強制執行への異議

 強制執行については、債権者、債務者それぞれの立場から種々の救済方法が定められているが、現法は、旧法と異なり、抗告の濫用を防止することを目的として、民事執行の手続に関する裁判に対しては特別の定めがある場合のみ執行抗告ができるものとした。旧法は、執行裁判所のなす決定、命令に対しては、すべて即時抗告ができることを原則としていたが、競売ブローカーや債務者の作為的な執行妨害がなされていたので、旧法の抗告手続と異なる執行抗告の制度を規定したのである。
 この制度は、執行停止の制限規定と同じく、債権者の権利実現のため、執行手続の適正を保障しようとしたことによるものである。
 現法で執行抗告ができる主な裁判としては、次のようなものがある。
 原裁判所のした執行抗告却下決定、民事執行の手続の取消決定、民事執行の手続を取り消す執行官の処分に対する執行異議の申立てを却下する裁判、執行官に民事執行の手続の取消しを命ずる決定、費用不予納による申立却下決定、執行費用額の確定決定の申立てについての決定、強制競売の申立却下の裁判、続行申立却下決定、配当要求却下の裁判。
 そのほかにも執行抗告ができる場合があるが、いずれも法文上明らかにされている。執行抗告ができる以外の執行裁判所の執行処分については、執行異議のみを認めることになる。

