しては債務者への弁済の禁止を命ずる。
 執行裁判所は、差押命令を発する際に、申立ての方式等の審査をするが、前述のとおり、被差押債権の存否、額について判断することなく、申立人の申立てどおりに被差押債権が存在するものとして差押命令を発し、債務者および第三債務者の審尋はなされない。
 差押命令は、債務者と第三債務者に送達されるが、第三債務者に送達された時に差押えの効力が発生する。

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 執行裁判所は、差押命令において、債務者に対し、債権の取立てその他の処分を禁止し、第三債務者に対し、債務者への弁済の禁止を命ずる。
 債務者が差押命令に反して、枝差押債権を譲渡したり、免除したりしても、その債権執行手続が存続している間は、譲渡等がないものとして、手続は進められる。したがって、被差押債権が差押え後に譲渡されたとき、他の債権者は、差押命令の申立てはできないが、配当要求をすることができる。
 第三債務者が差押命令に違反して、被差神債権を債務者に弁済したときは、債務者に対しては弁済は有効であるが、差押債権者には対抗できず、差押債権者は、被差神債権が存在するものとして、取立て等の手続を進めることができる。
 差押債権者は、債務者に対して差押命令が送達された日から1週間を経過したときは、被差押債権(金銭債権)を取り立てることができる。従来、差押債権者は、被差押債権を取り立てるためには、取立命令を得る必要があったが、現法では取立命令の制度を廃止し、差押命令に取立権が付与された。また、現法は、従来の取立権の内容につき、以下の3点の重要な改正をしている。
 従来は、取立命令が債務者および第三債務者に送達されたときは、差押債権者はただちに被差押債権を取り立てることができたが、現法では、債務者に対して差押命令が送達された日から1週間経過しないと、被差押債権を取り立てることができない。これは、債務者に対し、差押命令に対する執行抗告の準備期間を与え、債務者を保護しようとするものである。差押命令が債務者および第三債務者に送達されたときは、裁判所書記官は差押債権者に対し、送達の年月日を通知することになっているので、差押債権者はこの通知により、いつ取立権が発生したかを知ることができる。
 差押債権者が第三債務者より支払を受けられるのは、執行競合のないときに限られる。従来は、執行競合の状態にあっても差押債権者は取立命令に基づき、被差押債権を取り立てることができた。現法では、執行競合の状態にあれば、第三債務者は必ず供託をしなければならないので、差押債権者は、第三債務者より支払を受けられない。なお、差押債権者が支払を求める場合、印鑑証明書、実印の押捺された領収書および前述の差押命令が債務者等に送達された旨の通知書を用意する必要がある。
 差押債権者は、第三債務者が支払をしないときは、取立訴訟を提起できるが、取立訴訟の訴状が第三債務者に送達された時以降は、他の債権者は被差押債権の執行に参加して、配当を受けることができない。取立訴訟を提起した差押債権者がこのように有利に取り扱われるのは、従来、取立訴訟を提起して第三債務者より支払を受けるべく努力した差押債権者であっても取立届を裁判所に提出するまでに、他の債権者が執行に参加すれば配当は他の債権者と平等であって、訴訟を提起した差押債権者に不利すぎたためである。執行競合のある場合、差押債権者は第三債務者に対し、供託の方法による支払を求める訴えを提起できる。
 差押命令は、枝差押債権の表示の項で説明したように、請求債権額を超える被差押債権の全部について発せられるが、この場合、差押債権者は、請求債権額の限度でしか第三債務者より支払を受けることはできない。
 債権者が第三債務者から支払を受けたときは、請求債権は支払を受けた額の限度で弁済されたものとみなされる。差押債権者は、この支払を受けたときは、ただちに、その旨を執行裁判所に届け出なければならない。この取立届には、差押命令の事件番号、債務者および第三債務者の氏名または名称、第三債務者から支払を受けた額および年月日を記載しなければならない。
 なお、差押債権者が取立権の行使を怠ったことにより、債務者に損害を与えたときは、債務者に対し損害賠償をしなければならないので、差押債権者は、善良な管理者の注意義務をもって、取立てをすることを要する。
 被差押債権が抵当権等によって担保されているとき、抵当権等は被差押債権の従たる権利であるから、被差押債権に対する差押えの効力は、その抵当権等にも及ぶ。現法は、この理論を前提として、抵当権等の差押えの効力を第三者に対抗するため、登記または登録のされた先取特権、質権または抵当権によって担保される債権に対する差押命令が効力を生じたときは、裁判所書記官は、差押債権者の申立てにより、その債権につき差押えがされた旨の登記等を嘱託しなければならないと定める。
 この債権者の申立ては、差押登記記入嘱託の申立てと呼ばれる。この申立書には、印紙を貼付する必要はないが、差押登記嘱託書に被差押債権額の1000分の4に相当する印紙を貼付する必要があり、差押債権者は、この印紙および嘱託に要する郵券を執行裁判所に提出しなければならない。このほかに、差押債権者は、差押登記嘱託書に使用される登記嘱託のための権利者・義務者目録を用意する。
 抵当権等に差押えの効力が及ぶ場合は、債務者は当該抵当権等の実行ができなくなり、差押債権者が抵当権等を実行し、被差押債権を取り立てることができる。
 差押債権者が被差押債権を取り立てるとき、債権証書を所持しているほうが取立てが容易であるため、被差押債権について証書があるときは、差押債権者は、債務者にこの証書の引渡しを請求できる。債務者が引き渡さないときは、差押債権者は、動産の引渡しの強制執行の方法により、証書の引渡しを受けることができる。この証書の例として、借用証、契約書、郵便貯金証書、預金証書、債務名義、供託書などがある。なお、証書の取上げは、差押債権者の取立権の発生前でも行使できる。
 差押債権者が給料の差押えをする場合、給料の支払のあるごとに差押えをすることは手数がかかり、合理的ではない。そこで、差押債権者が給料または給料と同じように継続的に収入がある債権を差し押えたときは、請求債権を限度として、差押えの後に債務者が受けるべき収入についても、差押えは効力は及ぶとされる。この規定は、差押債権者が満足を受けるまで差押えの効力は存続すると解釈されるので、配当要求があると、その分だけ差押えの効力が存続する。
 給料債権、賃料債権は継続収入債権の代表例であるが、このほかにも継続的供給契約による運賃借権、定期的に行なわれるビルの清掃料請求債権、弁護士・税理士の顧問料債権等継続収入の基礎となる基本契約があり、かつ、将来定期的に一定量の収入があることが過去の実績等からして確認できる場合に限り、実務上継続収入債権として取り扱われる。

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