競売の目的となる不動産

 競売の目的となる不動産は、当該抵当権の目的となった不動産である。不動産とは、土地および土地の定着物をいう。土地の定着物とは、土地に固定的に付着して容易に移動しえない物であって、取引観念上、継続的にその土地に付着せしめた状態で使用されると認められる物をいう。土地の定着物は、不動産とされるといっても土地と離れて独立の権利の目的となるかどうかは別問題である。土地の定着物には、次の三つの形態のものを認めることになる。第1のものは、土地と離れた独立した不動産と認められる建物および立木法の適用を受ける立木である。第2のものは、土地と一体としてのみ処分に服するもので、土地から分離しないかぎり、独立して処分の対象となりえないものである。門、塀、石垣、庭石などはこれにあたる。第3のものは、土地と離れて独立に処分の対象となるが、対抗要件を満たさないかぎり、土地の処分にしたがうものである。立木法の適用のない樹木、工事中の建物で独立の建物までに至らないもの、鉄塔、ガスタンクなどがこれにあたる。

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 土地の定着物のうち、建物は、土地とは独立した不動産とされているが、その他の土地の定着物は、土地に対する競売手続によって、土地の処分にしたがう。
 建物に対する競売にあっては、建物が敷地上に存在する現状において競売されるのであって、同時に敷地賃借権を競売の目的とするものではない。しかし、もともと建物の所有権が競売によって買受人に取得されたときは、特段の事情がないかぎり、敷地賃借権も、建物の従物として、建物の所有権移転に伴い競落人に移転する。したがって、敷地賃借権の存在または価格が明白であるときは、建物の最低売却価格を定めるにあたり、敷地賃借権の価格をこれに算入すべきものであるが、その不明なときは、これを考慮することなしに競売建物の競売価格を定める。
 抵当権の設定された土地上に、抵当権設定者が事後に建物を築造し、競売申立て時においてなお同建物を所有するときは、抵当権者は、当該抵当権の目的たる敷地とともに、地上建物をもあわせ競売することができる。もとより抵当権者は、地上建物の競売を強制されるものではなく、敷地のみを競売したときは、地上建物の所有者は、買受人に対抗できる土地使用の権原を有しないから、同地上建物の収去義務を負うことになる。
 地上建物をあわせ競売した場合、土地と建物を別々に売却することは許されない。この場合、抵当権者の優先弁済権は土地についてのみ存し、地上建物に及ばないことはいうまでもないが、他に債権者がいなければ、地上建物代金からも弁済を受けられると解すべきである。
 他の抵当権が工場抵当である場合の機械器具目録上の機械器具、抵当権の目的となっている土地または建物が、同時に他の工場抵当の目的となっているときは、工場抵当法3条所定の機械器具を同時に競売しなければならない。この場合、これらの機械器具代金に対しては、申立抵当権者の抵当権は及ばない。
 付加物および従物、抵当権の効力は、特にこれを排除しないかぎり、目的不動産に付加して一体となった物および主従の関係にある従物に及ぶ。したがって、競売の申立てにあたって、これらの付加物・従物を除外しないかぎり、競売の目的となる。抵当権の目的となった土地の上に立木が生立しているが、立木法による登記のない場合には、抵当土地の競売において、これらの立木は土地とともに当然競売に付される。
 ただ、これらの付加物・従物のうち、不動産にあっては、登記のある場合、当事者の意思が推認されるから、次の付属建物のような取扱いが生ずる。
 付属建物が主たる建物の従物または付加物と認められるときは、主たる建物に対する抵当権設定後に抵当権設定者によって築造されたときで伝主たる建物とともに競売される。
 付属建物とは、物理的には別棟をなす数個の建物を、利用上、機能上の観点から、うち1棟を主たる建物となし、他の建物を従たる建物としての1個の建物、たとえば母屋と浴室、便所、物置として登記した場合の従たる建物をいう。この場合、これらの個々の独立建物を、数個の建物として登記するかまたは1個の建物として登記するかは、当事者の意思にまかされており、これらを1個の建物として登記する場合の主従の別も当事者の意思を尊重すべきものである。したがって、ある建物を1個の建物のうちの付属建物として登記した場合においては、主たる建物に対する抵当権は、付属建物に及ぶこととなる。
 競売の目的不動産は、これを特定できる程度に記載することを要する。