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 執行抗告は、裁判の告知を受けた日から1週間の不変期間内に抗告しなければならない。この不変期間については、法20条により準用される民事訴訟法158条2項(不変期間と付加期間)と159条(不変期間と追完)の会規定が準用されている。
 執行抗告をすることができる者が、裁判の告知を受けるべき者でないときは、その者に対する提起期間は、その裁判の告知を受けるべきすべての者に告知された日から進行する。
 執行抗告は、旧法と異なり、必ず書面を原裁判所に提出してしなければならない。この抗告状には、原裁判の政府しまたは変更を求める事由を具体的に記載しなければならず、その事由が法令の違反であるときは、その法令の条項または内容および法令に違反する事由を、その事由が事実誤認であるときは、誤認の事実を具体的に摘示しなければならない。抗告状に執行抗告の理由の記載がないときは、抗告人は抗告状を提出した日から1週間以内に、執行抗告の理由書を原裁判所に提出することを要する。
 もしも抗告人が執行抗告の理由書を法定期間内に提出しなかったとき、または前記記載方法に基づく理由が記載されていなかったとき、あるいは法定期間内(1週間)に抗告状が提出されたがその不備を補正することができなかったときには、原裁判所は、執行抗告を却下する。
 執行抗告は、旧法の即時抗告と異なり、執行停止の効力を有していないので、執行停止をするためには、抗告裁判所または原裁判所に、原裁判の執行停止または執行手続の全部もしくは一部の執行停止の処分の申立てをしなければならない。これらの停止決定に対しては、不服申立てができない。
 執行抗告につき確定しなければ効力を生じない旨の裁判、すなわち売却許否決定、不動産引渡命令(法83条4項・5項)などに対する執行抗告があり、それに対して抗告裁判所の裁判があった場合においては、その抗告裁判所の裁判に対し再抗告ができ、この再抗告がされると効力の確定が遮断される。また、強制管理の開始決定や債権差押命令などに対する執行抗告があり、それに伴って原裁判の執行停止決定がなされている場合には、抗告裁判所の裁判があっても再抗告があったときには、再抗告裁判所の決定があるまでは、執行停止の効力が持続すると解される。
 執行抗告があったとき、抗告裁判所は、抗告状または執行抗告の理由書に記載された理由に限り調査すれば足りる。ただし、抗告裁判所は、原裁判に影響を及ぼすべき法令の違反または事実の誤認の有無につき職権で調査することができる。
 執行抗告のできる執行裁判所の裁判については、確定した場合であっても、民事訴訟法420条に定める再審事由があるときは再審抗告をすることができる。この場合には、民事訴訟法420条〜428条の規定に準じて手続が行なわれる。
 なお、執行抗告に対しても民事訴訟法の規定の準用があるので、性質に反しない限り抗告手続が準用になる。すなわち、前述した再抗告や再度の考案の規定が準用される。
 執行裁判所は、執行抗告があった場合でも、執行事件記録を送付する必要がないと認めたときは、抗告事件の記録のみを抗告裁判所に送付すれば足りる。この場合において、抗告裁判所が、執行記録が必要であると認めたときは、執行裁判所にその記録の送付を求めなければならない。
 現法は、前述したように、執行手続の取消決定等の裁判により、執行手続が結了する執行処分については、一般的に執行抗告を認めている。
 すなわち、民事執行の手続を取り消す決定、たとえば、不動産の滅失等による強制競売の手続の取消し決定、剰余を生ずる見込みのないときの強制競売の手続の取消し決定等に対しては執行抗告ができるものとしている。このような執行抗告ができる裁判は、その手続を終結させるのに形成的かつ重要な裁判であるため、抗告期間中や抗告している期間中は効力は生じないものとし、確定することによってその効力を生ずるものとしたのである。
 さらに、執行官が執行機関となり執行手続を進める動産執行において、執行官が超過差押えの禁止により差押えを取り消す処分や、剰余を生ずる見込みのない場合の差押禁止により差押えを取り消す処分に関しては、執行異議の申立てをすることができるものとされているが、その執行異議の申立てを却下し、またはこれを認容する裁判に対しても執行抗告ができるものとしている。
 この場合における執行異議の申立てを却下した裁判も確定しなければ効力を生じない。
 なお、執行手続を取り消す決定でも、執行取消文書の提出によるものについては、執行抗告を認めないため、法12条の適用はない。このような場合には、執行異議の申立てによることになる。
 現法は、民事執行の手続に関する執行裁判所のした裁判に対しては、特別の規定がある場合に限り執行抗告によることを認め、それ以外の場合には、執行裁判所に対する執行異議の申立てを認めている。すなわち、執行裁判所の執行処分のうち執行抗告の認められないもの、ならびに執行官の執行処分およびその遅滞に対しては執行異議の申立てができる。たとえば、執行裁判所のする最低売却価額の決定、物件明細書作成、売却方法の指定や、執行官のする動産執行における差押えまたは執行官がなすべき執行処分を行なわない場合には、執行異議の申立てによってその是正を求めることになる。
 執行異議の異議の理由としては、執行手続上の手続的瑕疵に限られ、実体上の理由を主張して執行異議の申立てをすることはできない。債務名義の形式的無効、不送達、弁済期の来到来、執行停止命令の無視、執行裁判所の許可なしに行なわれた夜間・休日執行、差押禁止財産の差押えの場合や第三者がその占有物を承諾なしに差し押えられた場合には、いずれも執行異議の申立てをすることができる。
 債務名義の表示する請求権の不成立、無効、消滅を理由として執行異議の申立てをすることはできない。これらは、後述の請求異議の訴えによるべきことになる。
 担保権の実行手続の場合には、担保権の不存在ならびに消滅を事由にして執行異議の申立てをすることができる。この場合には、開始決定に対する執行異議、動産差押えに対する執行異議、債権差押えに対する執行異議等について、それぞれ担保権の不存在、消滅等の実体上の理由に基づき執行異議の申立てをすることができる。
 執行異議の申立てがあっても執行停止の効力を有しないが、執行裁判所は、執行異議についての裁判の効力を生ずるまでの間執行停止等の裁判をなすことができる。
 現法においては、執行異議の申立ては、書面によってなすことを要する。ただし、この申立てを執行裁判所の期日においてするときは、口頭をもってすることが許され、この場合、裁判所書記官が期日調書を作成し、その旨記載する。
 執行異議の申立てをなすときは、異議の理由を明らかにしなければならない。

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