有体動産を貸金の担保

 銀行実務において、商品、原材料などの有体動産を賃金の担保にとる例は、最近では非常に例が少ない。特に、目的物を直接債権者が占有する質権の方法は、銀行にそれを保管する設備がない等の理由から、その例は極度に減少しているようである。
 一般に利用されている動産担保としては、船荷証券、倉庫証券など商品を表章する有価証券を利用するもの、工場の機械器具などを譲渡担保として取得する方法、倉庫内や店頭の商品などを集合物担保として取得する方法などが主なものといえよう。

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 債権者が目的物を占有する質権の実行方法としては、特約による任意処分による方法、簡易な弁済充当による方法、および、民事執行法による方法の三つの方法がある。しかし、一般には、任意処分の方法が利用されている。
 任意処分の方法とは、担保権者が担保提供者から目的物を任意に処分してもよいという委任を受け、その代理権により任意に第三者に売却し、その処分代金で被担保債権の回収をするという方法である。ただ、この方法は、その被担保債権が商事債権でないかぎり、流質の特約の効力が認められず、しかも担保提供者の承諾なく債権者が一方的に処分すると、特約があっても後目提供者からその処分の時期、価格について不服を申し立てられる危険がある。そこで、一般には、この方法で処分するときは、その処分のつど担保提供者の承諾書を微しているのが実情である。
 民法は、動産質の担保権実行の方法として、特に簡易な弁済充当の方法を認めている。この方法は、一種の代物弁済の権利を定めたものであるが、この方法による処分ができるのは、競売によると価格が安くなる等正当の事由がある場合であって、しかも鑑定人の評価書、裁判所への申請、債務者、担保提供者へのあらかじめの通知、仮登記担保の実行通知と同じようなもの等が必要であることのほか、担保権者が目的物を直接代物弁済として取得することになるなどの理由から、この方法は一般にはあまり利用されていない。
 質権の実行は、最終的には民事執行法の規定による動産競売の方法による以外にない。
 動産に対する質権実行の申立ては、債権者が自ら占有する動産を執行官に提出し、動産競売申立書を提出する。なお、この場合その申立書に質権実行であることを記載すれば、公正証書や登記、登録の謄本、確定日付ある証書等の証拠書類は必要ない。
 執行官による動産の競売は、原則としては特定の競売期日を定め、それを公告し、一般の競り売りの方法によることになるが、目的物件によっては、それ以外に入札や、その他裁判所の許可を得て適宜の方法によって売却することも可能である。
 商品、原材料といった動産は、これを営業倉庫に寄託することにより倉庫証券、預り証券、質入証券またはこれをあわせた倉荷証券とし、あるいは輸送中の貨物について船荷証券、貨物引換証とし、その有価証券を担保にとることによって、担保の目的とすることができる。
 そのうち、輸送中の貨物の担保は、特に輸出外国為替取引や荷付為替手形の割引取引に利用され、メーカー金融には倉庫証券担保が利用されているのが普通である。
 これら証券による担保払質権による方法と譲渡担保による方法とがあり、担保権実行方法も異なる。
 質権による場合は、倉庫証券であれば、証券のままで処分することも、倉庫会社から寄託物の引渡しを受けて動産の現物として処分することもできるが、運送証券であれば、一定時期が到来すると運送会社から現物を引き取らざるをえないので、この場合は現物として処分することが多くなろう。
 証券のまま処分する場合の手続は、有価証券担保に準じ、また現物として処分する場合は、前記動産質権の実行の手続に準じて取り扱うことになる。
 譲渡担保は、目的物を債権者が占有するものもあるが、一般には工場の機械器具や集合物担保のように、担保提供者に占有させたまま担保の目的とする場合がほとんどである。
 目的物を債権者が占有する場合は、法的には被担保債権の履行遅滞さえあれば、債権者はいつでも自己の名においてその物を売却し、その処分代金から回収に充当することができるのであるが、実務的には後に処分の時期、価格等について争いの生じないよう、処分のつど担保提供者の承諾書をとり、または担保提供者の名義を売却するということにより、トラブルの防止に努めている。
 担保提供者が占有する目的物件については、その所有権が債権者にあるため、差押えの方法がなく、競売するという方法がない、担保権の実行という方法でなく、差押えの申立てをし、それに譲渡担保権者として配当要求するという方法も考えられる。
 その場合には、あらかじめ担保提供者等現に目的物を占有する者を相手にして、動産の引渡しを求める強制執行の手続をとり、そのうえで第三者に売却する以外にないであろう。

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