仮登記担保の本登記手続き

 仮登記担保権の実行は、清算期間が満了した後その仮登記を代物弁済等を原因として所有権移転の本登記をすることにより完了することになる。ただ、法がこの仮登記担保の性質を原則として帰属清算型とみたところから、清算金の生ずるときは、その清算金の支払が本登記請求権の行使と同時履行の関係に立つと定められ、しかも後順位担保権者などの利益を保護する目的で、清算金支払前に目的物件について差押えがあると、その本登記請求権も消滅すると定められている。そこで、仮登記担保権者が現実に実行手続に入っても、本登記により完全に目的物件を取得できるには、次の手続が必要である。

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 法は、(1)目的物件に対して差押えがあり、それが清算金の支払前の申立てによるものであったとき、(2)目的物件の所有権者が会社更生手続に入ったとき、(3)仮登記担保が根担保である場合に、その所有権者が破産手続に入ったときには、仮登記担保権者は本登記をすることはできないとしている。そこで、仮登記担保権者は、本来は清算期間を満了することにより、本登記請求権が発生するはずであるが、上記の場合だけは、たとえ清算期間を満了しても、本登記することはできない。
 ただ、仮登記担保権者は本登記請求権は失っても、(1)の場合にはその競売手続に対して債権届することにより、順位による配当を受ける権利が認められ、(2)の場合には更生担保権が認められることによってその権利の保護がはかられている。しかし、根仮登記担保の場合には、(1)、(2)の場合はもちろん(3)の場合においても仮登記担保権の効力が否定されているので、本登記請求権はもちろん、いっさいの権利が否定されることになる。
 なお、(2)と(3)の場合で目的物件の所有権が担保提供者から第三収得者に変わっていたとき、現所有権者の更生、破産を基準にすべきか、提供者を基準にすべきかについては、学説上意見が分かれているようである。
 以上の例外を除き、清算期間を満了した時点において、(1)目的物件の所有権が仮登記担保権者に移転し、(2)目的物件の価値相当額だけ被担保債権が消滅するという効果を生ずる。(3)もちろん被担保債権が目的物件の価値以内の額であれば、その債権全額が消滅し、残金は清算金支払債務の発生となる。
 目的物件の所有権が仮登記担保権者に移転すれば、当然に仮登記担保権者は提供者に対して本登記請求権を取得することになるが、ただ前記(3)の清算金支払債務の発生している場合は、法は特に提供者の利益を保護する目的で、これに同時履行の抗弁権を認めている。
 なお、このときの清算金の支払債務の相手方、すなわち本登記請求権の相手方は、清算期間満了時の登記簿上の所有権者ではなく、提供者であるから注意を要する。
 代物弁済の目的となる物件の価額から被担保債権の額を控除したのが清算金の額であり、被担保債権の額から目的物件の価額を控除したのが代物弁済後の残債権となるのであるが、その目的物件の価額とは、必ずしも仮登記担保権者の実行通知に記載された目的物件の見積額のことではない。代物弁済時の目的物件の正常価値である。
 ただ、その正常価額が仮登記担保権者の見積価額以下になるということを、仮登記担保権者から主張することが禁止されているので、正常価額がその見積額以上にあると争えるのは、提供者側だけということになろう。
 この争いは、最終的には法廷の判決以外に決められないことになろうから、争いになればその判決によりはじめて清算金の額や残債権の額も決まることになる。
 清算期開か満了した時点で、被担保債権の額が目的物件の価値以上にあれば、清算期間の満了により所有権が仮登記担保権者に移転し、提供者に対しただちに所有権移転の登記をするよう請求する権利が生じ、目的物件の価値が大きいときは、清算金の支払と引換えに登記するよう請求する権利が生ずる。
 この登記は、登記の原則から、提供者と仮登記担保権者の共同申請によることになる。その場合の登記原因の年月日は、清算金の有無にかかわらず常に清算期間の満丁日となる。たとえ清算金の支払を要する場合でも提供者が承諾すれば、清算金の支払前に本登記をしても有効である。
 本登記の申請には、利害関係人がある場合は、その者の承諾宵の添付が必要である。この利害関係人とは、仮登記を本登記することによって抹消される運命にある登記権利者のことで、前述の後順位担保権者に該当する者と、それ以外の利害関係人に該当し、実行通知を要する者のことである。この承諾書には印鑑証明、および法人の場合はその資格証明も添付しなければならない。
 ただし、法は特にこの清算金に対して物上代位権により差押えをした後順位担保権者の承諾書は、差押命令の事実と供託の事実を証する書面を添付すれば必要ないとしている。
 利害関係人が、物上代位の差押えも競売の申立てもせず、清算期間を経過したにかかわらずその承諾書の提出を拒んでいるときは、仮登記担保権者は、本訴により承諾を求め、判決を受ける以外にない。
 仮登記担保権者は、清算金の生ずる場合には、それを提供者に支払うのと引換えに本登記をするよう提供者に請求することができるが、この清算金の支払前に後順位担保権者から物上代位権により差押えがあると、それは提供者に支払うことはできなくなる。
 そこで、提供者に本登記するよう請求できるのは、その清算金を差押債権者に支払うか、差押債権者のために供託してからということになる。
 この供託は、供託書により仮登記担保権者の単独申請によって申請することができる。添付書類としては資格証明、委任状等が必要になる。
 仮登記担保権は、清算金の生ずる場合はその支払(供託)以前、清算金の生じない場合はその清算期間満了以前に申立てのあった強制執行の開始決定があったり、滞納処分による差押えがあると、それによって本登記する権利が失われる。そして、それが根担保的な仮登記担保である場合には、それによりいっさいの権利を失うこととなり、特定債権を担保するものである場合には、その競売手続に参加することによって、登記された順位により売却代金から配当が受けられることになる。
 この競売手続への参加は、開始決定により仮登記担保権者へ裁判所から通知がなされるので、その通知に基づき執行裁判所へ債権届をするだけで足りる。
 提供者が破産宣告を受けると、根仮登記担保はいっさい失権してしまうが、それが特定債権の仮登記担保であれば、その権利は別除権とみなされるので、管財人を相手に実行通知をし、清算期間満了を待って、一般の手続にしたがって管財人から本登記を受ければよい。
 特別清算、和議手続に入った場合も破産手続において別除権の認められている権利は、やはり別除権として認められるので、同様に抵当権に準じて権利行使をすればよい。
 ただし、更生手続に入ると、すべて担保権の行使が禁じられるので、更生担保権として届け出て、その権利の保全をはかる以外にない。
 それらの場合でも、根仮登記担保はいっさいその権利が認められないことになっている。

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