銀行の貸金の担保

 銀行の貸金の担保としては、上場株式、国債、社債などは、価値があり、管理も処分も容易であるので、担保の目的物としてよく利用されている。
 なお、同じく有価証券であっても銀行実務では、商業手形は商業手形担保とし、船荷証券・貨物引換証・倉荷証券等は商品担保として、この有価証券担保と区別して扱っており、外国為替取引における付帯荷物の証券類の担保も、外国為替関係として別の取扱いをしているので、ここでもそれによることとする。

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 無記名の公社債、株券などは、民法上は動産とみなされている。そこで、これら有価証券に対する担保権の実行は、一般の有体動産についての担保権実行手続と同じことになる。
 この担保権実行方法には、質権実行と譲渡担保権実行と任意処分の3通りの方法がある。
 動産に対する質権実行は、特に裁判所の許可を得て鑑定人の評価によって代物弁済をする場合以外は、民事執行法の規定に基づき売却するか、相場ある有価証券の場合は相場により売却するか裁判所の手続が必要である。しかし、それらの手続は、どうしても費用と時間がかかり、必ずしも高価に処分できるとはかぎらないので、現実には、担保差入証または銀行取引約定書の任意処分に関する約定により、市場価格のあるものは市場で売却し、市場価格のないものはそのつど設定者の承諾を得て、買主をさがしその者に売却するという方法により、担保権の実行をしている。
 この実行の方法は、譲渡担保にした場合と同様である。
 一般の上場株式などの担保取得の方法としては、略式質、登録質、譲渡担保などの方法があるが、そのほとんどは略式質か譲渡担保の方法によっている。
 このうち譲渡担保権の実行は、その被担保債権の弁済期が到来していれば、担保権者は自由に目的株式を売却し、または時価で自己名義に変更し、弁済に充当すれば足りる。価額に異議があれば、担保提供者はそれを争うことは認められる。
 略式質、登録質など質権を設定している場合は、法的には民事執行法における動産競売等の方法によることになるが、略式質の場合には担保権の効力という点では譲渡担保と相違はあるが、その担保権実行という点では、実務上担保権設定契約書上において任意処分に関する特約があるため、譲渡担保権の実行と同じように取り扱われている。ただ、その披担保債権が商行為によって生じた債権でないと、このような流質に関する契約は効力を生じないとされている。
 そこで、登録質や流質契約のない略式質による質権の実行は、民事執行法の規定する手続による以外にないことになる。
 民事執行法では、裏書の禁止されている有価証券以外の有価証券で、それが「取引所の相場のある有価証券」である場合には、特にその日の相場以上の価額で売却しなければならないことになっている。そこで、この質権の実行は、現物を提出して執行官に質権実行の申立てをすると、執行官は競り売りや入札の方法によらず、その日の市場において売却されることになる。そのうえで、質権者は直接執行官から支払を受けることができる。
 その質権が略式質の場合は、上記の手続により買い受けた者は、執行官から株券の引渡しを受け、その証券を発行会社に提示して名義書換を受ければよいが、その質権が登録質の場合は、株式の名義書換手続のほかに、株主名簿に記載された質権の登録の抹消手続をとる必要がある。この申請は、本来は質権設定者と質権者の共同申請によるべきであるが、質権実行の場合は、その手続がとれないこともある。その場合は、事情を説明し、質権者の単独申請により執行官の競売調書の写しを添付して「質権登録抹消請求書」をもって申請するか、あるいは執行官の連署を求めて申請することになろう。
 社債にも記名式のものがあるが、一般には無記名式となっている。
 無記名式の社債は動産として扱われるので、無記名有価証券の取扱いをすればよい。
 記名式社債の担保取得方法は、社債券の引渡しを受けるとともに。譲渡担保の場合は名義変更、質権の場合は質権の登録が必要になる。登録された質権の実行方法については、株式の登録質の実行手続を参照されたい。
 手形を債権の担保とする場合は、手形法では質入裏書の方法を定めており、これを正式の質入裏書というのに対し、実務的には手形面に「担保のため」等の表示をせずにする隠れたる質入裏書の方法もよく利用されている。
 ただし、銀行実務では、商業手形の担保は、質権を利用する例は少なく、一般には譲渡担保が利用されている。
 いずれの方法によって担保とした場合でも担保手形がその支払期日に支払呈示され、その決済が得られれば、ただちに被担保債権の弁済に充当することができることは当然である。
 問題になるのは、その手形が期日に決済されなかった場合、その手形の支払義務者に対しどのような手続により権利行使が認められるかということになる。
 その担保権が譲渡担保あるいは隠れたる質入裏書の場合は、その裏書が譲渡裏書となっているため、担保権者は手形所持人として裁判上、裁判外のいっさいの権利行使が認められるのは当然であり、一方、その担保権が正式の質入裏書の場合も手形法上、手形所持人としてのいっさいの権利を行使する権利が認められているので、やはり裁判上・裁判外のいずれの手続によっても自己の権利としてその権利行使が可能である。
 そこで、商業手形を目的とした担保権の実行は、民事執行法の定めによる必要はなく、手形債権について債務名義を得て、手形上の債務者に対し手形債権の強制執行手続をとればよいことになる。

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