滞納処分の停止

 税務署長は、滞納者に特定の理由があるときは、滞納処分の執行を一時停止する場合がある。この滞納処分の停止は、徴収緩和制度の一つであるが、その間に、依然として資力が回復しないときは、その納税義務を消滅させることとなる点において納税の猶予または換価の猶予と異なる。
 滞納者が、次に掲げる三つのうちのいずれかに該当すると認められるときは、税務署長は、滞納処分の停止をすることができる。
 滞納処分を執行する財産がないとき、滞納処分を執行することによって納税者(個人に限る)の生活を著しく窮迫させるおそれがあるとき、滞納者の所在および滞納処分ができる財産がともに不明であるとき。

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 滞納処分の停止は、税務署長の職権により行われ、停止をした場合には、その旨を滞納者に通知しなければならない。
 滞納処分の停止をした場合には、その停止の期間内は新たな差押えをすることができず、また、差押財産があるときは、その差押えを解除しなければならない。
 滞納処分の停止をした場合において、その停止が3年間継続したときは、その停止に係る国税の納税義務は消滅する。
 滞納処分を執行することができる財産がないことを理由として停止した場合において、その停止に係る国税が限定承認に係るものであるとき、その他その銅税を徴収できないことが明らかであるときは、直ちに納税義務を消滅させることができる。
 滞納処分の停止中であっても、停止に係る国税の消滅時効が進行するから、時効の完成により納税義務が消滅する場合がある。
 滞納処分の停止をした国税に係る延滞税のうち、その停止期間に対応する部分の金額相当額の延滞税が免除される。
 滞納処分の停止後3年以内に、その停止に係る滞納者につき、滞納処分の停止の要件に該当する事実がないと認めるときは、税務署長は、その停止を取り消さなければならない。滞納処分の停止を取り消した場合には、税務署長は、その旨を滞納者に通知しなければならない。この通知は、取消しに伴う滞納処分の再開のための要件である。
 民事執行法には、滞納処分の停止に相当する制度はない。民事執行は、債権者の申立により行うが、この際、差押えを求める財産を公示する書面を添付することになっているから財産がない場合には強制執行の申立てができないことになる。
 また、動産については、動産執行の申立書には「差し押えるべき動産が所在する場所」を記載することになっているが、当該場所に動産がないときは強制執行はできない。
 したがって、強制執行の対象財産がない場合には、結果的にみて滞納処分の停止をしたと同様の状態になる。ただし、強制執行にあっては、債務者個人の生活維持に対する配慮はしない点が、滞納処分の場合と異なる。

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