不動産執行の対象

 民法上不動産とは、土地およびその定着物をいうとされているが、民事執行上の不動産執行の対象となるものは、民法の規定する不動産とは異なる。
 すなわち、まず、土地の定着物のうち登記することができないものについては、不動産執行によらず、動産執行によるものとされている。これは、競売開始決定に基づき差押えの登記をすることとなっている関係からである。また、法43条2項は、不動産の共有持分、既登記の地上権、永小作権ならびにこれらの権利の共有持分は、不動産とみなすこととしている。しかし、他方登記されていない地上権、永小作権ならびにそれらの共有持分に対する強制執行は、不動産執行としてではなく、その他の財産権に対する強制執行として行なうこととなる。これは、不動産登記法104条により土地、建物およびこれらの共有持分については、未登記のものでも差押えに際して所有権の登記をすることができるが、未登記の地上権、永小作権については、このような取扱いをすることができないからである。
 なお、特別法によって不動産とみなされる立本法に基づく登記をした立木、工場財団、鉱業財団、漁業財団は、不動産執行の規定が適用され、そのほか地上権に関する規定が準用される採石権、土地に関する規定が準用される鉱業権についても同様となる。しかし、鉄道財団、軌道財団、運河財団に対する執行は、鉄道抵当法の規定またはその準用規定によって行なわれるので、不動産執行によらないことになる。

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 不動産執行の執行機関は裁判所で、不動産の所在地、不動産の共有持分、登記された地上権、永小作権ならびにこれらの共有持分については管轄登記所の所在地を管轄する地方裁判所が執行裁判所となる。
 建物が数個の地方裁判所の管轄区域にまたがって存在する場合には、その建物に対する強制執行は、建物の存する土地の所在地を管轄する各地方裁判所が執行裁判所となり、その各土地に対する強制執行については、当該土地の所在地を管轄する地方裁判所または建物に対する強制執行の申立てを受けた地方裁判所が執行裁判所となる。しかし、強制執行の申立てが二つ以上の地方裁判所に係属することも考えられ、そのような場合別々の手続を進めることは、権利関係を複雑化することにもなり、また執行手続をどちらの裁判所が行なうかによって執行手続関与者に大きな影響があるとも考えられないので、必要と認めるときは執行裁判所は他の管轄裁判所に移送することができるとするとともに、移送の決定に対しては、不服申立てを許さないものとした。なお、当事者は、執行裁判所の職権発動を促すため移送の申立てをすることができる。
 債権者が、債務者所有の不動産から債権の回収をはかる方法としては、不動産の換価価値に着目して行なう方法と、収益権能に着目して行なうものとの二つがある。前者が強制競売であり、後者が強制管理である。
 強制競売は、債務者所有の不動産を差し押え、これを売却し、その売得金をもって債権者の債権の弁済にあてる方法であり、不動産執行の中心をなすものであるが、多数の配当要求が予想されるとき、不動産の値上りが予想されるときなどは必ずしも債権者にとって有利ではない。
 強制管理は、債務者所有の不動産を差し押え、管理人にこれを管理させ、その不動産から得る収益(天然果実、法定果実)をもって債権の弁済にあてる執行方法である。
 民事執行法は、不動産に対する強制執行について、強制競売、強制管理の二つの執行方法を認め、かつ、この二つの執行方法を併用しうるものとしている。
 したがって、債権者は、自己に有利な方法を選択し、どちらか一方を、または二つの方法を同時にあるいは時を異にしてすることもできる。たとえば不動産の値上りが期待できるときにまず強制管理を行ない、その後に強制競売を申し立てるなどである。

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