 土地であればその所在・地目・地積を、建物であれば所在・家屋番号・種類・構造・床面積を、付属建物のあるときはその種類および床面積を記載する。その表示は登記簿謄本の表示にしたがって記載し、未登記であれば、その旨および現況にしたがって記載すべきである。なお、申立書には、登記簿謄本、登記簿上所有の事実が明らかでないときは、申立不動産が相手方所有者の所有に属することを証する文書、未登記不動産については、同様に相手方所有者の所有に属することを証する文書および不動産登記法101条2項に規定する書面の添付を要する。
 さらに、申立不動産が土地の場合には、その土地に存する建物および立木法の登記のある立木のあるときは、これらの登記簿謄本、申立不動産が建物または立木の場合は、その存する土地の登記簿謄本の添付も必要である。
 競売の申立書には、抵当権および被担保債権を記載することを要する。なお、競売の目的不動産に第三収得者があるときは、第三取得者に対し抵当権実行の通知をしたのに第三収得者から滌除の申出のない事実を記載する。第三収得者から滌除の申出のあった場合において、これを不服として抵当権の実行をするときは、増価競売の申立てをすることになる。
 競売申立てにあたって抵当権および被担保債権を表示するのは、どの抵当権に基づいて、どのような債権につき競売申立てをするのかを特定するためのものであるから、これらを特定認識できる程度に記載することを要する。通常は、抵当権設定者、目的不動産、抵当権設定の年月目、設定登記の年月日、登記番号、被担保債権の発生原因、年月日、債権額、残存債権額を記載する。
 抵当権を承継した場合には、相続その他の一般承継の年月日、原因を、その他の特定承継にあっては、譲渡、代位弁済その他特定承継の年月日、原因を記載する。
 なお、被担保債権の一部について競売申立てをするときは、その旨およびその範囲を明らかにしなければならない。
 したがって、これらの記載は、債権額を限定する意味を有し、これを増額するには、単なる補充訂正では足りないで、新たな競売申立てによるべきである。
 被担保債権の一部が弁済等によって消滅しても残存債権があるかぎり、抵当不動産全部について競売申立てができる。被担保債権についての債務名義を要しないが、抵当権の存在を証明する確定判決その他の裁判上の調書の謄本または抵当権の登記されている登記簿謄本の提出を要し、抵当権を承継した場合には、相続その他の一般承継にあっては、その承継を証する文書を、その他の承継にあっては、その承継を証する裁判の勝本その他の公文書の提出を要する。もっとも、この場合、抵当権についての承継取得による登記を経ていれば、その登記簿謄本の提出をもって足りる。
 利息・損害金については、満期となった最後の2年分の利息・損害金だけでなく、利息・損害金の全額について競売申立てできる。他の債権者に対する関係では、民法374粂の制限を受けるが、抵当権設定者に対する関係ではその制限を受けないと解されている。
 債権が弁済期に至らないときは、債権の履行を強制できないから、抵当権の実行をすることはできない。競売申立書には、必ずしも履行遅滞の事実の記載を要しないが、損害金を請求する場合には弁済期到来の事実を記載するを要するし、その他の場合でも弁済期を記載すべきものであろう。弁済期未到来の場合には、原則として競売開始決定に対する執行異議の申立によって争われるべきものである。
 被担保債権が分割払いのものであって払遅滞となった部分についての競売申立ては当然に許される。分割払いの場合、多くは割賦金の支払を1回または数回怠ったときは期限の利益を失う旨の特約が付されている。この場合、債権全額につき競売申立てはできるが、後順位の抵当権者に対しては、期限の利益の喪失を対抗できないから、すでに弁済期の到来した分についてのみ優先して弁済を受けられるにすぎないと解されていたが、抵当権の登記事項中より弁済期の削除された現在では、登記事項とされない特約については、その特約をもって第三者に対抗できると解すべきである。なお、配当にあたっては、確定期限の到来していない債権は弁済期が到来したものとみなされる。
 根抵当権にあっても被担保債権の一部に遅滞があれば競売申立てができる。この場合、被担保債権の元本は確定し、確定した元本および利息・損害金につき、極度額の範囲内で弁済を受けられる。
 執行裁判所は、目的不動産の所在地を管轄する地方裁判所である。建物が数個の地方裁判所の管轄区域にまたがって存在する場合には、建物に対する競売については、建物の存在する土地の所在地を管轄する各地方裁判所が、また、土地に対する競売については、土地の所在地を管轄する地方裁判所または建物に対する競売の申立てを受けた地方裁判所が管轄する。
 この場合、執行裁判所は、必要なときは、他の管轄裁判所に移送することができる。この移送決定に対しては、執行抗告はもとより執行異議の申立てをすることもできない。

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