不動産の強制競売の申立て

 不動産の強制競売は、債権者による強制競売の申立てによりその手続が開始され、不動産の現況調査・評価のうえ不動産を売却し、その代金を債権者に配当することによってその手続を終了する。
 従来は、不動産の強制競売と担保権実行としての不動産競売は、その法体系を異にしていたが、現法においては両者を統一して規定した。そこでは、強制競売の規定がほぼ競売に準用されており、競売手続の説明が強制競売の説明にほぼ妥当する。
 強制競売は、債権者の強制競売の申立てによって開始されるが、申立てには、書面すなわち強制競売の申立書を執行裁判所に提出することを要する。申立ての方式および添付書類については、民事執行法にはなんらの規定がなく、すべて民事執行規則に委ねられている。

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 強制競売申立書には次の事項を記載することを要する。
 債権者、債務者ならびに代理人の表示、債務名義の表示、強制執行の目的とする財産の表示、金銭の支払を命ずる債務名義にかかる請求権の一部について強制執行を求めるときは、その旨およびその範囲。
 この申立書の記載事項は、各強制執行手続に共通であるから、ここでは特に不動産の強制競売で注意すべき点のみを述べることとする。
 まず、債務者の表示は、誰に対する強制競売を申し立てているのか明らかにするためのものであり、氏名とともに住所をも表示する必要があるが、不動産の強制競売にあっては、差押登記の嘱託をする関係上、登記簿謄本または物件所有証明書に表示されている住所・氏名と一致する必要がある。したがって、登記簿謄本または物件所有証明言上の住所に変吏があったときは、新旧両住所を記載する必要がある。
 次に、競売に付すべき財産(不動産)の表示については、登記されている場合には登記簿の表示に従うこととするが、現況が異なるときは、登記簿の表示とともに現況を表示する。ただし、現況が登記簿の表示とかけ離れ不動産としての同一性に疑いがもたれる場合には、債務者に代位して表示の変更登記のうえ強制競売の申立てをすべきものといえよう。なお、未登記の不動産については、物件所有証明書の記載のとおり表示するが、職権で保存登記をする関係上不動産の表示の箇所に未登記である旨を付記しておくことが望ましい。
 不動産の強制競売申立書には、次のような書類の添付を要する。
 執行力ある債務名義の正本、登記された不動産については登記簿謄本および登記用紙の表題郎に債務者以外の者が所有者として記載されている場合にあっては、債務者の所有に属することを証する文書、登記されていない土地または建物については、債務者の所有に属することを証する文書および不動産登記法101条2項に規定する図面、土地については、その土地に存する建物および立木法1条に規定する立木の登記簿謄本、建物または立木については、その存する土地の登記簿謄本、不動産に対して課される租税その他の公課の額を証する文書。
 この添付書類は、執行力ある債務名義の正本のほかは、担保権実行としての不動産競売と同じである。
 不動産強制競売には、超過換価禁止の原則はあるが、動産執行、債権執行においてとられている超過差押えの禁止はされていないから、債権者は多数の不動産につき強制競売の申立てをすることができる。
 申立てが不適式なための却下の裁判に対しては、執行抗告ができるものとされている。しかし、開始決定に対しては執行抗告は許されず、執行異議あるいは売却拒否の決定に対する執行抗告で争うこととなる。
 執行裁判所は、債権者からの強制競売の申立書が提出されたときは、その申立てが要件に合致しているか否かを審査して、適式であれば申立てを認容して開始決定をし、不適式であればこれを却下する。この審理・裁判とも執行力ある債務名義の正本の審査を除き、競売におけると同様である。したがって、ここでは執行力ある債務名義の正本についてのみ説明する。
 強制競売では執行力ある債務名義の正本の提出・交付が要件であるから、この提出・交付がなければ申立てを却下する。もし、この提出・交付があったときは、さらに、執行力があるか否か、執行文については執行文の付与の権限を有する者により適法に付与されたものかどうか、申立書の債権者・債務者の表示が執行文の表示と同一かどうかを審査し、これらの点が不適格ならば申立てを却下する。
 強制競売の申立てが適格であれば、執行裁判所は強制競売の開始決定をすることになるが、開始決定には、当事者の氏名・住所、不動産の表示、請求金額、執行しうべき一定の債務名義、代理人の表示、不動産について強制競売をなす旨、債権者のために不動産を差し押える旨の宣告、年月日を記載し、裁判官が記名・押印する。
 開始決定は、職権で債務者に送達される。債権者にも送達されるが、これは要件ではない。なお、すでに強制管理が開始されていれば、差押債権者、管理人にも通知される。
 開始決定によって差押えの効力を生ずるが、その差押えの効力は、開始決定が債務者に送達された時に生ずる。ただし、差押えの登記がその開始決定の送達前になされた場合は、登記がされた時に差押えの効力を生ずる。この点は、旧法のもとでも同様に考えられていたが、明文をもって明らかにした。なお、実務では、嘱託登記後に送達することになろう。
 強制競売の開始決定には、前記のとおり債権者のために不動産を差し押える旨を宣言するが、これによって差押えの効力が生ずる。差押えは、競売におけると同様、処分禁止の効力を生じ、差押え後の処分は、その手続の関係においては、すべての債権者との関係においても無視されることになる。たとえば、甲のために競売開始決定がなされ、その後乙が抵当権設定登記を経ても乙が甲に優先しないのはもちろん、乙の抵当権は他の債権者との関係でも無視されることになる。
 強制競売の開始決定がなされたときは、裁判所書記官は、ただちにその開始決定にかかる差押えの登記を嘱託しなければならない。登記官は、差押えの登記をしたときは、その登記簿の謄本を執行裁判所に送付しなければならない。この差押えの登記によって第三者に対しても処分禁止の効力を対抗できることになる。

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